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記憶喪失ですが、夫に復讐いたします 32 記憶の小箱
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そのころ、フレデリックは、木陰から様子を伺っていた。
エレオノーラの様子がおかしかったので、少し一人にはさせたが息をひそめてすぐ近くにいた。
シルビオが現れて、驚いた。思わず声が出そうで、口を押さえる。
(また、シルビオ・ヴェルティエか。なんでこんなとこまで来るんだよ?!)
たまたま来ていた森に、出くわすなんてそうそうない。
しかも、王家の森だ。最近は騎士団の訓練でしか使わないくらいひと気がないというのに。
(なんなんだ、あいつ、ストーカーか?)
心の中でけなしながら警戒するが、どうやら何かをする気はなさそうだ。
飛び出さずに様子を伺っていた。
二人の会話に聞き耳を立てていても、確証の得られることは何一つ話さない。
(情報が少なすぎる。くそ、ロランからの情報があれば……!まさか、俺に気づいていてはっきり言わないのか?)
様子を伺って、出ていく機会を失っているフレデリックだ。
そうこうしているうちに、シルビオはエレオノーラを馬に乗せようとしている。
(おいおい、まてまて、連れて行く気か?!)
エレオノーラは断っている様子だ。ただ、なんだか説得されそうな雰囲気でもある。
(このままだと、無理やり連れていかれるかもしれない!)
フレデリックは思わず、飛び出してしまった。
「まて!」
「フレデリック!」
「フレデリック・モレル……いたのか。」
さも残念そうに、眉をしかめるシルビオ。
「その方をどこへ連れて行こうとしている?」
「荷物を預かっている。彼女に渡す必要がある」
「それなら、俺が預かろう」
「いや、それはできない。」
「何故だ。」
「理由は言えないが……俺は彼女の家族…だ。」
(なんで、家族だ、と胸を張って言えないんだ、情けない。)
しかし、離婚が成立しようとしている今、家族と言っていいものか迷ってしまう。
(え……?家族?!さっきは家族になり損ねたって言っていたのに……?)
エレオノーラは戸惑っている。
エレオノーラの戸惑いをよそに、二人は一触即発の雰囲気だ。
(な、なんとかしなくちゃ!)
「あ、あの、申し訳ありません、せっかくですが、今は行けません。」
「そうか…」
「荷物はまた時機をあらためて、お渡しいただけますか?」
「……承知した。……あなたを困らせるつもりはない。少し強引だったな、すまない」
そう言って、フレデリックの方を一瞥すると、シルビオは乗ってきた馬にひらりとまたがり、王宮の方へ消えていった。
フレデリックが嚙みつきそうな顔をして、シルビオの姿が消えるまでにらんでいた。
「大丈夫よ、フレデリック。」
エレオノーラがそういうと、眉根を下げて、心配そうにフレデリックは向き直った。
「大丈夫なことないでしょう、以前あんなに怖がっていたじゃないですか。」
「そうね、でも、記憶が少し戻って落ち着いたかも。嫌な感じはするけど、それほどでもないの。」
「そうですか……?」
「うん、大丈夫よ。フレデリックが来てくれてほっとした、ありがとう。」
「いえ、それはいいのですが……」
なんとなく釈然としない表情のまま、フレデリックは王宮へ向かうのだった。
エレオノーラの様子がおかしかったので、少し一人にはさせたが息をひそめてすぐ近くにいた。
シルビオが現れて、驚いた。思わず声が出そうで、口を押さえる。
(また、シルビオ・ヴェルティエか。なんでこんなとこまで来るんだよ?!)
たまたま来ていた森に、出くわすなんてそうそうない。
しかも、王家の森だ。最近は騎士団の訓練でしか使わないくらいひと気がないというのに。
(なんなんだ、あいつ、ストーカーか?)
心の中でけなしながら警戒するが、どうやら何かをする気はなさそうだ。
飛び出さずに様子を伺っていた。
二人の会話に聞き耳を立てていても、確証の得られることは何一つ話さない。
(情報が少なすぎる。くそ、ロランからの情報があれば……!まさか、俺に気づいていてはっきり言わないのか?)
様子を伺って、出ていく機会を失っているフレデリックだ。
そうこうしているうちに、シルビオはエレオノーラを馬に乗せようとしている。
(おいおい、まてまて、連れて行く気か?!)
エレオノーラは断っている様子だ。ただ、なんだか説得されそうな雰囲気でもある。
(このままだと、無理やり連れていかれるかもしれない!)
フレデリックは思わず、飛び出してしまった。
「まて!」
「フレデリック!」
「フレデリック・モレル……いたのか。」
さも残念そうに、眉をしかめるシルビオ。
「その方をどこへ連れて行こうとしている?」
「荷物を預かっている。彼女に渡す必要がある」
「それなら、俺が預かろう」
「いや、それはできない。」
「何故だ。」
「理由は言えないが……俺は彼女の家族…だ。」
(なんで、家族だ、と胸を張って言えないんだ、情けない。)
しかし、離婚が成立しようとしている今、家族と言っていいものか迷ってしまう。
(え……?家族?!さっきは家族になり損ねたって言っていたのに……?)
エレオノーラは戸惑っている。
エレオノーラの戸惑いをよそに、二人は一触即発の雰囲気だ。
(な、なんとかしなくちゃ!)
「あ、あの、申し訳ありません、せっかくですが、今は行けません。」
「そうか…」
「荷物はまた時機をあらためて、お渡しいただけますか?」
「……承知した。……あなたを困らせるつもりはない。少し強引だったな、すまない」
そう言って、フレデリックの方を一瞥すると、シルビオは乗ってきた馬にひらりとまたがり、王宮の方へ消えていった。
フレデリックが嚙みつきそうな顔をして、シルビオの姿が消えるまでにらんでいた。
「大丈夫よ、フレデリック。」
エレオノーラがそういうと、眉根を下げて、心配そうにフレデリックは向き直った。
「大丈夫なことないでしょう、以前あんなに怖がっていたじゃないですか。」
「そうね、でも、記憶が少し戻って落ち着いたかも。嫌な感じはするけど、それほどでもないの。」
「そうですか……?」
「うん、大丈夫よ。フレデリックが来てくれてほっとした、ありがとう。」
「いえ、それはいいのですが……」
なんとなく釈然としない表情のまま、フレデリックは王宮へ向かうのだった。
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