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第1章 炎の国『イグニス』〜今こそ覚醒の時〜
第17話
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「さて……着いたぞ」
覚醒者組合の支部へ到着した。本部よりも少し小さい建物だ。ここはギルドに所属せず資金力もない個人の覚醒者たちが集う場所だ。
ランクが高ければギルドから勧誘されるが中途半端な者であれば一旦フリーで活動して経歴を得てから所属先を探す事になる。攻略したダンジョンは履歴として組合に保管される。
だから最初は基本的にお金がない。レインも以前はここに来たこともあるが本当に雑魚だったから何も出来なかった。
ここの人たちは金もないから荷物持ちを雇う余裕もない人ばかりだったな。
扉を開けて中に入る。中は賑やかで誰もレインたちに気付かない。
ここにいる人たちはみんな必死だ。報酬は均等に分けられる――というルールがある。
このルールで上位ランクが小遣い稼ぎの為に下位ランクの覚醒者を小間使いにする事を防いでいるから少しでも強い人と一緒に行きたいと思うし、確実に生き残る為にダンジョンのレベルも自分に合ったものを正確に選ばないといけない。
「こんにちは!ダンジョンをお探しですか?」
元気のいい受付の女性が話しかけてくる。ここにいる人はレインの評価を知らない。あの扱いは基本的には本部をよく利用する人たちだけだ。
「はい」
「それではランクを証明できる物の提出をお願いします!パーティーを組まれているのでしたら1番ランクが上の御方だけで大丈夫です」
「じゃあ……阿頼耶だけでいけるな」
阿頼耶はAランクの資格証を受付で提出した。
「A…Aランク覚醒者……なのですか?」
受付の女性は驚いている。
「そうですが?」
阿頼耶も不思議そうだ。まあ言ってしまうとAランクは上位ランカーだ。どのギルドからも勧誘を受ける素質がある。
そんなランクを持った人――人じゃないけど――が何でここに来るんだ?って話だよな。
「い、いえ……何でもありません。……確認も取れました。しかし……現在はAランク覚醒者の方に紹介できるだけのダンジョンが無いのです」
「……1つもですか?」
「はい。現在我々が攻略権を所有しているダンジョンの最高ランクはCランクです」
「そうですか」
Aランク覚醒者が1人で挑めるのは1つ下のランク、Bランクダンジョンだ。ダンジョンのランクは1つ上下するだけで難易度がかなり変わるから2つ下のランクだと物足りないと感じてしまう。
もちろん得られる利益もランクに応じて増減してしまう。
レインは受付の周辺を見回した。人は多いが魔力から推察するに全員がEか高くてもDランク、Cランクが本当に数人レベルだ。
同じランクのダンジョンを受けるには5人以上の覚醒者が必要だ。今あるCランクダンジョンに行く為にはBランク1人かCランク覚醒者5人を用意しないといけない。
それ以下は何人集まっても同じ扱いだ。死人を出さない為に世界共通で決められた規則だ。
「ならそのCランクダンジョンで大丈夫です。メンバーは俺と2人です。報酬の分配はどうなってますか?」
「かしこまりました。それでは説明させていただきます。ダンジョンの場所はこの街から東へ4kmほど進んだガルモーシャ森林地帯の入り口にあります。看板はありますし、地図もありますのですぐにお分かりいただけると思います。
続いて報酬の分配に関してです。ご存知だと思いますが、当支部での報酬はランクによって変わります。低いランクのダンジョンは攻略覚醒者1人につき10%の徴収となり、そこから1つ上がる度に10%ずつ上乗せとなります。Cランクは40%となります。最大はBランクで50%となりそれ以上は同じです」
まあ……そんなもんだろうな。ダンジョン攻略権を購入する資金が必要ない代わりの措置だ。初期投資なしでダンジョンに行けるなら安いもんだと思う。
「分かりました。それで大丈夫です」
「あ……すいません。一応最後まで説明しますね?無事に攻略完了されますと素材などはここに直接お持ち下さい。運び人などを雇う場合は自費でお願いします。
ここにお持ちいただいた素材を鑑定し、手数料として40%を差し引きして残った分が攻略者の取り分となります。
不正防止のためにお持ちいただいた素材があまりにも少ないようだと『ハンター』による取り調べの対象にもなりますのでご注意下さい」
「…………レインさ…ん。『ハンター』とは何ですか?」
阿頼耶が小さな声で聞いてくる。
「後で説明するよ。……それも問題ありません」
「かしこまりました。それではこれが攻略権証明書になります。完了報告は今より2日後となります。この期間内に必ず報告をする様にお願いします」
ちなみに何をもって2日なのかというと、ランク1つにつき12時間の猶予がある。Cランクは下から4番目だから48時間……つまり2日だ。
これを過ぎると攻略権が取り消され別の覚醒者に移ってしまう。だから早く行かないといけない。
あと『ハンター』というのは覚醒者を取り締まるための覚醒者だ。全員がBランクやAランク覚醒者によって構成される。『ハンター』のトップもAランクだったはず。
一般の兵士や警備兵では覚醒者には勝てない。その人たちが相手にするのは一般人だ。覚醒者は覚醒者が取り締まる。
ダンジョン攻略において不正を疑われると嘘を見抜くスキル持ちの覚醒者を用いて取り調べを受ける事になる。『ハンター』は覚醒者組合からのスカウトでしか所属を許されず全員が精鋭だ。
それらを敵に回してでも不正をしたいならやればいいというのがこの国の判断だ。
相当なバカか自信がある奴じゃないとやらないと思う。レインを騙した奴らもダンジョン攻略権を巡っては不正をしていないと思う。
組合の管理下になる前に素人を使って悪さをしていたからな。
「……と言った感じだ。今日中に攻略したいから急ぐぞ?」
「私のような者にも説明していただきありがとうございます」
「俺たちはパーティーなんだから気にするな。さっさと行くぞ」
阿頼耶へ説明している間に街の外へ出た。そこから割と本気で走ってダンジョンまで向かう。
Cランク……というかダンジョン攻略自体しっかりやるのは初めてだ。
今のレインがどのレベルなのか正式に分かる。多分、楽勝だと思うが油断しないでいきたい。
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