16 / 102
第15話 その男、徳川家康
しおりを挟む
「小早川はまだ動かぬか!!!!」
一人の男が松尾山方面に向かい叫ぶ。
「ええい!もっと鉄砲を撃ち込め!!!」
その瞬間…
「パンパーン!」
と、銃声が聞こえた。
叫んでいた男は驚き、地面に頭を手で隠しながら伏せた。
「な、な、な、んじゃ…。」
声は震えている。
その男の後方では、ある男を守るように何人もの護衛が立っている。
そう。ここは東軍本陣・徳川家康の陣内。
「ほ、ほ、報告~!!」
慌てた様子の伝令が陣幕に入る。
「松尾山より我本陣上空に向かって発砲。その軍を松尾山麓近くまで進軍!!」
陣内はざわつく。
「何!?金吾が!!!???」
「調略が失敗したのか???」
「まずいぞ!!!」
様々な意見が飛び交う。
銃声が落ち着くと、一人二人と護衛の兵は後ろに回る。
最後の護衛が後ろに回ると一人の男が椅子に座っていた。
徳川家康である。
家康は両肘を両膝に付き頭を抱えている。
「殿!」
頭を抱え伏せていた、男はその状態のまま叫ぶ。
「殿!!いかがいたしますか??」
「……。」
家康は答えない。
男は、周りの者たちに支えられながらやっとの想いで立ち上がると、家康の元に近づき言う。
「殿。小早川隊が攻めてくるとなると、いよいよ戦況が危うくなりますぞ!」
怒気がこもっている。
そこにまた伝令が入って来た。
「報告!朽木・脇坂隊敗走開始!!大谷隊への対応は未だに藤堂様があたっておりまする!」
「なんと!!!!」
男は驚愕した。
朽木・脇坂隊が敗走。藤堂高虎隊も時間の問題。
それに、島津も今にもかかってきそうな、奇声をあげている…。
「殿!!!」
「…。」
「殿!!!何か仰っていただけませぬか!!??」
「…。」
そこにまた伝令が入って来る。
「報告!藤堂高虎隊一部敗走開始!!!」
「まずい!!!」
男は冷や汗でびしょびしょになった手で顔を抑える。
(まずい。このままでは、ここまでの調略が水の泡じゃ…。)
「殿!!このままでは相手は勢いをつけて攻めてまいりますぞ!!!」
「…。」
家康は答えない。
(先程の首は討ち捨て令…。それに…。まずい。ここは…。)
「殿!僭越ながら軍を動かせて頂きますぞ!」
家康はその言葉を聞くと、その男を見ると
「コクっ。」と、首を下に振る。
「は!」
男は答えると、諸将に言う。
「このままでは前線が危うい。南宮山付近に配置している浅野・池田らを前線に進むよう伝えい!」
「はっ!」
と、伝令が足早に出て行く。
すると諸将は男の元に近づき言う、
「本多様!それをなさると万が一南宮山にいる吉川隊が動いたらわが軍は袋の鼠でございますぞ!!!!」
「…。」
本多と言われた男の名は、本多正信。
調略に優れ、いつも家康の近くにおり、家康もまたこの男を頼った。
しかし、このような戦場向きの男ではなかった。
今日もこの関ヶ原の戦いに向けて、家康の調略に尽力し、その結果を高みの見物程度で参陣していた。
が、今日の家康は首は討ち捨て令を始め、違和感を感じていた。
現に、家康は何も喋らない。
(王者の風格を出されているのだろう)
と、最初は思っていたが、何か違う。
そこに伝令がまた走って来る。それも三人同時に。
一人が言う。
「報告!朽木・脇坂隊へ攻めてきた島左近隊。激しく戦をするわけでなく。威嚇するのみ!追撃はせず!」
二人目が言う。
「島津隊!威嚇の声のみで突撃の様子は見えず!」
三人目が言う。
「同じく小早川隊も上空に発砲と、威嚇の声だけでございまする。」
本多は、報告を受けると、混乱した。
「何じゃと???」
家康の眉が上がった。
第15話 完
一人の男が松尾山方面に向かい叫ぶ。
「ええい!もっと鉄砲を撃ち込め!!!」
その瞬間…
「パンパーン!」
と、銃声が聞こえた。
叫んでいた男は驚き、地面に頭を手で隠しながら伏せた。
「な、な、な、んじゃ…。」
声は震えている。
その男の後方では、ある男を守るように何人もの護衛が立っている。
そう。ここは東軍本陣・徳川家康の陣内。
「ほ、ほ、報告~!!」
慌てた様子の伝令が陣幕に入る。
「松尾山より我本陣上空に向かって発砲。その軍を松尾山麓近くまで進軍!!」
陣内はざわつく。
「何!?金吾が!!!???」
「調略が失敗したのか???」
「まずいぞ!!!」
様々な意見が飛び交う。
