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22.はじまりはじまり!
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「静粛に!」
髪を逆立てて騒いでいるビッチちゃんをみんなして眺めていたら、いつの間にか入廷していた審議官の一人が大声で言った。
ああ、これで少しは静かになるねとわたしがほっとしていると、そこに王族の方々が入ってこられた。すると、それを見たサバス様がなぜか嬉しそうに叫んだ。
「陛下! お待ちしておりました! どうか悪をお裁きください! 悪逆無道のハウアー家とホルスト家に正義の鉄槌を!!」
それに、それまで一人で騒いでいたビッチちゃんも便乗する。
「そうです! ついでにハウアー家出身の王妃と身分詐称の学園長にも鉄槌をお願いします!!」
……うっわあ、ドン引き。
ツッコミどころ満載のサバス様がかすむくらいビッチちゃんひどいわ。
スタイン男爵家は有数の商家とか、国にとって重要な家でもないのに、いったい何様のつもりなんだろ。それに敬称くらいつけなよ。この場で不敬罪で切り捨てられたいのかな?
ビッチちゃんのあまりの無礼さに、王妃様と学園長である先王弟殿下は眉をひそめられているし、陛下もアーヴィン様もお顔がひきつっていらっしゃるよ。
そして、しばらくの沈黙の後、ようやく国王陛下が口を開かれた。
「……ビッチ・スタイン。そなた、あれだけ申してもまだ不敬を重ねるか」
「えっ!? 不敬ってなにがですか? わたしじゃなくて、嫌がっているエディル様につきまとう、ずうずうしいクソ女のディアナと、サバス様に婚約破棄されるような悪役令嬢のマグノリアのことなら分かりますけど」
「ビッ、ビッチ! なんということを!! 娘の度重なる無礼、誠に申し訳ございません!!」
かしこまる様子もなく、ふてぶてしくのたまうビッチちゃんに、スタイン男爵は気の毒なくらい真っ青になって、その場で土下座した。
「ちょっとやめてよね! あんたがそんなことしたら、まるでわたしが悪いみたいじゃないの。悪いのは、わたしをいじめたマグノリアとディアナでしょ!」
ビッチちゃんは嫌そうに父親であるスタイン男爵にそう言い放ったけど、これのどこがいじめられた側なの? どう見てもいじめた側だよね? ビッチちゃん、もしかして自分の言動を客観的に見られない人?
つか、人前でも取り繕うことすらしないって馬鹿なの? 父親なのにあんた呼ばわりされた男爵がかわいそうになってきた。
「……ビッチ・スタイン。そなたの主張はのちほど聞くとして、ひとまずは用意された場に戻るがよい。サバス・パーカーもだ」
凍えそうな気を発しながら陛下がおっしゃると、騎士達がビッチちゃんとサバス様を用意された席まで連れていった。
「ちょっと、乱暴にしないでよ! わたしは被害者なのよ!」
「侯爵家嫡男である僕になにをするか、この無礼者!!」
どこかで見た光景を再度繰り返しながら、お花畑たちはパーカー侯爵とスタイン男爵家の人々がいる席に着く。ちなみに彼らの席は大審議の間の中央、裁判でいういわゆる被告席だ。
そして、ハウアー侯爵家の方々と、わたしたちホルスト家は告発人席に着いている。
それに気づいていないのは、ビッチちゃんとサバス様くらいで、大審議の間に案内されるまでわりと余裕そうにしていたパーカー侯爵でさえ顔が青ざめている。
「父上、どうかされたのですか? ここでは僕たちが主役なのですから、楽しまなければ損というものですよ」
「ふわぁ、お……っお……っ」
うわー、馬鹿息子を持つと大変だね! 確かにある意味この場の主役だわ。
サバス様よりはまだまともだったらしい侯爵は、息子の問いに答えられずにぶるぶると震えている。案外気は小さいらしい。
「──それでは、今回の大審議ではわたしが審議官長を務めさせてもらう」
大審議の間の一番高い席にて国王陛下がそう宣言されるそばで、王妃様やアーヴィン様、先王弟殿下が控えていらっしゃる。それを目にしたサバス様が大声で叫んだ。
「恐れながら陛下! なぜ罪人が陛下のそばにいるのです!? 王妃と学園長は裁かれる立場のはずです!」
……うわあああ……。
サバス様のこの行いに、会場の空気が凍りつく。
わたしのそばでお兄様が「救いようのない阿呆だな」とつぶやいたけど、わたしもそれに同意するしかない。
むしろそちらが裁かれる立場の人間が、かの方々を指さして罪人扱いって、王妃様方が王族って分かってないの? 馬鹿なの? ドMなの?
