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第40話「出会いと再会と、始まりの嘘なのだ」後編
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「なんか変なのだ。記憶が、なんかこう……曖昧っていうか……」
「ルゥも。……学校って、いつから行ってたっけ?」
「ウルは……ウルはルゥお姉ちゃんの他に、もうひとりお姉ちゃんがいた気がする……」
「うん……わたしも。けど、名前が思い出せないんだよね……」
その瞬間、路地裏からまばゆい閃光が6人を襲った。
「危ないッ!」
レイタは咄嗟に皆の前に飛び出し、5人を守った。
ただの光ではなく、ビームだということはわかっていた。
だから、レイタはその攻撃を空に向かって受け流した。
また街ひとつが吹き飛ぶようなことはごめんだった。
アリフの力を使うのは今日だけでもう二度目だった。
アリフは、不老不死としての力だけなら、レイタは常に無意識に使用している状態にある。だから全く消耗がない能力だった。
だが、それをそばにいるぷぷるんやマヒルたちに分け与えるようにして使う際には、肉体や脳が激しく消耗する。
体はマラソン大会の後のようにクタクタで、脳は大量の糖分を欲しがっていた。
「……予測通りの結果。エレメンタル・ジュヴナイル、No.003、バトルプロトコルの起動許可を申請する」
閃光の中から現れたのは、転校生たちの一人――その顔をよく見ると、以前戦ったスク水星人のシイナであった。
しかしその姿は、以前の高飛車な少女ではなかった。
完全に戦闘用に特化していることが一目でわかるバトルスーツ。
その瞳に光はなく、意思が感じられなかった。
「起動許可申請の承認を確認。エレメンタル・ジュヴナイル、No.003、シイナ。対象“未来星人ぷぷるん”および“地球人在経レイタ”を排除する」
やはり、彼女はシイナだった。
「なんで、シイナちゃんが……?」
「“ちゃん”付けは禁止。感情の介入は、作戦の妨げです」
シイナは淡々とそう言うと、動いた。
レイタは慌てて、「零多」の力で河岸を変える。
だが、疲労のせいか、なかなかうまくいかない。何度か繰り返した後にたどり着いたのは、
「やべぇ、ミャクミャクがいるじゃん……もう河岸を変えられそうにないぞ……」
大阪万博の会場だった。
片膝をつき、宇宙(そら)に向かって腕を伸ばす等身大ガ○ダムのそばだった。巨大な木造リングも視界の中にあったから間違いなかった。
町ひとつ以上の被害を出しかねない、国際問題になりかねない場所だった。
「ねぇ、レイちゃん、どういうこと? ここ、万博会場……だよね? わたしたち、どうしてこんなところに……」
「わりぃ、みんな、マヒルを安全なところへ逃がしてやってくれ……シイナは俺がなんとかする……みんなで逃げてくれ……」
レイタは皆にそう声をかけたが、体はもう動きそうになかった。
それに、すでに戦闘は始まっていた。
しかも、激化していた。
シイナのバトルスーツには、ぷぷるんが放った波動砲らしきものも通じない。
パビリオンがいくつも吹き飛び、ついでにミャクミャクも中の人ごと吹き飛んでいた。
会場のあちこちから悲鳴が上がった。
ウルやルゥ、マルブの攻撃もまったく効かず、それぞれが木造リングに叩きつけられ、リングが崩壊を始めた。
会場内にいる人々の脱出は、もう不可能だった。
「マヒル……悪いけど手を貸してくれ……ひとりじゃ起き上がれそうもない……」
「いいけど……ちゃんと後で説明してね?」
「わかった……」
無事に帰れたらな、とは言わなかった。
崩壊したリングの瓦礫の中から、ウルたちが再びシイナに攻撃をしかけていた。
ぷぷるんもまた。
だが、結果は同じだった。被害が拡大するだけだった。
このままでは間違いなく全滅する。
ぷぷるんもウルもルゥもマルブも、それにマヒルも。
生き残ることができるのは、アリフの力を持つ自分だけだろう。
そのとき、不思議なことが起こった。
レイタが起き上がるために手を貸してくれていたマヒルの体から力が流れ込んできていた。
「マヒル……? なんで……」
「え? 何が?」
