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第41話「この戦場で、あなたを知らない私たち」前編
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戦いが終わった夕暮れの万博会場に、風が吹く。
会場のある夢洲(ゆめしま)は、大阪ベイエリアの人工島だ。
風は潮風で、潮の香りというよりは磯臭かった。
汗まみれになった体や髪がベタついていた。
潮風に運ばれてきた海水の塩分やミネラル分が体や髪に付着し、油分と混ざり合ったからだろう。
夢洲は、ゴミを埋め立てて作られている。
開催前から問題視されていた、地下から噴き出すメタンガスについて、いつの間にかマスコミは何も言わなくなっていた。
ほったらかしにされていたのか、あるいは対策はしたが異星人たちの戦いによって無意味になってしまったのかはわからない。
あちこちで爆発が起き、火災が広がっていた。
会場に来ていた客たちは木造リングやパビリオン、何億円もかけて作ったというトイレの倒壊に巻き込まれるか、爆発で吹き飛ぶか、火だるまになるか、そんな選択肢しかなかった。
生き残っている者は、レイタの視界の中にはぷぷるんたちやマヒルしかいなかった。
木造リングは完全に倒壊し、各国のパビリオンもまたほとんど残ってはいなかった。
まるでゴ○ラにでも襲われたかのようだった。
奇跡的に、屋外に展示されていた約17mの実物大ガ○ダム像だけは、無傷のまま存在していた。
宇宙、そして未来へと差し伸べられた手の指先にひとりの少女が立っていた。
セーラー服に似た特殊装甲、瞳は血のように赤い。
両手には歪んだ形状の長剣が2本。
まるで自らの感情をそのまま形にしたような、不安定で禍々しい刃だった。
「ターゲット確認……No.003との戦闘データのインストールを完了」
彼女の名前は、ミズキ。
かつてレイタたちと日常を共に過ごしたスク水星人の少女。
ウルやルゥの姉でもある。
だが今の彼女は、それを知らない。
彼女の記憶は改竄され、心はねじ曲げられ、「何かはわからないが、彼女の大切なものを奪った敵」として、レイタたちを認識していた。
仮面舞踏会のような仮面をかぶっていたが、自らそうしたのではないのだろう。そうするよう言われたのだ。
「エレメンタル・ジュヴナイル、No.004、ミズキ。任務を開始します」
そして、その意味もわからないまま、知ろうともせずに、素顔を隠しているのだろう。
「……まだもうひとり来るみたいだな。何か、さっきのとは……違う……」
レイタの直感が警鐘を鳴らす。
対するぷぷるんは、眉をしかめた。
「なのだ……でも、この気配、どこかで……」
だが、どれだけ記憶を探っても、何も思い出せない。
一緒に笑ったはずの記憶も、一緒に泣いたはずの時間も。
そこだけぽっかりと穴が空いている。
「レイちゃん、あそこ! 誰かいる!」
ミズキの存在に真っ先に気づいたのは、彼女と最も仲が良かったマヒルだった。
だが、そのマヒルも、彼女のことは覚えてはいなかった。
「行くよ……! わたしはお前たちを、絶対に許さない!」
ミズキが歪んだ形状の長剣で斬りかかった。
「許さない? 何の話だ?」
レイタは反応し、手にした金属片から新たに短剣を精製し投擲した。
だが、簡単に弾かれてしまった。
次の瞬間、ミズキの2本の長剣がレイタの体を十字に切り刻む。
両足を真横に切断し、体を真っ二つにする攻撃だった。
しかし、レイタにはアリフの力があった。
誰も彼の体に傷ひとつつけることは出来ない。
成長期にある彼の体は、成長はするがそれ以外の変化を拒絶する。成長が終われば一切の変化を拒絶する。
宇宙空間に放り出されようが、超新星爆発が起きようが、この宇宙自体が終焉を迎えようが、彼は傷ひとつ負うことはない。
ただの不老不死の力ならば、傷をつけることができるだろう。すぐに再生を始めるだろうが、細胞ひとつ残さないよう消滅させることが出来れば、死を与えることも出来るだろう。
不老不死は髪が伸びるが、アリフは髪が必要以上に伸びることもない。
そこが、ただの不老不死とアリフの力との違いだった。
レイタの体を逆さ十字に斬り刻むはずだったエネルギーは、彼の右手に集まり剣の姿になっていた。
その剣に名をつけるとしたら、「蜃気楼の剣」だ。
蜃気楼とは、大気中の光の屈折によって、遠くの風景が実際とは異なる形に見える現象。
剣のように見えるそれもまた、実際の形とは異なるものだった。
レイタの学生服のポケットの中では、スマホが勝手に動き始めていた。
アンインストールされたはずのアプリが開き、奇妙なプログラムのようなものが表示されていた。
LOADING: MONSTER_ABSORB.SYS
> SYSTEM ERROR: INSUFFICIENT MEMORY
> ALLOCATING: DEVICE_STORAGE_BLOCK
> MEMORY ALLOCATION COMPLETE.
