ヤケクソ結婚相談所

第２話

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亀吉がちゃぶ台に皿を置くと、どっかりと腰を据えた令子がぎろりと睨みつけた。

「おい、今日の昼飯もシーチキンパスタかいっ！」

そのドスの効いた声に、亀吉はビクッと体をすくめる。

「は、はい。何か問題ありますでしょうか……」
「あるに決まってるだろうが。もう３日連続でシーチキンパスタじゃないかっ」
「それは……近所のスーパーで賞味期限切れのシーチキン缶が１０缶１００円で売ってたもんで」
「じゃあ、あと７日もシーチキンかいっ。見てみろ、猫のほうがマシなモン食ってるだろうがっ！」

ちゃぶ台の脇では、目つきの悪い三毛猫がマグロの猫缶を黙々と食べている。
亀吉はうらめしそうに三毛猫をちらりと見やると、目を伏せた。

「だって、しょうがないじゃないですか。今ではヤケクソ結婚相談所も会員数０に逆戻り。お金が全然ないんですから」

会員だった杉崎彩と東雲翔が結婚して１年。
ふたりがSNSでヤケクソ結婚相談所を紹介してくれたおかげで、その後女性の会員が激増した。
なぜなら、太ってて尚且つアラフォーの彩がイケメンの東雲と結婚できたという事実は、結婚相談所としてこの上ない宣伝となったのである。
ヤケクソ結婚所に入会すれば、こんな私でもイケメンをゲットできる。そう考えた妙齢の女たちが、こぞって殺到したのだ。

おかげで、ヤケクソ結婚相談所の売上もうなぎ登り。
亀吉の小遣いも、月５００円から２０００円に増え、幸せを噛み締めていたのだったが。

良いことは長くは続かない。
ピークだった冬を境に、会員数は減り続け、今年の夏現在ふたたび誰もいなくなってしまった。

理由は簡単。男性会員がサッパリ集まらなかったからだ。
東雲のようなイケメンと出会えると思っていた女たちは失望し、また激怒して、次々と辞めてしまったのである。