「黙れ、サバス・パーカー。そなたは誰に向かってものを言っておるのだ? その無礼な腕を下ろせ」
「しっ、しかしっ!」
「……二度は言わぬ。わたしの命に文句があるというなら、この場でそなたを不敬罪といたすが」
「……っ!」
有無を言わさぬ陛下のお言葉で、さしもの馬鹿令息も悔しそうに唇を噛んだ。けど、まだ懲りもせず忌々しそうに王妃様方を睨みつけてるよ。
サバス様、それ大幅な減点対象だからね。アホだなあ。
わたしや会場中の人々があきれている中で、審議官長の席にて陛下が重々しく宣言される。
「……それでは、これより大審議を執り行う。告発人は王家、ハウアー侯爵家、ホルスト伯爵家、……被告はパーカー侯爵家、スタイン男爵家である」
──大審議の始まりだ。
髪を逆立てて騒いでいるビッチちゃんをみんなして眺めていたら、いつの間にか入廷していた審議官の一人が大声で言った。
ああ、これで少しは静かになるねとわたしがほっとしていると、そこに王族の方々が入ってこられた。すると、それを見たサバス様がなぜか嬉しそうに叫んだ。
「陛下! お待ちしておりました! どうか悪をお裁きください! 悪逆無道のハウアー家とホルスト家に正義の鉄槌を!!」
それに、それまで一人で騒いでいたビッチちゃんも便乗する。
「そうです! ついでにハウアー家出身の王妃と身分詐称の学園長にも鉄槌をお願いします!!」
……うっわあ、ドン引き。
ツッコミどころ満載のサバス様がかすむくらいビッチちゃんひどいわ。
スタイン男爵家は有数の商家とか、国にとって重要な家でもないのに、いったい何様のつもりなんだろ。それに敬称くらいつけなよ。この場で不敬罪で切り捨てられたいのかな?
ビッチちゃんのあまりの無礼さに、王妃様と学園長である先王弟殿下は眉をひそめられているし、陛下もアーヴィン様もお顔がひきつっていらっしゃるよ。
そして、しばらくの沈黙の後、ようやく国王陛下が口を開かれた。
「……ビッチ・スタイン。そなた、あれだけ申してもまだ不敬を重ねるか」
「えっ!? 不敬ってなにがですか? わたしじゃなくて、嫌がっているエディル様につきまとう、ずうずうしいクソ女のディアナと、サバス様に婚約破棄されるような悪役令嬢のマグノリアのことなら分かりますけど」
「ビッ、ビッチ! なんということを!! 娘の度重なる無礼、誠に申し訳ございません!!」
かしこまる様子もなく、ふてぶてしくのたまうビッチちゃんに、スタイン男爵は気の毒なくらい真っ青になって、その場で土下座した。
「ちょっとやめてよね! あんたがそんなことしたら、まるでわたしが悪いみたいじゃないの。悪いのは、わたしをいじめたマグノリアとディアナでしょ!」
ビッチちゃんは嫌そうに父親であるスタイン男爵にそう言い放ったけど、これのどこがいじめられた側なの? どう見てもいじめた側だよね? ビッチちゃん、もしかして自分の言動を客観的に見られない人?
つか、人前でも取り繕うことすらしないって馬鹿なの? 父親なのにあんた呼ばわりされた男爵がかわいそうになってきた。
「……ビッチ・スタイン。そなたの主張はのちほど聞くとして、ひとまずは用意された場に戻るがよい。サバス・パーカーもだ」
凍えそうな気を発しながら陛下がおっしゃると、騎士達がビッチちゃんとサバス様を用意された席まで連れていった。
「ちょっと、乱暴にしないでよ! わたしは被害者なのよ!」
「侯爵家嫡男である僕になにをするか、この無礼者!!」
どこかで見た光景を再度繰り返しながら、お花畑たちはパーカー侯爵とスタイン男爵家の人々がいる席に着く。ちなみに彼らの席は大審議の間の中央、裁判でいういわゆる被告席だ。
そして、ハウアー侯爵家の方々と、わたしたちホルスト家は告発人席に着いている。
それに気づいていないのは、ビッチちゃんとサバス様くらいで、大審議の間に案内されるまでわりと余裕そうにしていたパーカー侯爵でさえ顔が青ざめている。
「父上、どうかされたのですか? ここでは僕たちが主役なのですから、楽しまなければ損というものですよ」
「ふわぁ、お……っお……っ」
うわー、馬鹿息子を持つと大変だね! 確かにある意味この場の主役だわ。
サバス様よりはまだまともだったらしい侯爵は、息子の問いに答えられずにぶるぶると震えている。案外気は小さいらしい。
「──それでは、今回の大審議ではわたしが審議官長を務めさせてもらう」
大審議の間の一番高い席にて国王陛下がそう宣言されるそばで、王妃様やアーヴィン様、先王弟殿下が控えていらっしゃる。それを目にしたサバス様が大声で叫んだ。
「恐れながら陛下! なぜ罪人が陛下のそばにいるのです!? 王妃と学園長は裁かれる立場のはずです!」
……うわあああ……。
サバス様のこの行いに、会場の空気が凍りつく。
わたしのそばでお兄様が「救いようのない阿呆だな」とつぶやいたけど、わたしもそれに同意するしかない。
むしろそちらが裁かれる立場の人間が、かの方々を指さして罪人扱いって、王妃様方が王族って分かってないの? 馬鹿なの? ドMなの?
「黙れ、サバス・パーカー。そなたは誰に向かってものを言っておるのだ? その無礼な腕を下ろせ」
「しっ、しかしっ!」
「……二度は言わぬ。わたしの命に文句があるというなら、この場でそなたを不敬罪といたすが」
「……っ!」
有無を言わさぬ陛下のお言葉で、さしもの馬鹿令息も悔しそうに唇を噛んだ。けど、まだ懲りもせず忌々しそうに王妃様方を睨みつけてるよ。
サバス様、それ大幅な減点対象だからね。アホだなあ。
わたしや会場中の人々があきれている中で、審議官長の席にて陛下が重々しく宣言される。
「……それでは、これより大審議を執り行う。告発人は王家、ハウアー侯爵家、ホルスト伯爵家、……被告はパーカー侯爵家、スタイン男爵家である」
──大審議の始まりだ。
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