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第1話
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これって……翔さんに誘われてる!?
いやいや、私がどこかで涼みたいなんて言ったから、気を遣ってくれたの?
どっちだか、わからないよ~。
彩があたふたしていると、東雲はおもむろに彩の顔をじっと覗き込んだ。
「彩さんと一晩すごそうか、そう聞いているんだけど。彩さんはどうしたい?」
顔がかあーっと熱くなった。
いきなりそんな展開は全く想定してなかったし、そうだ、今日の下着も可愛いやつじゃない。
ああ、でも、どうしよう……。
いやいや、やっぱりまだ、心の準備が出来てないよ~。
39歳にもなって、なに言ってるんだと思われるかもしれないけど、会ってたった2回目でそういうのは、ちょっと早いというか……。
「翔さん、ごめんなさい……今日は……」
ああ、言ってしまったよ。
こんなチャンス逃すなんて、私ってバカだ~。
だけど東雲は、彩のその言葉に残念そうでも、呆れたふうでもなく、ごく自然に答えた。
「うん、わかった。そうだよな、少し急ぎすぎだ」
「本当にすいません……」
「いいんだ、気にしないで。じゃあ、帰ろうか」
「はい……」
そうして、ふたり並んで駅に向かって歩き始めた。
とたんに、彩は後悔の念に駆られてしまう。
ああ、まったくダメダメだな私。
翔さん、がっがりしちゃっただろうな。
なんで、こんな時に限って、ビビってるんだよ~。
ひとり落ち込む彩に、東雲は意外な言葉をかけた。
「彩さん……合格だよ」
「はっ?」
「今夜のデートは、完璧だったってこと」
へっ!?
高級焼き肉、がつがつとひとりで8人前も食べてしまったし、夜のお誘いも断ってしまったのに、デートが完璧って、どういうこと!?
「やっぱり、あいつとは違うな……」
独り言のように、ぼそっと言ったその言葉が気になった。
「あいつって、誰ですか?」
すると東雲は、珍しく戸惑ったような表情を見せる。
「……いや、なんでもないんだ。気にしないでくれ」
なんだろう。
そう言われても、なんだか気になるな。
◇
『なにやってんの! バッカじゃない!?』
スマホから、アズサの罵声が聞こえてくる。
彩は自室でベッドに寝転びながら、ひーっと耳を押さえた。
『アヤさっ! もういい年をとっくに通り越してるんだから、そういう誘いは断らないでよっ! この骨なしチキンめがっ!!』
「お、おっしゃるとおりでございます……」
『あーあ。これで、東雲さんも呆れちゃって、もう二度と誘ってくれなくなるかもね!』
「で、でも……最後に東雲さんから、デートは完璧だったって言われたんだけど……」
そう。
あの意味はどうしても、よくわからない。
『ふーん。まあ、気を遣ってくれたんじゃない。だとすれば、めっちゃいい人だね』
「やっぱ、そうかな……」
『とにかく! 次回は絶対オーケーすること! ヤッて、ヤッて、ヤリまくるのっ!! いいっ? その次はないと思えーっ!!』
わかったよ……わかったけど、なんかアズサ、今日はテンション高くて怖いな。
明日、会社帰りにトランプ寄って、何年かぶりの勝負下着、買ってくるよ……。
「……ところでさ、アヤ」
急にアズサは、声のトーンを落とした。
「なに?」
「ひとつ、聞きたいんだけど」
なんだか、さっきまでと打って変わって真面目な雰囲気である。
いったい、どうしたんだろうか。
「アヤってさ……結婚したいのかな、それとも恋愛がしたいの?」
そのアズサの問いに、思わず彩は固まってしまった。
いやいや、私がどこかで涼みたいなんて言ったから、気を遣ってくれたの?
どっちだか、わからないよ~。
彩があたふたしていると、東雲はおもむろに彩の顔をじっと覗き込んだ。
「彩さんと一晩すごそうか、そう聞いているんだけど。彩さんはどうしたい?」
顔がかあーっと熱くなった。
いきなりそんな展開は全く想定してなかったし、そうだ、今日の下着も可愛いやつじゃない。
ああ、でも、どうしよう……。
いやいや、やっぱりまだ、心の準備が出来てないよ~。
39歳にもなって、なに言ってるんだと思われるかもしれないけど、会ってたった2回目でそういうのは、ちょっと早いというか……。
「翔さん、ごめんなさい……今日は……」
ああ、言ってしまったよ。
こんなチャンス逃すなんて、私ってバカだ~。
だけど東雲は、彩のその言葉に残念そうでも、呆れたふうでもなく、ごく自然に答えた。
「うん、わかった。そうだよな、少し急ぎすぎだ」
「本当にすいません……」
「いいんだ、気にしないで。じゃあ、帰ろうか」
「はい……」
そうして、ふたり並んで駅に向かって歩き始めた。
とたんに、彩は後悔の念に駆られてしまう。
ああ、まったくダメダメだな私。
翔さん、がっがりしちゃっただろうな。
なんで、こんな時に限って、ビビってるんだよ~。
ひとり落ち込む彩に、東雲は意外な言葉をかけた。
「彩さん……合格だよ」
「はっ?」
「今夜のデートは、完璧だったってこと」
へっ!?
高級焼き肉、がつがつとひとりで8人前も食べてしまったし、夜のお誘いも断ってしまったのに、デートが完璧って、どういうこと!?
「やっぱり、あいつとは違うな……」
独り言のように、ぼそっと言ったその言葉が気になった。
「あいつって、誰ですか?」
すると東雲は、珍しく戸惑ったような表情を見せる。
「……いや、なんでもないんだ。気にしないでくれ」
なんだろう。
そう言われても、なんだか気になるな。
◇
『なにやってんの! バッカじゃない!?』
スマホから、アズサの罵声が聞こえてくる。
彩は自室でベッドに寝転びながら、ひーっと耳を押さえた。
『アヤさっ! もういい年をとっくに通り越してるんだから、そういう誘いは断らないでよっ! この骨なしチキンめがっ!!』
「お、おっしゃるとおりでございます……」
『あーあ。これで、東雲さんも呆れちゃって、もう二度と誘ってくれなくなるかもね!』
「で、でも……最後に東雲さんから、デートは完璧だったって言われたんだけど……」
そう。
あの意味はどうしても、よくわからない。
『ふーん。まあ、気を遣ってくれたんじゃない。だとすれば、めっちゃいい人だね』
「やっぱ、そうかな……」
『とにかく! 次回は絶対オーケーすること! ヤッて、ヤッて、ヤリまくるのっ!! いいっ? その次はないと思えーっ!!』
わかったよ……わかったけど、なんかアズサ、今日はテンション高くて怖いな。
明日、会社帰りにトランプ寄って、何年かぶりの勝負下着、買ってくるよ……。
「……ところでさ、アヤ」
急にアズサは、声のトーンを落とした。
「なに?」
「ひとつ、聞きたいんだけど」
なんだか、さっきまでと打って変わって真面目な雰囲気である。
いったい、どうしたんだろうか。
「アヤってさ……結婚したいのかな、それとも恋愛がしたいの?」
そのアズサの問いに、思わず彩は固まってしまった。
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