銃声が落ち着くと、一人二人と護衛の兵は後ろに回る。
最後の護衛が後ろに回ると一人の男が椅子に座っていた。
徳川家康である。
家康は両肘を両膝に付き頭を抱えている。
「殿!」
頭を抱え伏せていた、男はその状態のまま叫ぶ。
「殿!!いかがいたしますか??」
「……。」
家康は答えない。
男は、周りの者たちに支えられながらやっとの想いで立ち上がると、家康の元に近づき言う。
「殿。小早川隊が攻めてくるとなると、いよいよ戦況が危うくなりますぞ!」
怒気がこもっている。
そこにまた伝令が入って来た。
「報告!朽木・脇坂隊敗走開始!!大谷隊への対応は未だに藤堂様があたっておりまする!」
「なんと!!!!」
男は驚愕した。
朽木・脇坂隊が敗走。藤堂高虎隊も時間の問題。
それに、島津も今にもかかってきそうな、奇声をあげている…。
「殿!!!」
「…。」
「殿!!!何か仰っていただけませぬか!!??」
「…。」
そこにまた伝令が入って来る。
「報告!藤堂高虎隊一部敗走開始!!!」
「まずい!!!」
男は冷や汗でびしょびしょになった手で顔を抑える。
(まずい。このままでは、ここまでの調略が水の泡じゃ…。)
「殿!!このままでは相手は勢いをつけて攻めてまいりますぞ!!!」
「…。」
家康は答えない。
(先程の首は討ち捨て令…。それに…。まずい。ここは…。)
「殿!僭越ながら軍を動かせて頂きますぞ!」
家康はその言葉を聞くと、その男を見ると
「コクっ。」と、首を下に振る。
「は!」
男は答えると、諸将に言う。
「このままでは前線が危うい。南宮山付近に配置している浅野・池田らを前線に進むよう伝えい!」
「はっ!」
と、伝令が足早に出て行く。
すると諸将は男の元に近づき言う、
「本多様!それをなさると万が一南宮山にいる吉川隊が動いたらわが軍は袋の鼠でございますぞ!!!!」
「…。」
本多と言われた男の名は、本多正信。
調略に優れ、いつも家康の近くにおり、家康もまたこの男を頼った。
しかし、このような戦場向きの男ではなかった。
今日もこの関ヶ原の戦いに向けて、家康の調略に尽力し、その結果を高みの見物程度で参陣していた。
が、今日の家康は首は討ち捨て令を始め、違和感を感じていた。
現に、家康は何も喋らない。
(王者の風格を出されているのだろう)
と、最初は思っていたが、何か違う。
そこに伝令がまた走って来る。それも三人同時に。
一人が言う。
「報告!朽木・脇坂隊へ攻めてきた島左近隊。激しく戦をするわけでなく。威嚇するのみ!追撃はせず!」
二人目が言う。
「島津隊!威嚇の声のみで突撃の様子は見えず!」
三人目が言う。
「同じく小早川隊も上空に発砲と、威嚇の声だけでございまする。」
本多は、報告を受けると、混乱した。
「何じゃと???」
家康の眉が上がった。
第15話 完
2
あなたにおすすめの小説
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。
克全
歴史・時代
西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。
幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。
北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。
清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。
色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。
一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。
印旛沼開拓は成功するのか?
蝦夷開拓は成功するのか?
オロシャとは戦争になるのか?
蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか?
それともオロシャになるのか?
西洋帆船は導入されるのか?
幕府は開国に踏み切れるのか?
アイヌとの関係はどうなるのか?
幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる