並行時空十二天将夢幻譚

白黒ニャン子(旧:白黒ニャンコ)

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序章 始まりの刻

2.並行時空⑧

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「だ、だ、誰⁈」

突如、聞こえた笑い声に、慌てて振り向いた。
1人、わぁわぁ騒いでてまったく気付かなかった。見られていたんなら、超恥ずい!
狼狽えまくってから、ふと我にかえる。
部屋は一見普通に見えて、窓はかなり高い位置にある。その上、あまり気持ちがよろしくないが、格子がはまっていて、外を伺うどころか出る事すら出来ない。
唯一の出入り口の扉は鍵がかかっていた。
扉に耳を近づけてみたら、人の気配がして、見張りのような人がいるのが分かった。
そんな状態で、いくら自分の世界に没頭してたとはいえ、俺にまったく気付かせず部屋に入った?

「おや?気配が尖った。心配せんでもえぇよ?何もせぇへんから」

恐る恐る伺った俺の耳に届いたのは、耳馴染みのある方言。が、場所が場所だけに違和感ありまくりで、益々、体に緊張が走る。
そう広いわけではない部屋に置かれた卓と椅子いす。その椅子に座ってこちらを見る……

「綺、麗………………………」
「ありがとう♡それ、言われんの好っきや」

思わず口に出した言葉に、目の前の人物が嬉しそうに小さく笑い出す。
無意識の感想に、慌てて口を手で押さえる。
ちらっと視線だけ向ける俺に、相手がニコっと笑いかけてきた。
ごく薄く淡く金がかった腰まである髪に、長く影を作る睫毛に縁取られた同色の瞳。スッと通った鼻梁びりょうに、薄く品良く整った唇。
肌は、不健康ではない白さで、華やかな装飾と色味、柄の着物っぽい服に身を包んだ……

「……………………でも、、男、、、だよな?」
「うん!男、やよ?」

うわ!また、無意識に口に出した⁉︎
あわあわしだす俺に、目の前の男が益々楽しそうにクスクス笑いだす。

「表情、クルクル変わって、ほんま、可愛いわぁ」
「あ、あの!……誰?」

このままだと話が進みそうにない。少し強引だが、無理やり気持ちを切り替えた。

「ごめんなぁ。名乗ってへんかったわ。俺は天后てんこう。十二天将の1人や」
「てん、こう…さん?」
「さん付けいらんで?呼び捨てで構わんよ」

そう言われても、まったくの初対面で、正体も分からず、明らか見た目年上と見受けられる相手を、気安く呼び捨てにできるほど肝は座ってない。
いきなり襲ってきた匂陣の件もある。
引き気味に見ていると、キョトンとした後、男、天后がプッと吹き出す。

「考えてる事丸分かり。表情に出過ぎや!」
「な!そ、、ッ!」

クックっと喉で笑い、笑い過ぎで涙を滲ませた目で見遣る天后に、俺の顔にカァッと熱が昇る。
いいように転がされてるみたいで、滅茶苦茶居心地悪い。

「なるほどね…珍しいに、騰蛇が気持ち動かしたいう人間居る聞いて見に来たけど、妙に納得や」
「ッ!!」

騰蛇の名に、一瞬で顔に朱が昇る。
直前まで考えていただけに、今、その名前を出されるのはマズい。

「あらら、顔真っ赤!何やあった?」
「な、な、なに、も、な…」
「なくはないやろ?ふ~ん…?騰蛇が動くんも分かる気ぃするわ。ただ……」
「へ?」

フッと、いきなり目の前で天后の姿が消える。
どこにと考える間もなく、真後ろから腕が肩に回され、身体が固まった。

「あんたからは何も感じひん。神力は皆無。かといって、妖力や邪力の類は受け取れへん。まったく、至って普通の人間や。なのに……妙に、胸がざわつくんよなぁ」
「あ、の…?な、に、、わっ⁉︎」

グルンといきなり肩を掴んだ天后の手に、体を反転させられた。
壁に背をつけられ、顔の両脇に手をつけられ……
いわゆる、壁ドンされる。
目の前には超至近距離で、超絶整った顔。

「あんた………………………何もんや?」















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