見捨てられた令嬢は、王宮でかえり咲く

堂夏千聖

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記憶喪失ですが、夫に復讐いたします 8  一方、シルビオは?

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何も知らないエレオノーラが王宮で過ごしている間、シルビオの方は生きた心地がしない毎日を送っていた。



(…家出か?…それとも誘拐??)





エレオノーラの荷物や、衣服ももちろんそのままだ。



煙のように消えたとしか思えない。











エレオノーラがいなくなった次の日、

執事のジェルマンは、扉がバタバタと動く音で目が覚めた。



(こんな朝早くに、扉が開いている…?)



不思議に思って音のする方へ行ってみると、厨房の裏口が明け放されていて、雪がびゅうびゅうと吹き込んでいる。



出入り口に近いところは、うっすらと雪が積もってしまっていた。



(誰がこんなことを?)



念のため、屋敷の中を見て回る。



主人のシルビオはまだ休んでいるようだ。

夜半ごろ、屋敷に帰ってきたのを確認している。



午前四時、外はまだ暗い。メイドの二人も起きていないようだ。

通いの下男も、厨房のコックもまだ来ていない。



気になって、めったに訪ねないエレオノーラの部屋へ行ってみると、そこには誰もいなかった。



「エレオノーラ様?」

声を掛けるが、もちろん、返事はない。



念のため、寝台を見てみると、使われた形跡がない。



嫌な予感がして、屋敷中をくまなく見て回ったが、エレオノーラの姿はどこにもなかった。





真っ青になって、シルビオのもとへ行くと、当然のことながらぐっすり眠っていた。

主を起こすのは忍びないが、おずおずと声を掛ける。



「シルビオ様、お休みのところ、失礼します。」





シルビオは夜半まで、賭博場近くの酒場で情報を集めていたのだ。



行方不明になった両親についてだ。父と親しかったという女性が現れたので、彼女と一緒に酒場に行って、一緒にいた男性のことを知らないか、常連客に聞いて回っていたのだ。



夜半まで常連に飲まされ、酒に強いほうのシルビオもさすがに起き上がれない。

酒でだるい体を無理におこして答える。



昨夜の深酒がたたって、声がガラガラだ。



「…ジェルマンか…、こんな時間にどうした。」



まだ夜は明けていない。



「それが…エレオノーラ様がいらっしゃらないようなのです。」





「いない?どういうことだ?」



酔いで頭が回らない。



「もしかしたら、お屋敷をお出になったのかもしれません。」



「なんだって?!」



一気に酔いがさめた。



こんな暗い中、一人で出歩くとは思えない。それどころか、彼女には行く当てもないはずなのに…











屋敷の中を一通りジェルマンとともにエレオノーラを探した後、最近のエレオノーラについてジェルマンに尋ねた。





その状況に、シルビオは驚愕きょうがくした。



十分な生活費をエレオノーラ用に渡していたにも関わらず、ドレスも仕立てたのは2着だけ、その他準備したものは何もないというのだ。



(しかも、食事もいつとっているかわからない?)



「メイドは?彼女の世話をしているはずだろう?」



ジェルマンはもごもごとくちごもるだけで、はっきり言わない。



「奥様は自分のことは自分でなさる方なので、お世話は必要ないようでして…

それに、二人しかいないため、お屋敷の掃除で手一杯なのではないでしょうか。」



使用人をこの規模の屋敷で雇えないのは自分の責任だから、仕方ない。



(それにしたって、彼女はまだ子供のはず…世話ができる人間を雇うべきだった…。)



シルビオはジェルマンを信頼していた。

年齢のこともあり他家を退職したところを、無理をいってこの屋敷に来てもらったのだ



「行き届かず申し訳ありません。私としましても、このような状況は初めてでして…」



それはそうだろう、通常当主が不在の場合は公爵夫人が使用人に指示をすることになる。しかし、その公爵夫人はまだ少女だ。ジェルマンにとっては孫のような年齢なのだ。



「そうだな。考えが及ばなかった俺の責任だ。エレオノーラの不在を知らせてくれて助かった。」





(使用人に、ジェルマンに任せておけば大丈夫だと思い込んでいた。こんなことなら、タウンハウスに伴って、メイドや家庭教師をつけるべきだった。)



後悔しても、仕方ない。この状況では、家を出たくなっても当然だろう。



しかし、それならば荷物がそのままというのは不思議だ。



(一体どこへ…?)



もしかして、もうどこかで冷たくなっているのでは…?と考えると腹の底がひやりとする。





吹雪の中、裏口からエレオノーラを探して、シルビオは歩き始める。

足跡がないかと探したが、昨夜から降り積もった雪でとうに消えていた。

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