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序章 始まりの刻
2.並行時空⑩
しおりを挟む言われた意味が分からない。
いや、意味は分かる。言葉も分かる。
分からないのは………………………
「分かれへん?う~ん、、と、だから、あんたの……」
「何回も言わんでもいいわッ!!つか、何回も聞きたくねぇッ!!」
もう一度、同じ事を繰り返そうとした天后の言葉を遮った。
精神衛生上、あまりによろしくない言葉だ。あんなの、何回も聞いたら、俺のHPは限りなくゼロになる。
「分かってるん?なら、、」
「いや!いやいやいやいや!!分かってるから「はい、どうぞ」とはならねぇだろ⁈あんた、何考えてんだよ⁉︎な、なんで、俺…の」
涙はどうでもいい。問題は……
意味をもう一度反芻した途端、カァ~ッと、我知らず顔が熱くなる。
俺、今、多分顔真っ赤だ。
ほぅっと、小さな溜め息みたいな声が耳に届く。
ちらっと上目を向けると、天后が若干惚けたように俺を見たまま小さく微笑む。
「涙でも良かってんけど…そんな、可愛いらしい顔と反応見てもうたら、も一つの方が断然、俺的にもええなぁ」
「う、わ⁉︎ちょっ、、、ッ⁈」
「ほんま、反応可愛いらしいわ。もう、ええよな?」
「は?いや!良くない!!良くねぇって!!」
グッと腰を抱かれ、天后に抱き寄せられた時点で、ハッと我に返った。
慌てて、目の前の胸板を両手で押すが、ビクともしない。服越しにも、固く引き締まった筋肉を感じ、内心、かなり焦る。
顔も体も素晴らしいって、出来過ぎかよ⁉︎
ググッと、素晴らしいくらいに整い過ぎた顔が近付き、必死に顔を背け、手を突っ張り、逸らせるだけ体を逸らす。鑑賞に堪え得る顔だが、それでも、同じ男である事には変わりない。
あまり、無遠慮に近づいて欲しくない。
「ちょっ、まっ、、む、無理ッ!!」
「何で?俺、あんたの好みやない?」
「いや!あの、そもそも、話ズレてね?好み云々じゃなくて、俺のなんかを調べる的な事言ってたじゃねぇか!」
「そやったけど、とりあえず、今はあんたに触れたいからそれが先。触れたら分かるし。もし、違うかっても、俺得やから構わん」
駄目だーーーーーーーー!この人!!!!!
あっさり方向転換。しかも、俺得とか言っちゃってるし!
「構うから!なんか知んないけど、違うのにそんな事されちゃったら、俺は構う!ってか!ちゃんと説明しろってぇの!やだ!やだやだやだやだ!!」
「そないに、いやいや言われたらさすがに俺も傷つくよ?ええやん。騰蛇とはしたんやろ?」
「へ?は??」
「騰蛇とは口づけしたんや。あいつは良くて、俺は駄目なん?ズルい」
言われた言葉が、思考を上滑りする。
何を何したって?あの黒色の男?騰蛇?
んでもって…………………………くちづけ、だっけ??
あれ?くちづけって何だっけ?
………………………………………………………………
「~~~~~~~~~~~ッッッ!!!!!」
しっかり数秒フリーズした後、ボンっと頭から湯気が出るんじゃないかと思うくらいに、俺の全身が茹だった。
「なッ、そっ、、なッッ、いっ、!!」
「あれ、図星?なんや、やっぱり、そうかぁ」
「んなっ⁉︎」
ふ~んと、妙に納得したように天后が鼻を鳴らした。
こいつ!カマかけやがった!!
「朱雀たちの話では、上級屍鬼が出た言うし?神力使わんと、あんなモンどうにもできひん。かと思えば、神力使たはずの騰蛇が枯渇起こしてへんし……あいつが”陽”に頼みに来るとすれば、俺か、六合ン所くらいや。やのに、来た形跡ないん…やったら」
「ッッッ⁉︎」
ちらっと流し目を寄越される。
壮絶な色気と、妙な凄味のあるそれに息を呑んだ。
「一緒に居った、あんたになんかあるいう事や」
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