王子の凱旋

小野あやか

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凱旋後

凱旋後の日常 レニドールSide

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魔王討伐が終わりルーファスとの蜜月を終わらせて王宮に帰ってきた俺は、父上からアルハート国と隣接している辺境伯の爵位を押し付けられた。
なんでも、魔王により活性化した魔物討伐で、辺境伯一家や騎士、戦士達が疲弊しているらしい。
辺境伯は嫡男や二男が亡くなり、自身も負傷し、色々と限界らしい。王都で療養しながら王宮勤めに変更するらいし。
そんな深刻な状態になっているから、臣籍降下前でも準備ができ次第辺境領へ行かなければならない。
まあ、俺の私物はそんなにないし、公務もあまりしてないから、荷物整理や引き継ぎが無いと言っていい。
何か自分で言ってて悲しくなるな……。

やることが無いから取り敢えずお世話になった剣の師匠であるパルムに、今までの事を報告しようと騎士団へ向かった。訓練場には見当たらなく、探し回っていると人気のない中庭に出た。
「…………っ!」
そこには顔を赤くしているルーファスと騎士団事務員の姿が……。
表情豊かに喋っているルーファスに衝撃を受けてしまった。俺には穏やかに微笑んで喋るルーファスは、事務員にはあんな顔をするんだ……。
わかってる。ルーファスは今は俺の恋人だし、これからは伴侶になってくれる。何度も愛していると言ってくれた。
でも……わかっていても俺の前ではしない表情を、身体の関係を持っていた男の前でされるのは悔しい……。凄く嫌だ。
ルーファスは魅力に溢れていて、常に沢山の人に秋波を送られている。二人の様子をみて、俺達のこの関係は盤石ではないのかもしれないと感じてしまった。ルーファスに声は掛けず、中庭を去る。

「助けてセーラン先生~っ」
「で、殿下!? なんですか藪から棒に!」
剣の師匠パルムを捜し当てて報告を完了した後、俺は恋愛の師匠セーランに助けを求めた。休憩所での休憩中、突然俺に抱きつかれたセーランは当たり前の如く驚いている。

「なぁ、永遠の愛ってあると思う?」
「は、はぁっ!? 本当に藪から棒に、何なんですか? そんなのあるわけないでしょう」
「っ!!!」
セーランの否定にショックを受けた。
「や、やっぱり……ないのか……」
「あのですねぇ、人の気持ちは移ろうものなんですから、恋だの愛だのに夢見ないで下さいよ。相手を繋ぎ止めるにはお互いの努力が必要なんです」
……あの肉欲合理恋愛のセーランがなんか真摯な言葉を言っている……。
「そうか、お互いの努力……。具体的にはどうすればいいんだ?」
「んー、お互いを思いやるとか、自分の事ばかりにならない、とか? 言葉だと簡単に言えますがね、結構大変ですよ。時には我慢しなきゃいけない事もあります。相手にしたことは自分にも返ってきますからね。思いやれば思い返される。独りよがりではなくてそれが通じないなら、それはもう自分にとって合わない相手ですね」
「そうか、我慢と思いやり……」
やはりセーランは恋愛師匠だ。飄々と水を飲みながらも紡ぐ、有難い言葉にじんわり胸が温かくなった。
「あと、これが一番大事なことですが」
「……っ」
大事な事……ゴクリ……。真剣に聞こうと思わずセーランににじり寄る。

「適度に刺激的なセックスをする事です」
ガクリと腕の力が抜けた。
「……セ……クス、するだけでも……刺激的なのに……」
恥ずかしくてもにょもにょと小声になってしまった。
「は? 殿下、まさか、ベッドにただ転がっているだけじゃないでしょうね!?」
「なっっはっ……にゃっ!?」
変に鋭い指摘にあたふたしていると、セーランの表情が徐々にオーガのような形相に変わっていく。
「殿下は台所の魚なんですか!?」
「え……台所……? 魚……?」
「ああ、どちらもわからないですよね。これから調理しようと台に乗せた死んだ魚と同じように、ベッドの上で転がっているだけの動かない輩のことですよ!」
「はわっはわゎっ」
「受け身でいいのは数ヶ月ですよ。受け身ばかりでは相手は刺激のない単調なセックスに飽きてしまいます!」
「ふえぇっど、どうしたらいいですか、セーラン先生!」
「いいですか! 口淫は積極的に! ただ頭を上下に動かせばいいんじゃないんです! 舌を巧みに操るんです! 普段攻めてる男だって攻められたい時もあります! 恥ずかしくても恥ずかしい格好を敢えて見せつける! そして積極的に腰を振る! セックスする場所はベッドだけじゃない! 昼は貞淑、夜は娼婦のようにですよ!」
「ふっふぁい!」

それから何故かセーランの訓練に加わりながら口頭で閨テクニックを叩き込まれた。近くで俺達の話を聞いていた騎士団員達が、股間を痛くして辛そうにしていたのを俺は知る由もなかった。
刺激的なセックスをする事で、恋愛の寿命が伸びるのを教えてくれたセーランはやはり肉欲恋愛師匠。

「教えてくれてありがとうセーラン。じゃあこれからルーファス襲ってくるわ」
訓練が終わる頃には日は傾き、ルーファスもそろそろ兵舎へ荷物整理の為に戻る時間だろう。俺はセーランにお礼を言った。セーランは弟子を送り出すようなスッキリとした顔をしている。
「頑張って下さい! 実践あるのみです! それから、世界を救って下さってありがとうございます!」
大した事はしてないけど、感謝されるのは面映くも嬉しい。セーランに手を振り、俺はルーファスの部屋へ向かった。


++++++++
ルーファスとエルンは気安い仲なので口調は崩してます。
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