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第1章 炎の国『イグニス』〜今こそ覚醒の時〜
第20話
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「凄いです!レインさん!!」
受付の女性の馬鹿でかい声が響く。
あの後、支部に戻って魔法石を全部取り出した。魔法石も状態によって等級が分けられてそれぞれ重さで金額が決まる。レインは金が貰えればそれで良いから覚える気もない。
「Fランクで次元収納スキルが使える人はそういませんよ?!いや聞いた事がありません!」
「それはどうも。とりあえず換金してもらえる?あとすぐに行けるダンジョンは他にある?」
「す、すいません!金額に関しては少々お待ち下さい。専門の鑑定士がおりますので正確な金額をお伝えします。ダンジョンに関してもお調べしますので、しばらくお待ち下さい」
いきなり多くの事を言い過ぎた。受付の人に言われるがまま椅子に座って待つ事になった。
「…………暇だな」
ここまで目まぐるしく動いていたから椅子に座って待つという事が無かった。
「私が言って急がせましょうか?」
「やめてくれる?悪評が立っても嫌だし」
「かしこまりました」
「……………………」
「……………………」
2人に沈黙が訪れる。気不味い。なんか話題ないかな。ここは人も多いし会話は選ばないと。
「……阿頼耶はエリスの病気に関して知ってる事はないか?」
「…………申し訳ありません。症状を聞いた時からずっと考えてはおりましたが……心当たりはありません。完治できた例などはございますか?」
「あるにはある……らしい。それが同じ病気かは知らないけど。
とりあえず俺が知ってるのは神話級のポーションはどんな病気も治療できるって事だ。だけど最下級の治癒ポーションですら数十万するんだ。神話級なんて買えないし、そもそもどこにあるのかも分からない」
「そうでしたか。その治癒ポーションは作成が可能なのですか?」
「そう……かな?よく分からないけど、錬金系のスキル持ちがモンスターの素材を使って作成するんだったかな?
だから伝説級以上とかはAランクモンスターの素材とSランク覚醒者の力が必要なんだと思う」
「そうですか。エリス様の為にも急がないといけませんね。治癒スキルを持つモンスターがいれば楽なのですが……」
「そういえば阿頼耶は……取り込んだモンスターの力を使えるのか?」
レインは途中から会話の音量を下げる。この辺は聞かれるとマズイ気がする。
「制約はございます。私より力の劣るモンスターであれば100%使えますが、私と同等又は上位のモンスターであれば……50%と言ったところでしょうか。
ご主……レインさんの魔力をいただいた時にかなり強くなりましたが、それでもまだまだです。あ!決してご主人様が弱いというわけではありません!……ご主人様じゃくなくてレインさんでした!」
今、完全にご主人様って言ったな。2回。まあいいか。つまり阿頼耶の成長条件は今の自分より強い奴を取り込む事か。
成長途中のレインの魔力で力を得て、Dランク覚醒者を取り込んで知識を得た……って感じか。
なら阿頼耶の成長の為に上位のモンスターとも戦わないといけないな。Cランク程度じゃダメだ。
「大変お待たせ致しましたー!」
さっきの受付の人が出てきた。大きな袋を両手で抱えている。
「これがこの度の報酬になります。総額は350万zelです。これを2人で攻略されてますので1人当たり175万zelになります。
そこから40%を当組合にお納めいただきますのでレインさんとアラヤさんの報酬はそれぞれ105万zelとなります。2人分に分けましょうか?」
マジか。荷物持ち何回分だ?…………計算苦手だから分かんねぇ。
「いえそのままで結構です。ダンジョンの件はどうなってますか?」
「申し訳ありません。現在、こちらで保有していて且つまだ誰も手をつけていないダンジョンはEランクダンジョンくらいしかないんです。アラヤさんはAランクですから……申し訳ありません」
要は阿頼耶のランクに見合ったダンジョンがないって事だな。……200万くらいあったら普通にBランクダンジョンくらいなら攻略権を買う事もいけそうだけどな。相場を知らないけど。
こんな大金持った事ないから分からない。
レインの目の前にはそのお金があるそれを実感すると変な汗が出てきた。
「でしたら……我々と行きませんか?」
今度は別の方向から声をかけられた。振り返ると8人くらいの覚醒者パーティーがいた。リーダー格と思われる男性が代表で話しかけてきた。
「貴方たちは?」
「失礼しました。私はアラムといいます。Cランクです。このパーティーのリーダーを務めております」
アラムと名乗る男の背後には女性3人と男性4人がいた。女性は多分回復スキルか魔法系スキル持ちだな。剣を装備していない時点でそう思える。
「……それで?私たちに何の用でしょう?」
やはり阿頼耶はレインやエリス以外には無愛想だ。別に愛想よくしろとは言わないが余計なトラブルになりそうだな。また言っておこう。
「先程の会話を聞いていました。お金が必要……との事で高ランクのダンジョンを探しているんですよね?」
「そうですね」
「実は私たち……運良くBランクダンジョンの攻略権を獲得したんですが……見ての通りCランクしかいないのです」
「どうやって獲得したんです?規則上、希望する事も出来ないはずですが?」
レインは思わず声をかけた。常識的に見てあり得ないからだ。何らかの不正を行えば問題ないだろうけど、それをこんな所で言うのもおかしい。
「失礼……貴方は?」
「この人とパーティーを組んでる者です」
「そうですか……失礼しました。実は少し前まではAランク覚醒者がリーダーをしていたんです。しかし突然『黒龍』ギルドに所属すると言い出して抜けてしまったんです。
これまでの攻略をほぼ全て彼に頼っていた事もあって焦りました。彼が抜ける前に押さえていたBランクダンジョンを何とか攻略して当面の活動資金にしようと思ったのですが……」
「……Cランクだけだとどれだけ人数を揃えてもBランクダンジョンは攻略出来ない……いやかなり厳しいもんな」
「仰る通りです。ですので……貴方がAランクだというのを耳にしまして…こうして声をかけたと言うことです」
「そうですか」
「それで……どうでしょう?報酬の分配はもちろん優遇させていただきます。この支部を通さないので報酬は全て我々の物になります。決して悪くない話だと思いますが……」
そうか。この支部から紹介されたダンジョンじゃなくて自分たちで手に入れた物だから報酬は全て攻略したパーティーの物になるのか。
しかもこの支部に来る者はフリーでギルドには所属していない人が多い。高ランクの人が来るのを待ってたんだな。
「どうしますか?」
阿頼耶はレインに確認する。
「貴方は……覚醒者ですか?」
アラムがレインに問いかける。阿頼耶が返事をせずレインに確認する光景が不思議なのだろう。
「そうだよ」
「失礼ですが……ランクは?」
「Fランクだが?」
「…………ふッ…F?FランクがAランク覚醒者とパーティーを組んでいるんですか?……ああ、もしかして荷物持ちとか?」
なんだこいつ?鼻で笑ったな。ランクを知った途端に失礼極まりない奴だな。……まあFランクなんてどこでもこんな感じの扱いだ。もう慣れた。
しかし、この言葉を聞いた阿頼耶は勢いよく立ち上がる。椅子はガタンッという大きな音を立てて後ろに倒れた。
「貴様……ご主ッ…レインさんを愚弄するのか?」
阿頼耶はブチ切れてアラムの首を掴んで持ち上げた。
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