26 / 114
第1話
8
しおりを挟む
あれから3日が経った。
東雲からはお見合いが終わった後で、『今日はありがとう』というごく簡潔なLIMEメッセージがあってから、それっきりである。
彩は毎日、何十回も何百回もスマホを確認して、東雲からの連絡がないか確認しているのだが……。
こちらから連絡したほうがいいのだろうか。
何度もそう思ったが、なかなか踏み切れない。
アズサからは、自分から積極的に攻めろ、とアドバイスを貰ったけど……。
そんなぐいぐい行って、クールな東雲さんに引かれてしまったらどうしようかと悩む。
なにせ、男性と付き合うこと自体、本当に久々である。
それに結婚相談所での『真剣交際』という意味合いも、実は良くわかっていない。
ネットで調べたら、『プロポーズに向けて本気でお付き合いすること』と書いてあって、どきっとした。
しかし、これだけ連絡がないと言うことは……。
もしかして東雲さん、やっぱり気が変わっちゃったのかも。
「ふう~」
「ろうしたんでしゅか、杉崎しゃん」
彩のため息を聞いた隣席の竹下が、眉をひそめて声を掛けてくる。
「べ、別に、なんでもないからっ」
「はあ。ところで、杉崎しゃんが作ったこの発注書れすけど……」
「それが、どうかした?」
「金額、間違っれいましぇんか?」
書類を渡されてはっとした。
あやうく備品のトイレットペーパーを、1億円分も発注するところだったのである。
「ひええっ!」
「まったく、杉崎しゃん。なんか、最近おかしいでしゅよ。ミスも多いし」
ああ、ダメ後輩の竹下くんにまで、ダメ出しされるなんて。
東雲さんのことで頭がいっぱいで、なんだかぼんやりしてるなあ。
いかんいかん。もっと仕事に集中しないと!
……ああ、東雲さん。
昼休みとなり、会社の食堂で親子丼の5杯目を食べていると……。
突然、スマホが鳴った。
もしや、東雲さん!?
「ははははいっ! 杉崎ですっ!」
「美希だけど」
なあんだ、美希か。がっかりしてしまう。
「聞いたわよ。イケメンで三高の男と交際するんだって?」
もう美希の耳に入ったんだ。
女子のネットワークは侮れない。
「ま、まあ。そうだけど……」
「いいこと。すぐに断りなさい」
「えっ、なんで?」
「今夜、時間ある? 会って直接アドバイスしたいから!」
美希は場所と時間を勝手に指定すると、一方的に通話を切った。
彩はスマホを耳に当てたまま、呆然とする。
いきなり交際を断れって……どういうこと?
東雲からはお見合いが終わった後で、『今日はありがとう』というごく簡潔なLIMEメッセージがあってから、それっきりである。
彩は毎日、何十回も何百回もスマホを確認して、東雲からの連絡がないか確認しているのだが……。
こちらから連絡したほうがいいのだろうか。
何度もそう思ったが、なかなか踏み切れない。
アズサからは、自分から積極的に攻めろ、とアドバイスを貰ったけど……。
そんなぐいぐい行って、クールな東雲さんに引かれてしまったらどうしようかと悩む。
なにせ、男性と付き合うこと自体、本当に久々である。
それに結婚相談所での『真剣交際』という意味合いも、実は良くわかっていない。
ネットで調べたら、『プロポーズに向けて本気でお付き合いすること』と書いてあって、どきっとした。
しかし、これだけ連絡がないと言うことは……。
もしかして東雲さん、やっぱり気が変わっちゃったのかも。
「ふう~」
「ろうしたんでしゅか、杉崎しゃん」
彩のため息を聞いた隣席の竹下が、眉をひそめて声を掛けてくる。
「べ、別に、なんでもないからっ」
「はあ。ところで、杉崎しゃんが作ったこの発注書れすけど……」
「それが、どうかした?」
「金額、間違っれいましぇんか?」
書類を渡されてはっとした。
あやうく備品のトイレットペーパーを、1億円分も発注するところだったのである。
「ひええっ!」
「まったく、杉崎しゃん。なんか、最近おかしいでしゅよ。ミスも多いし」
ああ、ダメ後輩の竹下くんにまで、ダメ出しされるなんて。
東雲さんのことで頭がいっぱいで、なんだかぼんやりしてるなあ。
いかんいかん。もっと仕事に集中しないと!
……ああ、東雲さん。
昼休みとなり、会社の食堂で親子丼の5杯目を食べていると……。
突然、スマホが鳴った。
もしや、東雲さん!?
「ははははいっ! 杉崎ですっ!」
「美希だけど」
なあんだ、美希か。がっかりしてしまう。
「聞いたわよ。イケメンで三高の男と交際するんだって?」
もう美希の耳に入ったんだ。
女子のネットワークは侮れない。
「ま、まあ。そうだけど……」
「いいこと。すぐに断りなさい」
「えっ、なんで?」
「今夜、時間ある? 会って直接アドバイスしたいから!」
美希は場所と時間を勝手に指定すると、一方的に通話を切った。
彩はスマホを耳に当てたまま、呆然とする。
いきなり交際を断れって……どういうこと?
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる