聖獣騎士隊長様からの溺愛〜異世界転移記〜

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

文字の大きさ
11 / 120
序章 異世界転移でてんやわんや篇

9.それは………有り??




頬に当てた俺の手を、カイザーがそっと外した。

「お前自身……深くは……考えてないんだろうな」
「え?」
「何でもない…不用意に、その気もない相手の肌に触れるなよ」

それだけ言い、一人さっさと歩き出す。
しばし固まり、言われた言葉を数回反芻し、やがて、かぁーーっと顔が熱くなる。
言われた言葉もそうだが、何より、自分の行動に狼狽えた。
心配するのは分かる。が、何故触れる必要があったのか?
カイザーの熱がまだ残る自分の手を見下ろし、ワキワキ動かした後、思わずしゃがみ込んで顔を手で覆った。
恥ずかしすぎる!!
可愛い女の子ならまだしも……何で、よりによって男……
そこまで考えて、ハッとなる。

「その気もないのにっておかしいだろ⁈何で、そもそも、それが有りみたいな言い方するよ??」

カイザーの言い方だと、その気があれば、相手は女の子だけに限らずみたいに聞こえた。

「まさか……!……………………ね?」

怖い考えが浮かびそうで、思わず乾いた笑いが出た。

「いつまでそうしてる?騎兵舎に寄ってから帰る。さっさとしろ」

先に行っていたカイザーに呼ばれた。
一度、頭を軽く振り、脳裏に浮かんだ考えを振り払い後を追った。

            *
            *
            *
            *
            *

近衛騎士が詰める兵舎と呼ばれる建物は、一見、そうは見えないくらいに瀟洒しょうしゃな建物だ。
皇国に勤める、いわゆるエリートってやつだからか、粗末な物だと皇室の威厳に関わるとばかりに、綺麗にされていた。
カイザーに連れられ、恐る恐る入る。
中は意外とシンプルでスッキリしている。ごてごてしい鎧やら剣やらあったら……という考えは払拭された。

「意外とまとも……」
「何を想像してたんだ?こっちだ」

促され、奥へと進む。
中庭のような場所があり、そこを囲むように建物が建つ仕組みらしい。
灯りに照らされたその場所で、騎士らしき者たちが武術稽古したり、何やら難しい顔で話したりと集まっている。
外はかなり暗い。何時なのかは分からないが、夜だろうに、かなりな人数が詰めてる。

「隊長?」

声がかかり、青年が一人歩いてくる。
金髪の見知った顔。キリアンだ。

「皇太子殿下に呼ばれたんじゃ?もう、終わったんですか?」
「一応な。それもあって、ここに来た」

カイザーの少し後ろにいる俺に気付き、キリアンがパッと嬉しそうに笑う。

「マヒロちゃんも一緒ですか」
「……………………」

良く言えば気さくで人懐こい。悪く言えば馴れ馴れしい。よくよく知らない相手だというのに、ちゃん付け……
胡乱な俺の視線に構わず、キリアンが何が嬉しいのかニコニコ上機嫌に笑う。

「一緒に帰ってきたって事は、マヒロちゃんの疑いは晴れた、と?」
「それも………まぁ、一応だ」

歯切れの悪いカイザーの言葉にも、特に意に介せず、キリアンが良かった良かったと頷く。
見た目通りの能天気だ。
まぁ、根掘り葉掘り聞かれるよりかはいいが、こんなんで近衛騎士…大丈夫なのかと、些か、心配になる。

「隊長。お戻りになったのですね!」

ちょいキツめ美人のジディも、姿を見つけて駆け寄ってきた。俺の事も見遣り、少し目を見開いてから表情が和らぐ。少しは心配してくれたらしい。美人のお姉さんからの心配は普通に嬉しい。

「マヒロは、一応、皇太子殿下の命がかかった。貴人という事になるからその旨承知しておけ」
「貴人……詳細は、お聞かせ願えるのでしょうか?」
「極秘だ。だが、皇太子殿下と同等の庇護を要する」
「うっわぁ~~、ほんとですか?マヒロちゃん、そんな凄い子なんだぁ?」

凄いか凄くないかで言えば、特に凄いとは言えない。何せ、勘違いの人違いなのだ。ただ、それをバラすと面倒くさい事になりそうだし、こんな訳分かんない世界に、一人放り出されても困る。
帰る方法が見つかるまでは、なんとかここに置いてもらわなければならない。
記憶はないふりをするつもりで、騙すのは気が引けるが、背に腹は変えられない。
ほとんど、詳細らしい詳細はなし。それで納得しろはかなり乱暴だと思ったが、キリアンもジディも承知した。

「俺は皇太子殿下より、マヒロの護衛を任じられた。よって、近衛の職から暫く遠ざかる。が、隊長としての職はこなさねばならない。キリアンとジディは、悪いが補佐してくれ」
「もちろんっス!!俺に任せて下さい!」
「当然ですわ!全力でお支えします!私に全てお任せ下さい」

二人して先を競うように言い、お互いがお互いを見遣って、フン!とそっぽを向く。
この二人、ほんと仲悪いな……

「キリアン。近衛の予定の洗い出しをする。いいか?」
「了解で~す!」
「隊長!!それでしたら、私の方がッッ!」
「ジディは、マヒロの話を聞いて答えてやってほしいんだが…駄目なら、キリアンと代わって……」

にへら♡と笑うキリアンに、ジディがキリッと表情を引き締める。

「お任せ下さい!マヒロ様は私が全身全力でお守り致します!!けがらわしいけだものは一切近付けさせませんわ!」
「まて、コラ!!誰の事だ⁈」
「あなたの事なんて言ってないわよ?あなたの事なんて!」
「俺見て言うな!!あと、何で二回言った⁈」
「うるさいわね!!それ以上、近づかないでちょうだい!!」
「「……………………」」

俺とカイザーが二人して無言になり、言い争いが低俗化。白熱し、取っ組み合いに発展しかけ、業を煮やしたカイザーにカミナリを落とされるまでそれは続いた。









感想 166

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。 休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。 転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。 そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・ 知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。