INITIALIZE: MAGIC_ABSORB_PROTOCOL v1.3
>> MODULE: MONSTER_DEFEAT("TARGET")
> SELECTED TARGET: **ABYSSAL_DRAGON** [MAGIC: DRACONIC_FLAME]
> SYSTEM REPORT: MAGIC_ENERGY_LEVEL = 12,350 UNITS
> INITIATE INTEGRATION PROTOCOL...
EXECUTE: ABSORB_MAGIC("DRACONIC_FLAME")
> REQUIRES TARGET: **MONSTER_CORE_IDENTITY**
> CREATING "MAGIC_SIGNATURE_HASH"…
> DECRYPTING MONSTER DNA SUBROUTINES...
> SUBROUTINE SUCCESSFUL, MAGIC ACTIVATED.
>>> PHASE_1: MAGIC_TRANSFER [TARGET -> OWNER_BRAIN]
> DEPLOYING SIGNAL: "MAGIC_REPLICATION" TO BRAIN_CORE
> EXECUTE: MEMORY INJECTION ("FLAME CONTROL")
> INJECTION POINT: **TEMPORARY_COGNITIVE_LAYER**
> PROCESSING… SUCCESSFUL
> SYSTEM CHECK: FLAME_TRAIT_INSTALLED
> EMOTIONAL STABILIZATION REQUIRED... INITIATING SYNCHRONIZATION OF CORE COGNITION
EXECUTE: MEMORY_OVERWRITE("TARGET_FLAME_SKILL")
> TEMPORARY MEMORIES BLOCKED: {AGGRESSIVE_FLAME_MANIPULATION}
> SYSTEM STABILIZED: OWNER FLAME COMMAND ACTIVE
>>> PHASE_2: CONFIGURE MAGIC("FLAME CONTROL")
> COGNITIVE STABILITY CHECK: **10**%
> OWNER PERSONALITY INTERFACE READY TO ASSUME FLAME CONTROL
> FINALIZATION: **FLAME_ABILITY INSTALLED**
> SYSTEM ALERT: EXTERNAL TRIGGERS DETECTED (MAGIC ENGAGEMENT)
NOTE: "Warning: Internal conflict possible between user consciousness and newly acquired ability. Extended use may lead to cognitive fragmentation."
EXECUTE: INTEGRATE_SECONDARY MEMORY BLOCK ("DRACONIC_FLAME")
> MAGIC ECHO SYSTEM ACTIVE
> SYSTEM READY: **MAGIC TRANSFER COMPLETE**
> OWNER STATUS: FLAME CONTROL ENABLED
USER_NOTIFIED: "Magic Ability Successfully Installed: DRACONIC_FLAME"
「なるほど……それがアリフの力か……お前を殺すためには、子を作らせ、その力を子に受け継がせるしかないということだな」
「そうらしいぜ。あいにく、俺にはまだそんな予定はないけどな」
「では、ここで今すぐわたしを孕ませるというのはどうだ? わたしとセックスさせてやろう。未開惑星の原住民だから、セックスではなく交尾だったかな?」
「あの子、何言ってるの?」
「レイタの力を奪うためだけに……狂ってる……」
ぷぷるんは拳銃のような、レーザー銃のようなものを構える。
「そっちが狂ってるなら、こっちも狂うしか……」「レイタと子作りするのはわたしだ!」
だが、ぷぷるんはお気に入りのカッコいい台詞を言わせてはもらえなかった。
ルゥはその場で服を脱ぎ捨て全裸になった。
「ぷぷるんより先に狂うしかなかった奴がいたのだ!?」
「お、お姉ちゃん……恥ずかしいなぁ、もう」
「バカかよ。こんな爆発と火災と死体だらけの場所でか?」
「え!? わたし、すでにやる気満々ソングなんだけど!?」
「しかも、お前みたいな無表情の女相手にか? そんなシチュエーションに興奮するほど変態じゃないぜ」
「わたしのことが最初から候補に入ってないだと……!?」
「地球人との間に子が出来るかどうかはわからないが、わたしの卵子とお前の精子が受精さえすればいい。それは命とは呼べないが」
「おい、古○徹みたいなこと言うな」
ぷぷるんたちといい、目の前にいる少女といい、無駄に地球に、しかも日本のエンタメだけに無駄すぎるくらい詳しいのは、異星人あるあるなのだろうか。
レイタはそんなことを思った。
それにしても、まさか声優のスキャンダルにまで詳しいとは畏れ入った。
会場のある夢洲(ゆめしま)は、大阪ベイエリアの人工島だ。
風は潮風で、潮の香りというよりは磯臭かった。
汗まみれになった体や髪がベタついていた。
潮風に運ばれてきた海水の塩分やミネラル分が体や髪に付着し、油分と混ざり合ったからだろう。
夢洲は、ゴミを埋め立てて作られている。
開催前から問題視されていた、地下から噴き出すメタンガスについて、いつの間にかマスコミは何も言わなくなっていた。
ほったらかしにされていたのか、あるいは対策はしたが異星人たちの戦いによって無意味になってしまったのかはわからない。
あちこちで爆発が起き、火災が広がっていた。
会場に来ていた客たちは木造リングやパビリオン、何億円もかけて作ったというトイレの倒壊に巻き込まれるか、爆発で吹き飛ぶか、火だるまになるか、そんな選択肢しかなかった。
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木造リングは完全に倒壊し、各国のパビリオンもまたほとんど残ってはいなかった。
まるでゴ○ラにでも襲われたかのようだった。
奇跡的に、屋外に展示されていた約17mの実物大ガ○ダム像だけは、無傷のまま存在していた。
宇宙、そして未来へと差し伸べられた手の指先にひとりの少女が立っていた。
セーラー服に似た特殊装甲、瞳は血のように赤い。
両手には歪んだ形状の長剣が2本。
まるで自らの感情をそのまま形にしたような、不安定で禍々しい刃だった。
「ターゲット確認……No.003との戦闘データのインストールを完了」
彼女の名前は、ミズキ。
かつてレイタたちと日常を共に過ごしたスク水星人の少女。
ウルやルゥの姉でもある。
だが今の彼女は、それを知らない。
彼女の記憶は改竄され、心はねじ曲げられ、「何かはわからないが、彼女の大切なものを奪った敵」として、レイタたちを認識していた。
仮面舞踏会のような仮面をかぶっていたが、自らそうしたのではないのだろう。そうするよう言われたのだ。
「エレメンタル・ジュヴナイル、No.004、ミズキ。任務を開始します」
そして、その意味もわからないまま、知ろうともせずに、素顔を隠しているのだろう。
「……まだもうひとり来るみたいだな。何か、さっきのとは……違う……」
レイタの直感が警鐘を鳴らす。
対するぷぷるんは、眉をしかめた。
「なのだ……でも、この気配、どこかで……」
だが、どれだけ記憶を探っても、何も思い出せない。
一緒に笑ったはずの記憶も、一緒に泣いたはずの時間も。
そこだけぽっかりと穴が空いている。
「レイちゃん、あそこ! 誰かいる!」
ミズキの存在に真っ先に気づいたのは、彼女と最も仲が良かったマヒルだった。
だが、そのマヒルも、彼女のことは覚えてはいなかった。
「行くよ……! わたしはお前たちを、絶対に許さない!」
ミズキが歪んだ形状の長剣で斬りかかった。
「許さない? 何の話だ?」
レイタは反応し、手にした金属片から新たに短剣を精製し投擲した。
だが、簡単に弾かれてしまった。
次の瞬間、ミズキの2本の長剣がレイタの体を十字に切り刻む。
両足を真横に切断し、体を真っ二つにする攻撃だった。
しかし、レイタにはアリフの力があった。
誰も彼の体に傷ひとつつけることは出来ない。
成長期にある彼の体は、成長はするがそれ以外の変化を拒絶する。成長が終われば一切の変化を拒絶する。
宇宙空間に放り出されようが、超新星爆発が起きようが、この宇宙自体が終焉を迎えようが、彼は傷ひとつ負うことはない。
ただの不老不死の力ならば、傷をつけることができるだろう。すぐに再生を始めるだろうが、細胞ひとつ残さないよう消滅させることが出来れば、死を与えることも出来るだろう。
不老不死は髪が伸びるが、アリフは髪が必要以上に伸びることもない。
そこが、ただの不老不死とアリフの力との違いだった。
レイタの体を逆さ十字に斬り刻むはずだったエネルギーは、彼の右手に集まり剣の姿になっていた。
その剣に名をつけるとしたら、「蜃気楼の剣」だ。
蜃気楼とは、大気中の光の屈折によって、遠くの風景が実際とは異なる形に見える現象。
剣のように見えるそれもまた、実際の形とは異なるものだった。
レイタの学生服のポケットの中では、スマホが勝手に動き始めていた。
アンインストールされたはずのアプリが開き、奇妙なプログラムのようなものが表示されていた。
LOADING: MONSTER_ABSORB.SYS
> SYSTEM ERROR: INSUFFICIENT MEMORY
> ALLOCATING: DEVICE_STORAGE_BLOCK
> MEMORY ALLOCATION COMPLETE.
INITIALIZE: MAGIC_ABSORB_PROTOCOL v1.3
>> MODULE: MONSTER_DEFEAT("TARGET")
> SELECTED TARGET: **ABYSSAL_DRAGON** [MAGIC: DRACONIC_FLAME]
> SYSTEM REPORT: MAGIC_ENERGY_LEVEL = 12,350 UNITS
> INITIATE INTEGRATION PROTOCOL...
EXECUTE: ABSORB_MAGIC("DRACONIC_FLAME")
> REQUIRES TARGET: **MONSTER_CORE_IDENTITY**
> CREATING "MAGIC_SIGNATURE_HASH"…
> DECRYPTING MONSTER DNA SUBROUTINES...
> SUBROUTINE SUCCESSFUL, MAGIC ACTIVATED.
>>> PHASE_1: MAGIC_TRANSFER [TARGET -> OWNER_BRAIN]
> DEPLOYING SIGNAL: "MAGIC_REPLICATION" TO BRAIN_CORE
> EXECUTE: MEMORY INJECTION ("FLAME CONTROL")
> INJECTION POINT: **TEMPORARY_COGNITIVE_LAYER**
> PROCESSING… SUCCESSFUL
> SYSTEM CHECK: FLAME_TRAIT_INSTALLED
> EMOTIONAL STABILIZATION REQUIRED... INITIATING SYNCHRONIZATION OF CORE COGNITION
EXECUTE: MEMORY_OVERWRITE("TARGET_FLAME_SKILL")
> TEMPORARY MEMORIES BLOCKED: {AGGRESSIVE_FLAME_MANIPULATION}
> SYSTEM STABILIZED: OWNER FLAME COMMAND ACTIVE
>>> PHASE_2: CONFIGURE MAGIC("FLAME CONTROL")
> COGNITIVE STABILITY CHECK: **10**%
> OWNER PERSONALITY INTERFACE READY TO ASSUME FLAME CONTROL
> FINALIZATION: **FLAME_ABILITY INSTALLED**
> SYSTEM ALERT: EXTERNAL TRIGGERS DETECTED (MAGIC ENGAGEMENT)
NOTE: "Warning: Internal conflict possible between user consciousness and newly acquired ability. Extended use may lead to cognitive fragmentation."
EXECUTE: INTEGRATE_SECONDARY MEMORY BLOCK ("DRACONIC_FLAME")
> MAGIC ECHO SYSTEM ACTIVE
> SYSTEM READY: **MAGIC TRANSFER COMPLETE**
> OWNER STATUS: FLAME CONTROL ENABLED
USER_NOTIFIED: "Magic Ability Successfully Installed: DRACONIC_FLAME"
「なるほど……それがアリフの力か……お前を殺すためには、子を作らせ、その力を子に受け継がせるしかないということだな」
「そうらしいぜ。あいにく、俺にはまだそんな予定はないけどな」
「では、ここで今すぐわたしを孕ませるというのはどうだ? わたしとセックスさせてやろう。未開惑星の原住民だから、セックスではなく交尾だったかな?」
「あの子、何言ってるの?」
「レイタの力を奪うためだけに……狂ってる……」
ぷぷるんは拳銃のような、レーザー銃のようなものを構える。
「そっちが狂ってるなら、こっちも狂うしか……」「レイタと子作りするのはわたしだ!」
だが、ぷぷるんはお気に入りのカッコいい台詞を言わせてはもらえなかった。
ルゥはその場で服を脱ぎ捨て全裸になった。
「ぷぷるんより先に狂うしかなかった奴がいたのだ!?」
「お、お姉ちゃん……恥ずかしいなぁ、もう」
「バカかよ。こんな爆発と火災と死体だらけの場所でか?」
「え!? わたし、すでにやる気満々ソングなんだけど!?」
「しかも、お前みたいな無表情の女相手にか? そんなシチュエーションに興奮するほど変態じゃないぜ」
「わたしのことが最初から候補に入ってないだと……!?」
「地球人との間に子が出来るかどうかはわからないが、わたしの卵子とお前の精子が受精さえすればいい。それは命とは呼べないが」
「おい、古○徹みたいなこと言うな」
ぷぷるんたちといい、目の前にいる少女といい、無駄に地球に、しかも日本のエンタメだけに無駄すぎるくらい詳しいのは、異星人あるあるなのだろうか。
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それにしても、まさか声優のスキャンダルにまで詳しいとは畏れ入った。
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