「お前も、何かギフトを持ってるのか?」
「ギフト? レイちゃんが持ってる不思議な力みたいなもの?」
レイタの問いに、マヒルの顔には疑問符がいくつも浮かぶ。
彼女は全く気づいていないようだった。
完全回復とまではいかなかったが、
「助かったよ。マヒルのおかげで、シイナを……あいつを今度こそ倒せそうだ」
アリフの力をマヒルに分け与えたりすることはできそうだった。
河岸を変えることは無理でも、それ以外の零多の力なら使うことができそうだった。
だかや、レイタはマヒルのまわりにハニカム構造のバリアを何重にも張った。
「レイちゃん? 何これ……」
「動かないで。そこでじっとしてて。そこにいれば、マヒルは助かるから」
レイタは金属片を拾い上げた。
握ると、それは槍の形へと変形した。
デッドモールのときの『バールのようなもの』と同じだ。
彼の手に触れた瞬間から、それは自己進化を始めたのだ。
「シイナの動きも読める……」
不老不死の肉体。
無限の才能「零多」。
そして、触れるものに自己進化をもたらす“創造の手”。
一瞬のうちに、レイタは戦いの天才となっていた。
「このまま……倒す!」
レイタは槍をシイナに向かって投げた。
無限の才能と可能性を持つ彼が投げた槍は、ぷぷるんたちと激戦を繰り広げるシイナのある場所を貫いた。
仲間たちに当たることのないように。
「レイタ……? 何をやってるのだ?」
「シイナの顔が……やりすぎだよ……」
槍は、バトルスーツに包まれていた体ではなく、剥き出しになっていた彼女の顔を貫いていた。
「……ごめん……ね……」
槍に貫かれながらも、シイナがそう呟いたのが聞こえた。
彼女の瞳から涙がこぼれ落ちるのが見えた。
そして、シイナに関する記憶が、レイタたちの中から消えた。
敵の正体と目的は不明。
だが、確かに“何か”が始まった。始まっていた。
「……大切な何かを、俺たちは……」
だが思い出せない。
思い出すべき名前も。
その笑顔も。
一緒に過ごした時間も。
「……なんなんだよ、これ……!」
レイタの胸が、張り裂けそうだった。
だが、“本当の喪失”はまだ始まったばかりだった。
(つづく)
「ルゥも。……学校って、いつから行ってたっけ?」
「ウルは……ウルはルゥお姉ちゃんの他に、もうひとりお姉ちゃんがいた気がする……」
「うん……わたしも。けど、名前が思い出せないんだよね……」
その瞬間、路地裏からまばゆい閃光が6人を襲った。
「危ないッ!」
レイタは咄嗟に皆の前に飛び出し、5人を守った。
ただの光ではなく、ビームだということはわかっていた。
だから、レイタはその攻撃を空に向かって受け流した。
また街ひとつが吹き飛ぶようなことはごめんだった。
アリフの力を使うのは今日だけでもう二度目だった。
アリフは、不老不死としての力だけなら、レイタは常に無意識に使用している状態にある。だから全く消耗がない能力だった。
だが、それをそばにいるぷぷるんやマヒルたちに分け与えるようにして使う際には、肉体や脳が激しく消耗する。
体はマラソン大会の後のようにクタクタで、脳は大量の糖分を欲しがっていた。
「……予測通りの結果。エレメンタル・ジュヴナイル、No.003、バトルプロトコルの起動許可を申請する」
閃光の中から現れたのは、転校生たちの一人――その顔をよく見ると、以前戦ったスク水星人のシイナであった。
しかしその姿は、以前の高飛車な少女ではなかった。
完全に戦闘用に特化していることが一目でわかるバトルスーツ。
その瞳に光はなく、意思が感じられなかった。
「起動許可申請の承認を確認。エレメンタル・ジュヴナイル、No.003、シイナ。対象“未来星人ぷぷるん”および“地球人在経レイタ”を排除する」
やはり、彼女はシイナだった。
「なんで、シイナちゃんが……?」
「“ちゃん”付けは禁止。感情の介入は、作戦の妨げです」
シイナは淡々とそう言うと、動いた。
レイタは慌てて、「零多」の力で河岸を変える。
だが、疲労のせいか、なかなかうまくいかない。何度か繰り返した後にたどり着いたのは、
「やべぇ、ミャクミャクがいるじゃん……もう河岸を変えられそうにないぞ……」
大阪万博の会場だった。
