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第1話
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私だけで8人前も食べてしまったから、金額は相当なものであろう。
だけど翔さんは、ボーイから渡された伝票も見ずにブラックカードを手渡す。
支払いを終えて外へ出ると、夜とは言え夏の熱気でむしむしとして暑かった。
だけど彩は、食事代のことで頭がいっぱいである。
無我夢中で食べてしまったけど……私にこんな高級店のお代なんか払えるだろうか。
なんせ給料日前で、財布はすっからかんである。貯金だってほとんどない。
とは言え、おそるおそる東雲に声を掛けた。
「あの、翔さん。私はいくら払えば……」
すると東雲は、ふっと笑う。
「そんなこと、気にしなくていい」
「で、でも……」
「俺はデートで、女子に金を払わせたことが一度もないんだ」
それだけ言うと、歩き始める。
その背中を追いながら、彩は思う。
なんて、かっこいいんだろう。
これまで付き合って来た男たちは、良くて割り勘。大抵が余計に金を出させようとする輩ばかりであった。
なのに、私ごときに、こんな素敵すぎる男性と肩を並べて歩く日がやってこようとは。
「どう? 美味しかった?」
「ええ、すっごく! これまでの人生で味わったことのない、最高のお肉でした! 本当にご馳走様でした!」
「そうか、それは良かった。でも、まだ足りないなら、もう一軒行こうか?」
「そんな! さすがに私でも、もうおなかいっぱいですよ~!」
まったく、翔さんたら、っと言って、思わず肘打ちをしてしまった。
「うっ……」
東雲は脇腹を押さえて、顔をしかめる。
ああ、ついとは言え、私ったらなんてことを!
「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですかっ!」
「あ、ああ……大丈夫だ。彩さんて結構力が強いんだね……」
「ホントに……すみません……」
「気にしないで。俺、これでも結構鍛えてるから」
そう言われても、彩は後悔の念でいっぱいである。
「それにしても、むし暑いね」
「そうですねー。まったく、どこかで涼みたい気分です」
それからしばらく大通りを歩き続け……。
繁華街を抜けたあたりで、東雲はふと足を止めた。
「あれ、どうかしましたか? 翔さん」
彩がそう聞くと、東雲は脇にそびえ立つ大きな建物に目を向ける。
「うん、彩さん。これから、どうしようか」
そこは、最高級ホテルのエントランスだったのである。
私だけで8人前も食べてしまったから、金額は相当なものであろう。
だけど翔さんは、ボーイから渡された伝票も見ずにブラックカードを手渡す。
支払いを終えて外へ出ると、夜とは言え夏の熱気でむしむしとして暑かった。
だけど彩は、食事代のことで頭がいっぱいである。
無我夢中で食べてしまったけど……私にこんな高級店のお代なんか払えるだろうか。
なんせ給料日前で、財布はすっからかんである。貯金だってほとんどない。
とは言え、おそるおそる東雲に声を掛けた。
「あの、翔さん。私はいくら払えば……」
すると東雲は、ふっと笑う。
「そんなこと、気にしなくていい」
「で、でも……」
「俺はデートで、女子に金を払わせたことが一度もないんだ」
それだけ言うと、歩き始める。
その背中を追いながら、彩は思う。
なんて、かっこいいんだろう。
これまで付き合って来た男たちは、良くて割り勘。大抵が余計に金を出させようとする輩ばかりであった。
なのに、私ごときに、こんな素敵すぎる男性と肩を並べて歩く日がやってこようとは。
「どう? 美味しかった?」
「ええ、すっごく! これまでの人生で味わったことのない、最高のお肉でした! 本当にご馳走様でした!」
「そうか、それは良かった。でも、まだ足りないなら、もう一軒行こうか?」
「そんな! さすがに私でも、もうおなかいっぱいですよ~!」
まったく、翔さんたら、っと言って、思わず肘打ちをしてしまった。
「うっ……」
東雲は脇腹を押さえて、顔をしかめる。
ああ、ついとは言え、私ったらなんてことを!
「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですかっ!」
「あ、ああ……大丈夫だ。彩さんて結構力が強いんだね……」
「ホントに……すみません……」
「気にしないで。俺、これでも結構鍛えてるから」
そう言われても、彩は後悔の念でいっぱいである。
「それにしても、むし暑いね」
「そうですねー。まったく、どこかで涼みたい気分です」
それからしばらく大通りを歩き続け……。
繁華街を抜けたあたりで、東雲はふと足を止めた。
「あれ、どうかしましたか? 翔さん」
彩がそう聞くと、東雲は脇にそびえ立つ大きな建物に目を向ける。
「うん、彩さん。これから、どうしようか」
そこは、最高級ホテルのエントランスだったのである。
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