天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜

岩 大志

文字の大きさ
73 / 102

71話

しおりを挟む
古都京都。多くの戦禍の中を生きてきたこの街は、時の権力者がこぞってこの京を目指し、支配しようと競う様に争った。
 
 喧騒の日々がやっと止んだと思えば、また血を血で洗う日々がやってくる。
 
 故にそれらを鎮魂する思いで建てられた寺院も多い。

津久見一行は牛一一家と別れると、嵯峨野竹林を抜け京の街を行く。

「秀信さん。」

津久見が前を行く秀信に声をかける。

「はい?」

秀信は馬の歩みを緩め、津久見と並行して進む。

「今から行く所はどんな所なんですか?何か牛一さんも意味深な事を言ってましたが…。」

「あぁ。阿弥陀寺ですね。いや、私も幼少期からお世話になっているお寺でして、そこにいらっしゃるお方が、とても優しくて、まるで我が子の様に私を可愛がって下さるんですよ。」

「そうなんですね。で、信長さんと何か関係があるとか…?」

「あぁ、そうなんですよ。でも何も教えて下さらなくて…ただ…。」

秀信の顔が曇った。

「ただ…?どうしたんですか?」

「あの日…あの本能寺に…。」

秀信の声は小さい。

(本能寺???)

津久見は思いもよらない言葉に驚き、考えた。

(本能寺…明智光秀が謀反を起こして、信長は自害。その後二条城の嫡男信忠は…。)

と、考えると津久見は咄嗟に声を漏らした。

「はっ!」

(そうか!秀信さんのお父さんは本能寺の変のあの日、二条城で亡くなられたんだ!だから寂しそうに…。)

「秀信さん。大丈夫ですよ。もう話さないで。私が何も気をつかえずに申し訳ありません…。」

津久見は馬上ながら、頭を深く下げた。

すると秀信はニッコリと笑うと津久見に向かって言う。

「大丈夫ですよ。あの日から全てが変わってしまいました。先の会議でもお伝えした様に治部殿のお陰で何か私は自分は何の為に生きてるのか、と自問自答する時間ができました。それに…。」

秀信の声が止まる。

「それに?」

「あそこのお坊さん…何か本当に血のつながっている様な、そんな気がしてならないんです。」

「えっ?」

「いや、そんな気がするだけです。ただ、本能寺のあの日もその場にいたとも聞いておりますし…」

「えっ!そうなんですか?」

「いつもはぐらかされてしまうんですけどね。でも、見識の深さは当代一と言われる御仁ですのでお会いして損は無いと思いますよ。」

「本当ですね。そんな方とお会いできるのか…。」

津久見は日本の歴史上一番と言っても過言無いあの事件。
 
本能寺の変の現場にいたと言われる人物に今から会いに行く、と思うと心が踊った。

そんな会話をしていると一つの寺院が見えて来た。

「治部殿!着きました!あちらが阿弥陀寺です!」

秀信が嬉しそうに指差し言う。

「お!あれですか。」

そこには近くの木々が呼応し息をするかのように立つ立派な寺院があった。

阿弥陀寺(あみだじ)は、現在の京都市上京区寺町通今出川上ル鶴山町にある浄土宗の寺院である。
 
例のごとく秀信が先に足速に寺院の門前へ行き

「織田岐阜秀信でございます。青玉上人はおいでなさりますか?」

溌剌とした声で言う。

「これは岐阜様。」

と、ほうきを持った小姓が頭を深々と下げながら言う。

「青玉上人はおわしますか?」

改めて秀信は聞く。

「はい。今お呼びいたしてまいります。」

と、小姓は言うと足早に奥の寺院へ歩いて行った。

「それにしても綺麗なお寺ですなぁ。」

左近達が秀信に追いつき寺院の門前で感心しながら言った。

「そうですな。いつもここに来ると心が洗われる思いがしますよ。」

秀信は目を瞑り深呼吸しながら言う。

「父上…。」

津久見に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で秀信は呟いた。

そこへテクテクと歳を取った坊主が歩いて来る。

テクテク。

丸坊主だが、白い立派な髭を蓄えている。

テクテク。

テンポの良い足取りで秀信の方へ向かってくる。

テクテク。

「上人様!!」

秀信は大声でその坊主に声をかける。

テクテク。

坊主は秀信の言葉を意に介せず歩いてくる。

テクテク。

「石田治部三成様をお連れ致しました!」

と、秀信が更に言う。

ピクっ。

坊主の眉が少し上がった

が、また

テクテクとこっちに向かってくる。

遂には秀信の横を通り過ぎて津久見の前に来ていた。

「えっ!?」

狼狽する津久見を坊主は爪先から頭のてっぺんまで舐める様に見る。

「え、あの~。」

困り果てた津久見は助けを求める様に秀信の方を見た。

その時であった。

大声で坊主は叫んだ。

「お主!!!未来人か!!!???」

静寂に包まれた寺院に声が響く。

「え!?え!?」

(未来人…?)


津久見は久しぶりに気絶した。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

札束艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 生まれついての勝負師。  あるいは、根っからのギャンブラー。  札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。  時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。  そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。  亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。  戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。  マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。  マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。  高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。  科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

処理中です...