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第1章 とにかく普通と平穏を 騒がしいのはお断り!
15.敵意を向けられるのは悲しいけど……①
しおりを挟む迫るリリヤの顔が怖い。
確かに、王族としてはあり得ない発言したかもしんないけど……
「カナデ様……」
「リ、リリヤ?あのな……」
険しい顔をしていたリリヤの顔がくしゃりと歪み、ダーッとばかりに涙が溢れ出す。
ま、また⁈
最初に泣かれてから、2回目の涙だ。
なんで⁈
「ご立派ですわ!カナデ様!!下々の者にまで気を配れるのは、皇族として重要です!」
「お、おう?……あぁ、立派、、、だった?」
王族らしからぬ発言を咎められるかと思って焦った。
リリヤの感情表現がいまいちよく分からん……
「とはいえ……褒賞をお与えになるのは国帝陛下です。今までにも為されてきた事ですし…」
それは、まぁ……
結局、腹は立つが俺自身皇族(望んでないが…)。国が決めた事に、どうのこうの言えない。
なまじっか、中途半端に地位があるから余計にタチが悪い。
現時点で、俺があれこれ言える立場にも、その権利すらないのは事実だ。
となれば、腹立ちは抑えとにかく、今は……
「どうやってそれを取り戻すか…だな」
「カナデ様?」
「……なぁんでもね!う~、、ん、御前演武の事は分かったけど、ユーグもカレスも何をそんなに……つか、俺とそれと何の関係があるってんだ?」
「まさか⁈………いえ、、あり得ませんわ……でも……万が一………」
「リリヤ?」
何やら、リリヤがぶつぶつ1人でやりだした。
はて?
訝る俺に、リリヤが一度ギュッと目を瞑り、フルフル首を振る。
再度、声をかける前に顔を上げ、リリヤが息を整えるとゆっくりと姿勢を正す。
「カナデ様。そろそろ、休息が終えますわ。会場へお戻りいたしましょう」
「え??あ、、、あぁ、?」
リリヤの態度は腑に落ちない。
問いただしたいが、すでに侍女としての態度を正しているし、後にしよう。
結局、聞きたい事聞いたんだか聞けなかったんだか…よく分からん結果になった。
「また、あの意味のない見世物に戻るのか?時間はもっと有意義に使いたいんですけど?」
「カナデ様……お気持ちは察しますが、それ、他の皇族貴族様方の前で仰らないで下さいね?」
げんなりする俺に、リリヤが溜め息をつく。
いやいや、溜め息つきたいのはこっちですよ?リリヤさん。
こんなくだらない茶番に付き合う暇があれば、俺は今後の俺の快適なモブ人生設計の為の対策を練る時間に使いたい。
ただでさえ、おかしな方向へ捻じ曲がろうとしてる今の生を、何とか自分の思う方へ直そうとしてるってぇのに!
何が楽しくてあんなクソ面白くもない見世物見なきゃならんのか……
憂鬱なのと、面倒なのとで気分が沈む。
「カナデ様……お顔に出し過ぎです」
「嬉しくもねぇのに、笑えねぇって……」
困ったように窘められるが、こればかりは自分でもどうしようもない。
ハァ~ッと深く溜め息をつき、部屋を出る。
足取りが重い。行きたくないから、余計に体が重く感じる。
回廊を曲がったところで、目の前に華やかな色が舞う。
4人の侍女らしき女の子が目の前にいた。
「これは失礼いたしました。第13皇子殿下」
中の1人が俺へ向けて頭を垂れた。
仕草も言葉も丁寧そのもの。
ただ………
向けられる空気も言葉に含まれた気持ちも棘だらけだ。
垂れていた頭が上がり、ひたと見据えられた。
見覚えがある。
「カレスの……」
ぽそと呟いた俺に、その侍女が顔を顰めた。次いで、不快そうに眉を顰める。
カレスの宮で俺にお茶を運び、睨んできた侍女だ。
「アニエスと申します。ご無礼とは存じますが、一つよろしいでしょうか?第13皇子殿下」
「……いいけど。名前でいいし。第13皇子殿下って長いし、呼び辛くね?」
「第13皇子殿下と違い、カレス様は継承権をお持ちです。序列は3位。呼び捨ては如何なものかと」
「……………………」
俺への呼び方と態度を改める気はないらしい。
侍女、アニエスと接点はない。
この前、カレスの宮で会ったのが最初……のはず。
この世界のカナデはどうか知らないが、少なくとも俺は知らない。
う~、、、ん……敵意を向けられる要素が思い当たらん。
戸惑い無言な俺に、アニエスが小さく溜め息をつく。
ほんのり笑みを交えたそれは、馬鹿にしたようなもので…
「カナデ様は皇子殿下です!貴女のその態度は、侍女に相応しからぬ無礼さですわ!」
俺が怒る前に(怒る気はないけど…)、リリヤが先にキレた。
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