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第1章 炎の国『イグニス』〜今こそ覚醒の時〜
第18話
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「……ここか」
「そうみたいですね。しかしこれは……時空が歪んでいるのですか?」
「これは『門タイプ』だからな」
「……門《ゲート》?」
『門』
ダンジョンにも色々なタイプがある。1番多くあるのが洞窟タイプと門タイプだ。
自然に出来た洞窟の中に魔力が溜まりダンジョン化するパターンと突然空間に歪みが出来て別の空間と繋がるタイプだ。
門の行き着く先は洞窟タイプとそこまで差はない。稀に木や川などの自然が存在する事もあるらしいが、ほぼ出会う事はない。
本当に危ないダンジョンは『空中門』と『王城型ダンジョン』の2つだ。
ダンジョンってのは誰かが入るまで内部のモンスターたちは行動を開始しない。しかし内部のモンスターは増え続けている。そして一定量を超えるとダンジョン外へと出てくる。
つまりは『崩壊』だ。
それはダンジョン出現から何もしなくても平均で10~14日ほどで起こる。
『空中門』が危険とされるのは文字通り空中に歪みが起きてダンジョンが出現するからだ。空中浮遊のスキル持ちしか入れないから崩壊する確率が高くなる。
もし大きな街の上に出現したら大きな被害になる。
そしてもう一つは『王城型』だ。今、世界に存在していてクリア不可とされているSランクダンジョンの全てがこの『王城型』に分類される。
『王城型』はその場所に大きい城が出現する。
それは各国の王が住む城よりも大きく禍々しい雰囲気を出している。レインが住む国『イグニス』のSランクダンジョンは『魔王城』だ。
何年か前に王都と第2の街『テルセロ』を繋ぐ道の真ん中にいきなり出現した。
『王城型』の時点でSランクダンジョンと認定されるのが世界の常識だった。
ただ『イグニス』はSランク覚醒者も少なく、神覚者もいない。だから国王は自分の国にSランクダンジョンが出現してしまったという事実を認める事が出来なかった。
それなのにSランクと認定されたのはAランク覚醒者で構成された20人以上のパーティーが全滅したからだ。パーティーには上位職業である『剣聖』や『神官』もいたはずだ。
基本ダンジョンは入っても危険と判断したらすぐに引き返せる。なのに誰も出てこれなかった。
それはつまり全滅したって事だ。Aランクだからといって危険と判断したら即撤退の原則を曲げたりはしない。なのに誰も出てこないということは……そういう事だ。
それ以来は誰も行こうともしない。出現して数年経過しているのにダンジョンブレイクも起こらない。という事は内部もかなり広い構造でモンスターが
国王は問題を先送りにして静観してるだけだ。自国の戦力だけではクリア出来ないSランクダンジョンを放置している状態だ。
「……と言う事もある。ダンジョンにもタイプで分けられるんだよ。だからこれはCランクの門タイプって事だ。さっさと入るか」
「そうですね」
レインたちは目の前にある青い魔力で出来た入り口に触れる。すると一瞬フワッと身体が浮く感覚がして地面に着地した。
「思ったより明るいのですね。もっと暗い所を想像しておりました」
洞窟内は青白い光で包まれていた。外と比べると当然暗く感じるが視界は良好だ。この青い光を放っているのが魔法石だ。
「そうだな。この光ってる魔法石も売ればお金になるらしいな。俺は次元収納スキルがあるから大量に持って帰れるな」
「他の人たちはどうするのですか?」
「大きなギルドだと回収専門のチームを作ってモンスター討伐組と分担して利益を最大化してる……らしい。俺もそれ専用で荷物持ちやってたがそこまで詳しくないな」
「そうなのですね。……この魔法石というのはどんな事に使うんですか?」
「……用途は分からない。魔力の結晶だから武器とか防具とか灯りの燃料とかじゃないの?」
「……この時代は私の知らない事ばかりですね」
「これから知っていけばいいさ。……さてと『傀儡召喚』」
レインの言葉に反応し15体の剣士が跪き出現した。
「お前たちはその持っている剣で魔法石を採集しておけ。この辺り全て取り終わったらボスの部屋まで来い。命令は以上だ。動け」
すぐに『傀儡の兵士』たちは行動を開始した。コイツらの元はDランク覚醒者だ。このダンジョン攻略においては戦力にならない。
だったら少しでも金になる魔法石を回収させておけばいい。金が貯まれば採取用の道具も揃えれば効率も良くなるだろう。
◇
そこからしばらく歩いた。
「……ん?」
「ご主人様……来ます」
レインが察知したのとほぼ同時に阿頼耶も反応した。
おお!この距離でも気づくのか。さすが阿頼耶だ。
レインは『魔色視』に加えて『強化』もあるから察知能力は格段に上がっている。そのレインとほぼ同時に察知した阿頼耶の能力は既に相当高いと言える。
「……この臭いは獣型のモンスターだな。それもかなりの数だ。阿頼耶……連携していこう」
「かしこまりました」
レインたちが察知してから数分後にそいつらはやって来た。
「……オスクローウルフか」
レインが知っている数少ないモンスターだ。荷物持ち時代に何度か遭遇した事があるから知っている程度だが。
"オスクローウルフゥー?意味分からないけど大層な名前だね"
「……俺に言われて…も!!」
レインは阿頼耶の分身を剣に変えた。剣先を伸ばして鞭のように使い数匹をバラバラに斬り裂いた。
「知らないよ。名付けたのは組合だ。意味もよく分からん。真っ黒な毛並みが理由とかなんとか言われてるけどな」
「ご主人様」
「阿頼耶は大丈夫……か?」
「問題ありません」
こちらに向かってきていた狼は数十匹はいた。レインが倒したのは7~8匹くらいだ。
レインが振り返ると阿頼耶の周辺には細切れにされた狼の死体が大量に転がっていた。
……まあよく考えたらそうか。レインは2本の腕からしか斬撃を出せない。当然だ。そう何本も武器を持ててたまるか。
しかし阿頼耶は違う。全身が武器……いや武器が人間の形をしているだけだ。
指先だけでなく髪の毛1本に至るまで武器に出来る。手数の多さなんてレインと比べる事も出来ない。
そして……。
「『傀儡』を使用する」
別に口に出す必要はないけど出してしまう時もある。その辺は慣れないとな。
――『傀儡の兵士 番犬』を42体獲得しました――
レインが倒した者にしか『傀儡』は発動出来ないはずだ。それなのに阿頼耶が倒したモンスターにも『傀儡』が適応した。
なんでだ?
"阿頼耶はレインの武器だからじゃないかな?阿頼耶は自分で勝手に動いてるだけでレインの物なんだし。自分自身が殺したって事になるんじゃない?"
アルティのスキルなのに何で把握してないんだよ。
"別に私が作ったスキルじゃないしぃー。魔神から与えられたスキルなだけだしぃー。そんな事言われても困る!"
とりあえずこれは嬉しい誤算だ。最悪、阿頼耶に全て任せても傀儡の兵士を量産できるな。
「阿頼耶……もし食えるから食っていいよ?その方が強くなれるなら是非そうしてくれ」
「……もう少し強いモンスターの方がいいですね。私が出来ない事を出来るモンスターがいればいいのですが……。この獣は私よりも遥かに弱いです。これを取り込んでも私の成長には繋がらないでしょう」
何でもいいって事じゃないんだな。
「分かった。じゃあボスの部屋まで行こうか」
「かしこまりました」
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