片膝をつき、宇宙(そら)に向かって腕を伸ばす等身大ガ○ダムのそばだった。巨大な木造リングも視界の中にあったから間違いなかった。
町ひとつ以上の被害を出しかねない、国際問題になりかねない場所だった。
「ねぇ、レイちゃん、どういうこと? ここ、万博会場……だよね? わたしたち、どうしてこんなところに……」
「わりぃ、みんな、マヒルを安全なところへ逃がしてやってくれ……シイナは俺がなんとかする……みんなで逃げてくれ……」
レイタは皆にそう声をかけたが、体はもう動きそうになかった。
それに、すでに戦闘は始まっていた。
しかも、激化していた。
シイナのバトルスーツには、ぷぷるんが放った波動砲らしきものも通じない。
パビリオンがいくつも吹き飛び、ついでにミャクミャクも中の人ごと吹き飛んでいた。
会場のあちこちから悲鳴が上がった。
ウルやルゥ、マルブの攻撃もまったく効かず、それぞれが木造リングに叩きつけられ、リングが崩壊を始めた。
会場内にいる人々の脱出は、もう不可能だった。
「マヒル……悪いけど手を貸してくれ……ひとりじゃ起き上がれそうもない……」
「いいけど……ちゃんと後で説明してね?」
「わかった……」
無事に帰れたらな、とは言わなかった。
崩壊したリングの瓦礫の中から、ウルたちが再びシイナに攻撃をしかけていた。
ぷぷるんもまた。
だが、結果は同じだった。被害が拡大するだけだった。
このままでは間違いなく全滅する。
ぷぷるんもウルもルゥもマルブも、それにマヒルも。
生き残ることができるのは、アリフの力を持つ自分だけだろう。
そのとき、不思議なことが起こった。
レイタが起き上がるために手を貸してくれていたマヒルの体から力が流れ込んできていた。
「マヒル……? なんで……」
「え? 何が?」
「お前も、何かギフトを持ってるのか?」
「ギフト? レイちゃんが持ってる不思議な力みたいなもの?」
レイタの問いに、マヒルの顔には疑問符がいくつも浮かぶ。
彼女は全く気づいていないようだった。
完全回復とまではいかなかったが、
「助かったよ。マヒルのおかげで、シイナを……あいつを今度こそ倒せそうだ」
アリフの力をマヒルに分け与えたりすることはできそうだった。
河岸を変えることは無理でも、それ以外の零多の力なら使うことができそうだった。
だかや、レイタはマヒルのまわりにハニカム構造のバリアを何重にも張った。
「レイちゃん? 何これ……」
「動かないで。そこでじっとしてて。そこにいれば、マヒルは助かるから」
レイタは金属片を拾い上げた。
握ると、それは槍の形へと変形した。
デッドモールのときの『バールのようなもの』と同じだ。
彼の手に触れた瞬間から、それは自己進化を始めたのだ。
「シイナの動きも読める……」
不老不死の肉体。
無限の才能「零多」。
そして、触れるものに自己進化をもたらす“創造の手”。
一瞬のうちに、レイタは戦いの天才となっていた。
「このまま……倒す!」
レイタは槍をシイナに向かって投げた。
無限の才能と可能性を持つ彼が投げた槍は、ぷぷるんたちと激戦を繰り広げるシイナのある場所を貫いた。
仲間たちに当たることのないように。
「レイタ……? 何をやってるのだ?」
「シイナの顔が……やりすぎだよ……」
槍は、バトルスーツに包まれていた体ではなく、剥き出しになっていた彼女の顔を貫いていた。
「……ごめん……ね……」
槍に貫かれながらも、シイナがそう呟いたのが聞こえた。
彼女の瞳から涙がこぼれ落ちるのが見えた。
そして、シイナに関する記憶が、レイタたちの中から消えた。
敵の正体と目的は不明。
だが、確かに“何か”が始まった。始まっていた。
「……大切な何かを、俺たちは……」
だが思い出せない。
思い出すべき名前も。
その笑顔も。
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「……なんなんだよ、これ……!」
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だが、“本当の喪失”はまだ始まったばかりだった。
(つづく)
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