ヤケクソ結婚相談所

夢 餡子

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第1話

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「酷いよ、美希。婚活のアドバイスをしてくれるって言うから、素直に話を聞いたのに……そんな言い方ないじゃない……」

傷ついたように彩がそう言うと、美希は慌てて首を激しく横に振った。
そうして急に、猫なで声へと変わる。

「ごめん彩、今のはうそうそ、冗談だって。とにかく言いたいのは、騙される前に、そんな男はやめておきなさいってこと」
「だって……まだ騙されたって決まったわけじゃないし……」
「じゃあ、聞くけど。交際が始まったのはいつ?」
「3日前かな」
「その後、何回デートした? ホテルには行った?」

ふう~、そこまで聞きますか……。

「……いや、あれから会ってないよ」
「はあっ? じゃあ、電話やLIMEは!?」
「ない……」

美希は笑みを浮かべて、胸を張った。
その顔には、してやったりといった表情が浮かんでいる。

「ほらっ! やっぱり冗談で遊ばれただけだったじゃない!!」
「で、でも……」
「いつまで待っても、男から連絡なんか来ないよ! 彩は、からかわれただけなの!!」

美希がそう言い放った瞬間、彩のスマホが鳴った。
画面を見ると……東雲さんだ!!
興奮して、ドキドキしながらスマホを耳に当てた。

「はい、杉崎です」
『あっ、彩さん? ごめんなさい、連絡が遅れて』
「い、いいえっ!」

美希の鋭い視線を感じるが、今はそれどころではない。

『実はあれからちょっと仕事が立て込んでしまってね。ずっと本庁に寝泊まりしてたんだ』

本庁……てことは、公務員と言っても官僚ってこと!?
だから年収も高いのかー。
それにしても、やっぱり仕事が趣味って言うくらいだから、忙しいんだな。

「そうだったんですね。お仕事お疲れ様です!」
『ありがとう。それで、やっと仕事のほうも落ち着いてきたから、彩さんと食事でもどうかと思ってね』
「嬉しい! でも私、めっちゃ食べるけどいいですか?」
『ああ、構わない。俺もめっちゃ食べたい気分なんだ』
「やったー。それで、いつにします?」
『いきなりだけど、今晩空いてるかな?』

彩は目を上げて、様子をうかがうように聞き耳を立てている美希の顔をちらりと見る。

美希は、やめておけと言うけれども……そんなのやっぱり無理だよ。
それに、アドバイスと称して、単に私にマウントを取りたいだけなんじゃないだろうか。
だったらこれ以上、美希の話を聞いても無駄である。

「もちろんです! どこで待ち合わせますか!?」

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