10 / 22
序章 始まりの刻
2.並行時空⑨
しおりを挟む「な、……………………」
何者って……………………………………………………
「何者になった覚え、、ない」
「!!」
やや緊張しつつ応えた。
正直言って、それが、というか、そうとしか言いようがない。
俺は普通の18歳男子だ。環境が恵まれているとは言い難いが、それでも、別に特別なものは何もない普通の……
応えた俺に、天后が目を瞠る。
長い睫毛に縁取られた瞳でマジマジ見つめられ、居心地悪くてやや気圧された。
「ふっ……………………」
「??」
小さく空気が震え、天后が俯けた肩を震わせだした。
訝り、首を捻る俺の眼前に、バッと顔を上げた天后の美貌が迫った。
「あっはははは!!そら、そうか?そやな。なぁ~んもあれへんやんな?普通の男の子が「僕、何モンです」なぁ~んて言わへんな。堪忍なぁ。困らせるつもりなかってん」
「は、、ぁ⁇あ、の…」
「う~…ん、、でも、そうすると、俺が感じてるこれなんやろなぁ?騰蛇が惹かれたんや、ほんまに何もあらへん事ないやろ」
う~んと顎に手をやり、天后が思案しだすが、俺の体は背中が壁に付いて壁ドンされたまま。
いい加減そろそろ解放して欲しい。
若干、居心地悪くて身動ぐが、抜け出せる雰囲気がまったくない。
「顔は可愛いんよなぁ」
「……………………」
可愛いくない!という、反論はなんとか抑えた。
名誉とプライドの為にも言うが、不細工ではない。が、俺の容姿は至って普通だ。女の子的要素の可愛いはないはずで……ただ、今、口開くと余計面倒臭そうで…
「あれ?可愛い、言われた事ない?」
「ない……………………です」
「ええぇ?ほんまに?こないに、可愛いんに、周りの奴ら見る目ないんちゃう?」
そんな事言われても、ないモンはない!!
言われて嬉しい言葉ではなく、不貞腐れ気味に応える。
「神力感じられへん。顔は可愛いけど、普通の男の子。けど、妙に惹かれる……と、なれば」
「ッ⁉︎」
ツイと、超絶な流し目を寄越され、思わず身体が硬直した。
スッと手が伸ばされるが、蛇に睨まれたカエルの如く、身体がまったく動かせない。
顎に手を添えられ上向かされた。
「身体ん中……しか、あれへんな」
「は?か、らだ」
「そや。神力の事は知ってるやろ?目に見えるんが普通やけど、たまに特別な力すぎて、目に見えへん…見えんようになってる事があるん。やから、あんたもそうなんかもしれん」
普通に知ってる程で話されるが、神力の事と言われても、さっぱり何の事やらだ。が、身体の中などと、妙に意味深な言葉を聞かされ、意識がそちらを向いてしまい返すことが出来ない。
「となれば、確かめてみるんが一番手っ取り早いやんな」
「は?へ?確かめ、る??」
「そや。深部になればなるほど、あんたの正体確かめ易ぅなるんやけど……さすがに、逢うたばかりでそれはな…あ!俺は別に嫌やないよ?むしろ、あんたくらい可愛いらしいんは大歓迎!」
「………………………意味、分かんね」
「う~ん、、、となれば、涙か口ん中かが妥当かな?血ぃは、あんたン事、傷付けなあかんくなるし。さすがに、結論出てへん内に、庇護者勝手に傷付けたら俺が怒られる。俺も、こんな可愛い子傷付けんの嫌や」
1人であーでもないこーでもない言い、うんうん唸る天后に戸惑いが隠せない。無視されんのも困るし、上向かされた首もそろそろ辛いし、離して欲しいし説明もして欲しい。
「よし!あんたに決めてもらうわ!うん、それがえぇ」
「あ、の?何?」
顎にかかる手を振り解こうと、力を込めかけた俺の動きを察したか、はたまたそうする気だったか、手が外された。ニコと笑いかけられ…………………………
「涙流すか、俺に、あんたの口ン中吸わせて?」
放たれた言葉に、思い切りフリーズした。
0
あなたにおすすめの小説
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる