聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

文字の大きさ
12 / 120
序章 異世界転移でてんやわんや篇

10.乙女心と騎士心

しおりを挟む



「ジディ。マヒロの質問に答えてやってくれ。頼んだぞ?」
「かしこまりました」

カミナリ落とされ神妙に頷くジディの傍ら、キリアンが頭を押さえて不貞腐れている。

「隊長~!なぁ~んで、俺だけ殴られるんスか⁉︎」
「やかましい!お前らは、寄ると触ると喧嘩しやがって!キリアン。お前が譲れ!先輩であり、隊長補佐官だろう⁈自覚を持て!」

ガミガミ怒るカイザーに、キリアンが子供っぽく膨れる。隊長補佐官……が?
失礼だが、そんな結構な地位にあるとは思わなかったし、思えない。
飽きれる俺の傍ら、ジディが、カイザーに庇われた事に少し嬉しそうにした後、キリアンを見遣り、悔しそうにキュッと唇を噛み締める。
庇われた事より、そちらの方が気持ちが強そうだ。
俺の視線に気付いたジディが、取り繕うように小さく微笑む。

「マヒロ様。あちらへ参りましょうか?何なりと、質問して下さい」
「あ、りがと。あの、マヒロでいいよ?様とか、やめてくんない?」
「なりません!!貴人にそんな呼び捨てなど!」
「そうそう!様なんて堅っ苦しいよねぇ?あ!俺は今まで通り、マヒロちゃんって呼ぶね?」
「あんたはちょっと遠慮しなさいよ!!」
「うるせぇよ!悔しかったら、お前も呼べばいいだろ?出来ないくせに!頭、カッチンコッチンの鉄女!!」
「何ですってーーーー!!」
「や・め・ろッッ!!」

再び言い争いを始めた二人に、カイザーのカミナリが再度落とされ、ついでにキリアンのみ、また、ゲンコツが落とされる。

「いったぁーーーーーー!!隊長!そんな、ゴンゴン叩いたら、俺、阿保になるっ!!」
「安心しろ!!もう、阿保だ!これ以上ならん!!」
「……………………隊長、、ひどい」

拗ねるキリアンを、カイザーが引っ張っていく。それを無言で見遣り、ジディが溜め息を小さくついた。
ジッと見ると、バツが悪そうに視線を逸らす。
う~ん…これは、アレだな?キリアンと仲が悪いのにも、何やら事情があると見た!
庭隅まで行き、置かれてあるイスに腰掛ける。

「さて!お聞きになりたい事とは、何になりますか?」
「キリアンを嫌いなのは何で?」
「え?」
「う~ん……違うな!嫌いっていうのとは、なんか違う気がする」
「マヒロ様?」

心底嫌ってたら、あんな風に反応しない筈。ジディのは…
俺が口を開くより早く、ジディが早口にまくし立てる。

「嫌いですわ!隊長に認められているのが嫌い!認められて実力あるクセに、常にヘラヘラしているのが嫌い!誰彼かまわず馴れ馴れしいのが嫌い!騎士の武術会で、私の時だけ手を抜くのが許せないし、負けた事を揶揄されてるのに気にもしないのは見ててイライラしますわ!隊長補佐官なのに、だらしないのも腹が立ちますし、楽なことが好きで、すぐに仕事中に怠けるし!とにかく、私は……」
「よく見てるな?」
「へ?」

ぽかんとするジディに、苦笑を禁じえない。
嫌いな相手の事なのによく見てる。これは、嫌いというより、むしろ………

「キリアンの事、好きなんだ?」
「な!そ、、ちがッ、、!!」

俺の問いに、ジディが真っ赤になり言葉を詰まらせる。
実力あるのは認めてる。けど、浮ついた所は許せない。好きだけど、自分を対等にも見てもくれない相手を、自分だけが好きなのを認めたくなくて……
さしずめ、乙女心と騎士心ってところか?

「マヒロ様!!」
「いいじゃん、別に。俺しか聞いてないし?」
「そ、、~~~~~~~~~!!!!!」

二の句が継げず、口をパクパクさせて、ジディが押し黙る。

「わ、たくしは……ッッ⁉︎マヒロ様ッッ!!」
「ふへ?」

突然、がばりと覆い被さるように抱きつかれた。ジディの大胆な行動に驚愕。
女の子、柔らかくていい匂いが……と、呑気に考えてもいられず、目の前に迫る炎の塊に目を見開く。

「ジディ!炎がッッ、逃げっ!!」
「動かないで!多分、逸れます!でも、破片でケガをしたら危ないから動かないで下さいませ!!」
「ケガしたらって!普通、逆ーーーーーッッ!!」

女の子に庇われる俺って……
炎から目が離せない。
スッと、何かが体に入り込む感覚を覚えた瞬間、目の前に旋風が逆巻いた。








しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...