成り上がり覚醒者は依頼が絶えない〜魔王から得た力で自分を虐げてきた人類を救っていく〜

酒井 曳野

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第1章 炎の国『イグニス』〜今こそ覚醒の時〜

第19話

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「ここがボスの部屋だな」


「……と言う事はあれがボスですね」


「そうだな。……ちょっと大きい狼だ。他の奴らと大差ないだろうな」
 

 ここに来るまでにそこそこな数の狼を倒したけど傀儡の兵士の数に制限はないから全部加えた。

 既に『傀儡の兵士 番犬』は120体くらいになる。でも別に強くないし剣士みたいに魔法石を採取出来るわけでもない。

 鼻が効くかもだけどレインと阿頼耶の方が察知能力は高い。まあ……数合わせみたいなものだな。

 既にちょっと大きい狼は傀儡の番犬を爪で裂き、食い散らかしている。
 大きい狼の護衛みたいな狼は既にこちらの傀儡によってやられている。どっちも真っ黒だから見分けが付かない。

「……そういうや傀儡の兵士ってやられたらどうなるんだ?」


"やられたらレインの魔力を食ってその場で復活するかレインの元に戻るかのどっちかだね"


「便利だな……剣士たちも集結したようだ」

 レインの後ろから近付く気配がある。気配というか物凄いガチャガチャと音が響いてる。そして後ろがめちゃくちゃ発光してるのが分かる。かなりの量の魔法石を抱えているな。


「……ご主人様」


「どうした?」


「彼らではこれ以上の戦果を期待できません。私が行ってもよろしいですか?」


「そうだな。俺は素材を集めておく。ボスを倒すと外へ出る為の転移門が開くからその前で待っててくれ」


「かしこまりました」
 

 そう言って阿頼耶は大きい狼へ向かっていった。傀儡の番犬は邪魔だな。少し下げよう。

 番犬はレインの手招き1つでボスから距離を取った。その間を抜けるように阿頼耶は走って向かう。

 一応相手はCランクだ。昔のレインなら前に立つ事も出来なかったと思う。ここに来るまでの狼の大群に食われて終わりだった。

 まあ阿頼耶なら心配ないだろう。ヤバそうなら助けに入るが……ああ大丈夫だな。

 阿頼耶が一歩前に進む度にボスのちょっと大きい狼は退いていく。本能的に阿頼耶の事を恐れてるみたいだ。


 大丈夫だと判断したレインは剣士が集めた魔法石に触れていく。収納できるのはレインが触れた物だけだから。

「……これだけあったら…いくらになるんだ?魔法石以前に荷物持ちだった俺に価値なんて分からないしな。というか魔法石ってこれだよな?」

 "そこからなの?!"

「仕方ないだろ。とりあえず持っとけと言われた物を持って後ろをついていくだけの生活だったんだから」
 

 "とりあえず光ってるし良いんじゃない?向こうも始まるよ?"


 アルティの言葉で振り返る。もうボスは壁際まで追い込まれていた。ボスの護衛は既に全滅していた。


 あの少し大きい狼……名前も分かんねぇな。少し可哀想に見えてきた。


 しかしそれも終わる。ボスは意を決して阿頼耶へ飛びかかる。


「結構速いぞ?大丈夫か?」


 流石はCランクダンジョンのボスだ。想像より速い。

 しかしそのボスの爪を阿頼耶はいとも簡単に避けた。そして5本の指を鞭のように変化させて振るった。その直後にボスは6個の肉塊となった。決着は一瞬だった。


「……阿頼耶は強いな。俺も頑張らないと主人として認めてもらえなくなるかもしれないな」


「ご心配なく。私はご主人様の力を認めたのでありません。この身が滅ぶまでお仕え致します」


「…………うん、ありがとう……とりあえずビックリするから気配消して近付かないもらえる?」


「これは失礼致しました」


「ちなみにあのボスがCランクだ。最高ランクはSランクだけど今の実力だとどれくらいいけそう?俺と2人ならどうだ?」


「そうですね。SランクやAランクのモンスターがどれほどなのかによりますね。私のみであればあの程度のモンスターであれば数十匹いたところで苦戦もしません。という事から考えるとAランク程度であれば問題ないかと思います。
 ご主人様と2人であるならばAランクモンスターが複数いても対応可能かと思います」

「なるほどな」

 阿頼耶と2人がかりでもSランクは難しいって事か。

「そういえば……この前凱旋でSランク覚醒者を見ただろ?どうだった?」

 レインは興味なさ過ぎてちゃんと見てなかったし、この国のSランク覚醒者の事もよく分からない。関わる事が絶対に無かったからだ。

「……そうですね。先頭を歩いていた派手な男は強いです。私たち個人では勝てるでしょうがスキルの相性もあるので判断に迷うところです。2人でなら楽に勝てるでしょうが……しかし……」


「どうした?」


「その後ろに控えていた女性……あの者はかなり強いです。あの者は魔王アルティと同じ雰囲気がありました。
 今のままですと私は勝てる見込みはありません。ご主人様であれば問題ないと思いますが、やはりスキルや使う魔法の相性になりますね」


 "様をつけろ!おいコラ!"
 
 阿頼耶がそれほど言う覚醒者が『黒龍』ギルドにいるのか。全く気付かなかった。アルティは無視する。


 "それはそうだと思うよ?何故ならレインには常に私が側にいるからね。私と似た雰囲気ってだけで私と同じ強さであるはずはない。私より弱い存在には気付きにくいのかもしれないよ?"


 ……だからか。でもそんな人がいるのなら警戒しておかないといけないな。


「こんなもんか……じゃあ帰るぞ」


「かしこまりました」


 ボスも傀儡にした。名前も番犬だったから同じ扱いなんだろうな。召喚してもちょっと大きいだけだった。魔法石もそこそこ手に入った。 

 ボスの死体は細切れになってるから使えないと判断してそのままだ。阿頼耶もこれは別にいらないと言ってたし放置で。

 ボスを倒すとボスの部屋の奥に外への転移門が出来る。これの理由は分からないが、物凄い親切なのでみんな使ってる。

 ここを通るとダンジョンの入り口の外に放り出させる。その後、数分でダンジョンそのものが消えるって感じだ。


「Cランク程度なら楽勝だな。もっと稼げるように上のランクも目指したいけど……」

「現在の環境では行く手段も限られておりますね。高ランクのダンジョンはそもそも行くのにお金がかかりますから。しばらくはCやDランクのダンジョンを周り、数をこなすしかありませんね」


 少しこの世界の情報を教えただけで最適な行動を教えてくれる。本当に優秀な武器だ。
 

「そうだな。傀儡の数に制限はないみたいだし……数増やすのと金稼ぐのをメインで行こうか」


「かしこまりました」


 レインたちは報告の為に一度街へ戻る事にした。

 

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