27 / 114
第1話
8
しおりを挟む
◇
その日の夜。
彩は美希と、カフェで顔を突き合わせていた。
「……それで彩、相手はどんな男なの。具体的に説明して」
腕を組んで椅子の背もたれに仰け反った美希が、高圧的に聞いてくる。
彩は仕方なく、東雲について話すことにした。
なにせ美希は、彩の(練習台だけど)婚活アドバイザーなのである。
「えっと……めっちゃイケメンでクールな感じかな。身長はたぶん180cm以上はあるよ。年齢は36歳で年下。東大卒で公務員。年収は1000万くらいって言ってた」
美希はいらだったように、右眉をピクンと吊り上げる。
「それで? どうして彩がそんな男と交際することになったわけ?」
「食べるのが好きって言ったら、俺も好きだって答えてくれて、それで……」
「はあっ!? たったそれだけのことで、相手が交際をOKしたとでもっ!?」
「うん……」
「ありえない!」
ふんと鼻を鳴らすと、美希は彩を呆れたように見つめた。
「アンタね。それ、騙されてるよ」
「騙されてるって、そんな……どうして、そう思うの?」
「教えてあげましょう、私は婚活のプロだから。遊びや暇つぶしで結婚相談所に入会する悪い男がいるんだよ。そいつらは、女心を弄んで楽しんでるの。結婚を約束して有頂天にさせた挙げ句に、ぽいって捨てられるんだから」
「そんな……」
「だいたいねえ! アンタみたいなレベルの女に、そんな高スペック男を捕まえられるわけないでしょうが! 私、このまえ言ったよね。彩に釣り合うのは、年齢は最低でも45歳以上、容姿不問。年収300万程度だって! どうして私の言うことを聞かないの!?」
美希は顔を真っ赤にして、彩に詰め寄る。
そんなこと言われたって……逆になんで、美希が私の結婚相手を決めつけるんだろう?
「でも……もう、そのひとと真剣交際になっちゃったし……」
「はあっ!? いきなり真剣交際ですって!! たった一度のお見合いで、ありえない!!」
目をひん剥いて、美希はギリギリと歯ぎしりする。
「私が結婚にこぎつけるまで、どれだけ苦労したと思っているのよっ! 彩みたいな、なんにも考えないで楽して生きてきた女が、ちょっと婚活しただけで高スペック男を捕まえるなんて、許せないっ!」
言った後で、美希ははっとしたように口を押さえた。
つい、ぽろりと本音が出てしまったんだろう。
その日の夜。
彩は美希と、カフェで顔を突き合わせていた。
「……それで彩、相手はどんな男なの。具体的に説明して」
腕を組んで椅子の背もたれに仰け反った美希が、高圧的に聞いてくる。
彩は仕方なく、東雲について話すことにした。
なにせ美希は、彩の(練習台だけど)婚活アドバイザーなのである。
「えっと……めっちゃイケメンでクールな感じかな。身長はたぶん180cm以上はあるよ。年齢は36歳で年下。東大卒で公務員。年収は1000万くらいって言ってた」
美希はいらだったように、右眉をピクンと吊り上げる。
「それで? どうして彩がそんな男と交際することになったわけ?」
「食べるのが好きって言ったら、俺も好きだって答えてくれて、それで……」
「はあっ!? たったそれだけのことで、相手が交際をOKしたとでもっ!?」
「うん……」
「ありえない!」
ふんと鼻を鳴らすと、美希は彩を呆れたように見つめた。
「アンタね。それ、騙されてるよ」
「騙されてるって、そんな……どうして、そう思うの?」
「教えてあげましょう、私は婚活のプロだから。遊びや暇つぶしで結婚相談所に入会する悪い男がいるんだよ。そいつらは、女心を弄んで楽しんでるの。結婚を約束して有頂天にさせた挙げ句に、ぽいって捨てられるんだから」
「そんな……」
「だいたいねえ! アンタみたいなレベルの女に、そんな高スペック男を捕まえられるわけないでしょうが! 私、このまえ言ったよね。彩に釣り合うのは、年齢は最低でも45歳以上、容姿不問。年収300万程度だって! どうして私の言うことを聞かないの!?」
美希は顔を真っ赤にして、彩に詰め寄る。
そんなこと言われたって……逆になんで、美希が私の結婚相手を決めつけるんだろう?
「でも……もう、そのひとと真剣交際になっちゃったし……」
「はあっ!? いきなり真剣交際ですって!! たった一度のお見合いで、ありえない!!」
目をひん剥いて、美希はギリギリと歯ぎしりする。
「私が結婚にこぎつけるまで、どれだけ苦労したと思っているのよっ! 彩みたいな、なんにも考えないで楽して生きてきた女が、ちょっと婚活しただけで高スペック男を捕まえるなんて、許せないっ!」
言った後で、美希ははっとしたように口を押さえた。
つい、ぽろりと本音が出てしまったんだろう。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる