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第1章 とにかく普通と平穏を 騒がしいのはお断り!
9.副官補佐は超・問題児⁉︎②
しおりを挟む目を瞠り、俺を見遣る男を同じく見つめる。
男の格好は城の兵の物らしい。ただ、一般兵とは違い、かなり上質で仕立ても凝ってる。腰には剣も下げてて、こちらも上物っぽい。
が……
「何だ?」
無言で見つめる俺に、男が軽く眉を上げて訝る。
それには応えず、目線をちらりと上から下まで這わせた。感想は簡潔。
不良っぽい、、だ。
とにかくだらしない。あちこち着崩してる。汚れたりはしてないが、着乱れてる。
が、顔はいい。スタイルもいい。いわゆるイケメン。
だからか、だらしなくって不良っぽいのにそれが決まってる。
くそ!イケメンなんか嫌いだ!!
なんとなく不公平感を感じ顔を顰める。
「で?」
「???」
男に言われ、意味が分からず首を傾げた。
で、、とは?
目を瞬く俺に、男が片眉を上げる。
「人を変質者呼ばわりしておいて知らん顔か?随分だな、おい」
「なっ、、!そ、れは、あんたがいきなり俺を……!」
「キャンキャン喚くからだろ?悪いが、こっちは見つかりたくなかったからな」
「~~~~~~~~~!!」
そんな事知るか!という言葉は咄嗟に出ない。一方的に俺が悪いとばかりな言い草に、呆れて二の句が継げないからだ。
何なんだ⁈この自己中の塊みたいな男は!
唖然呆然となる俺を他所に、男の手が俺の顎に掛けられ上向かされた。
「見た事ねぇ顔だ。宮の大体の侍女や侍従は把握したんだがな。俺を知らんとなると、新入りか?」
「な、に!ちょっと、離ッ、、!」
「艶と色気は足りんが、そこそこだな」
「は⁈」
値踏みするかのような扱いに、ブチっと我慢の糸が切れた。
「こ、、、ッの!!ふざけんな、、馬鹿ッッッ!!」
頭を振って、顎に掛かった手を振り払う。
思ったよりあっさり手が外れた。キッと睨みつけるがどこ吹く風で、面白そうに笑みを浮かべて見遣ってくる。
「いいな。その気の強さ」
「何なんだよ!さっきから。あんた、一体……」
「ユーグだ」
「は?」
言われた言葉に意味を図り兼ね、眉根を寄せる俺に、男が腕組みし笑みを深めた。
「”あんた”じゃねぇよ。俺の名はユーグだ。お前は?」
「あんたの名前なんか聞いてない!う、わっ⁉︎ちょっ、、、……⁈」
誰が名乗るかとばかりに吐き捨てた俺の体が、突如引っ張られ景色が歪んだ。
目を白黒させ、見開く視界に男、ユーグの顔が映る。間近でニヤッと不敵に笑む顔。腰を抱かれ、上から覆いかぶさるように見下ろされる。
「あんたじゃねぇだろ?名前で呼べよ。もう忘れたか?なら………」
「なっ⁉︎ッッッ」
グイッと抱かれた腰が引き寄せられる。
顔がさらに近づけられ、鼻先数センチにまで迫られる。
似たような境遇に既に会っている。
何で、同じ日に二回も⁉︎それも、美形とはいえ男から迫られなきゃならんのだ⁉︎
何とか逃れようとするが、腰はガッチリ抱かれ、腕はビクとも揺るがない。身を捩ろうにも近すぎる体が邪魔で上手くいかない。
必死に逃れようとする俺を尻目に、ユーグが耳元で囁く。
「忘れたんなら、もう一度言ってやろうか?唇に直接がいいんなら、オマケ付きで言ってやる」
「っにする気だ⁉︎は、なれろって!!」
「呼ばねぇなら、好きにするぞ?好きにして欲しくてわざとそうするんなら構わないが」
「ユ、、ユーグっ!!離し、離せッッ!!」
グッと顔の距離が縮まり、慌てて、殆ど叫ぶように言い放った。
「残念、、」
顔と体が僅か離され、ムカつくがホッとした俺の耳に、ユーグのクックッと喉で笑う声が届く。
揶揄ってるとしか思えない。
マジ、ムカつく!!
ギリと睨む俺に、涼しい顔で悠然と見遣ってくるのも腹が立ってしようがない。
「呼んだだろ?離せってば!」
「呼ばなきゃ好きにするとは言ったが、呼んだら離すとは言ってねぇな」
「なっ、そっ、、、!!!!!!」
言葉が言葉にならないとはこの事だ。
「こ、の!!王族にこんな事してタダで済むと思うなよ⁉︎」
あまり使いたくなかった手だが、これ以上は何をされるか分からない。身を守る為、背に腹はかえられず、告げた俺の言葉に、ユーグが目を瞠った。
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