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第1話
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それから彩は頑張って、東雲に合わせながら(彩にとっては)少しばかりのお寿司をつまんで店を後にした。
外は夜になっても、まだまだ暑い。ひとや建物が密集する繁華街ともなれば尚更である。
おまけに、彩の心はもっと熱かった。
「じゃあ、帰ろうか」
そう言って駅に向かおうとする東雲の顔を、彩は頑張ってじっと見つめた。
「翔さん……今日は大丈夫です……」
クールな表情をぴくりとも変えずに、東雲は彩を見返す。
ああ……自分からこんなことを言ってしまって、翔さんに変に思われないだろうか……。
「……そう。わかった」
おもむろに、東雲は前回エントランスまで行ったホテルのほうへと歩き出す。
彩も歩きながら東雲の横顔をちらちらとうかがうが、その表情からは何も読み取れない。
今日はその気がなかったのに、私が誘っちゃったから気分を悪くしたのかな。
さっき、がつがつした女の子に嫌気がさしたって言ってたし。
私もそう思われて、失望しちゃったのかも……。
複雑な気分のまま、ホテルに到着した。
広い豪華なロビーに入ると、ホテリエたちが一斉に深々と頭を下げる。
彩はなんだか、場違いな場所に来てしまった気がして落ち着かない。
フロントで鍵を受け取った東雲とともにエレベーターに乗る。
静かに上昇するエレベーターのなかで、翔さんとふたりっきり。
だけど、翔さんはあれから一言も話さずに、黙って階数表示ランプを見つめている。
ああ……どうしよう。
こんなときは……そうだ、カツ丼のことでも考えよう。
カツ丼は、ほかほかの白米の上にサクサクの衣で包まれたとんかつとふんわり溶き卵が乗っかっていて、一口食べると煮汁とともにジューシーな味わいが口いっぱいに広がり……。
いや、違うよ。
なんで私、カツ丼のことを考えてるんだ……。
(彩は現実から逃れたくなると、食べ物のことに集中する習性がある)
やがてエレベーターは最上階に到着し、長い廊下を歩いて、東雲はとある部屋の前で立ち止まる。
「ここだよ」
ドアを開けた東雲のあとに続いて中に入ると……。
そこは、とてつもなく広く豪華な部屋である。
そして正面にある大きな窓からは、一直線に天に向かってそびえ立つタワーと無数に煌めく都会の光が一望できた。
「ひゃあー」
あまりの綺麗さに、思わず感嘆の声が出てしまう。
と、不意にその口が塞がれていた。
東雲はしなやかな右手の指で、彩のあごをそっと持ち上げ、左手で肩を抱いている。
その一連の動作には全く無駄がなく、彩が気づいたときにはキスされていたのだった。
あ……。
もはや、カツ丼のことを考える余裕すらない。
頭の中は、すっかり真っ白だ。
キスを終えると東雲は、相変わらずクールな目つきで彩をじっと見つめた。
「先に、シャワーを浴びてくるといい」
外は夜になっても、まだまだ暑い。ひとや建物が密集する繁華街ともなれば尚更である。
おまけに、彩の心はもっと熱かった。
「じゃあ、帰ろうか」
そう言って駅に向かおうとする東雲の顔を、彩は頑張ってじっと見つめた。
「翔さん……今日は大丈夫です……」
クールな表情をぴくりとも変えずに、東雲は彩を見返す。
ああ……自分からこんなことを言ってしまって、翔さんに変に思われないだろうか……。
「……そう。わかった」
おもむろに、東雲は前回エントランスまで行ったホテルのほうへと歩き出す。
彩も歩きながら東雲の横顔をちらちらとうかがうが、その表情からは何も読み取れない。
今日はその気がなかったのに、私が誘っちゃったから気分を悪くしたのかな。
さっき、がつがつした女の子に嫌気がさしたって言ってたし。
私もそう思われて、失望しちゃったのかも……。
複雑な気分のまま、ホテルに到着した。
広い豪華なロビーに入ると、ホテリエたちが一斉に深々と頭を下げる。
彩はなんだか、場違いな場所に来てしまった気がして落ち着かない。
フロントで鍵を受け取った東雲とともにエレベーターに乗る。
静かに上昇するエレベーターのなかで、翔さんとふたりっきり。
だけど、翔さんはあれから一言も話さずに、黙って階数表示ランプを見つめている。
ああ……どうしよう。
こんなときは……そうだ、カツ丼のことでも考えよう。
カツ丼は、ほかほかの白米の上にサクサクの衣で包まれたとんかつとふんわり溶き卵が乗っかっていて、一口食べると煮汁とともにジューシーな味わいが口いっぱいに広がり……。
いや、違うよ。
なんで私、カツ丼のことを考えてるんだ……。
(彩は現実から逃れたくなると、食べ物のことに集中する習性がある)
やがてエレベーターは最上階に到着し、長い廊下を歩いて、東雲はとある部屋の前で立ち止まる。
「ここだよ」
ドアを開けた東雲のあとに続いて中に入ると……。
そこは、とてつもなく広く豪華な部屋である。
そして正面にある大きな窓からは、一直線に天に向かってそびえ立つタワーと無数に煌めく都会の光が一望できた。
「ひゃあー」
あまりの綺麗さに、思わず感嘆の声が出てしまう。
と、不意にその口が塞がれていた。
東雲はしなやかな右手の指で、彩のあごをそっと持ち上げ、左手で肩を抱いている。
その一連の動作には全く無駄がなく、彩が気づいたときにはキスされていたのだった。
あ……。
もはや、カツ丼のことを考える余裕すらない。
頭の中は、すっかり真っ白だ。
キスを終えると東雲は、相変わらずクールな目つきで彩をじっと見つめた。
「先に、シャワーを浴びてくるといい」
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