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序章 異世界転移でてんやわんや篇
10.乙女心と騎士心
しおりを挟む「ジディ。マヒロの質問に答えてやってくれ。頼んだぞ?」
「かしこまりました」
カミナリ落とされ神妙に頷くジディの傍ら、キリアンが頭を押さえて不貞腐れている。
「隊長~!なぁ~んで、俺だけ殴られるんスか⁉︎」
「やかましい!お前らは、寄ると触ると喧嘩しやがって!キリアン。お前が譲れ!先輩であり、隊長補佐官だろう⁈自覚を持て!」
ガミガミ怒るカイザーに、キリアンが子供っぽく膨れる。隊長補佐官……これが?
失礼だが、そんな結構な地位にあるとは思わなかったし、思えない。
飽きれる俺の傍ら、ジディが、カイザーに庇われた事に少し嬉しそうにした後、キリアンを見遣り、悔しそうにキュッと唇を噛み締める。
庇われた事より、そちらの方が気持ちが強そうだ。
俺の視線に気付いたジディが、取り繕うように小さく微笑む。
「マヒロ様。あちらへ参りましょうか?何なりと、質問して下さい」
「あ、りがと。あの、マヒロでいいよ?様とか、やめてくんない?」
「なりません!!貴人にそんな呼び捨てなど!」
「そうそう!様なんて堅っ苦しいよねぇ?あ!俺は今まで通り、マヒロちゃんって呼ぶね?」
「あんたはちょっと遠慮しなさいよ!!」
「うるせぇよ!悔しかったら、お前も呼べばいいだろ?出来ないくせに!頭、カッチンコッチンの鉄女!!」
「何ですってーーーー!!」
「や・め・ろッッ!!」
再び言い争いを始めた二人に、カイザーのカミナリが再度落とされ、ついでにキリアンのみ、また、ゲンコツが落とされる。
「いったぁーーーーーー!!隊長!そんな、ゴンゴン叩いたら、俺、阿保になるっ!!」
「安心しろ!!もう、阿保だ!これ以上ならん!!」
「……………………隊長、、ひどい」
拗ねるキリアンを、カイザーが引っ張っていく。それを無言で見遣り、ジディが溜め息を小さくついた。
ジッと見ると、バツが悪そうに視線を逸らす。
う~ん…これは、アレだな?キリアンと仲が悪いのにも、何やら事情があると見た!
庭隅まで行き、置かれてあるイスに腰掛ける。
「さて!お聞きになりたい事とは、何になりますか?」
「キリアンを嫌いなのは何で?」
「え?」
「う~ん……違うな!嫌いっていうのとは、なんか違う気がする」
「マヒロ様?」
心底嫌ってたら、あんな風に反応しない筈。ジディのは…
俺が口を開くより早く、ジディが早口にまくし立てる。
「嫌いですわ!隊長に認められているのが嫌い!認められて実力あるクセに、常にヘラヘラしているのが嫌い!誰彼かまわず馴れ馴れしいのが嫌い!騎士の武術会で、私の時だけ手を抜くのが許せないし、負けた事を揶揄されてるのに気にもしないのは見ててイライラしますわ!隊長補佐官なのに、だらしないのも腹が立ちますし、楽なことが好きで、すぐに仕事中に怠けるし!とにかく、私は……」
「よく見てるな?」
「へ?」
ぽかんとするジディに、苦笑を禁じえない。
嫌いな相手の事なのによく見てる。これは、嫌いというより、むしろ………
「キリアンの事、好きなんだ?」
「な!そ、、ちがッ、、!!」
俺の問いに、ジディが真っ赤になり言葉を詰まらせる。
実力あるのは認めてる。けど、浮ついた所は許せない。好きだけど、自分を対等にも見てもくれない相手を、自分だけが好きなのを認めたくなくて……
さしずめ、乙女心と騎士心ってところか?
「マヒロ様!!」
「いいじゃん、別に。俺しか聞いてないし?」
「そ、、~~~~~~~~~!!!!!」
二の句が継げず、口をパクパクさせて、ジディが押し黙る。
「わ、たくしは……ッッ⁉︎マヒロ様ッッ!!」
「ふへ?」
突然、がばりと覆い被さるように抱きつかれた。ジディの大胆な行動に驚愕。
女の子、柔らかくていい匂いが……と、呑気に考えてもいられず、目の前に迫る炎の塊に目を見開く。
「ジディ!炎がッッ、逃げっ!!」
「動かないで!多分、逸れます!でも、破片でケガをしたら危ないから動かないで下さいませ!!」
「ケガしたらって!普通、逆ーーーーーッッ!!」
女の子に庇われる俺って……
炎から目が離せない。
スッと、何かが体に入り込む感覚を覚えた瞬間、目の前に旋風が逆巻いた。
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