ヤケクソ結婚相談所

夢 餡子

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第2話

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高宮さん、死にませんでしたね……。

亀吉はホッとして、思わずひとり舗道に佇む菊奈に駆け寄った。

「め、冥府さん!」
「鶴田さん」
「す、すみません! 知らなかったとは存じますが今日のデート、こっそり尾行しておりました……」
「いえ、とっくに気づいてましたけど」

亀吉は90度の角度で腰を折り曲げ謝罪したのだが、予期せぬ菊奈の返しにそのまま固まってしまう。

「……き、気づかれてました?」
「はい」
「ああ、なんてことだ。留三に500円も払って尾行のやり方を教わったというのに」
「いいんですよ。心配して付いて来てくださったんですね。有難うございます」

その言葉に、亀吉はようやく汗だくの顔を上げた。

「それで、デートの方はいかがでしたか?」
「いえ……楽しかったですよ」

こわばった顔で笑みを浮かべる菊奈に、さすがに鈍感な亀吉でも察した。

「あ、あのですね。高宮様の身に厄災が降り掛からなかった時点でわかってます……彼のあの態度からして、おそらくとっても嫌な思いをされたのではないかと……」

菊奈は言葉が詰まってしまう。
確かに高宮の態度は、昔の思い出したくもない記憶を呼び起こさせたからだ。
それがトラウマとなって、俺様系だけが唯一苦手なタイプとなったのである。

「……実は、離婚した父親が、高宮さんのような俺様だったんです。母親に対してもいつも上目線で、命令ばかりしていました。前にダブル不倫で別れたって言いましたよね。父親は隠れることなく堂々と大勢の女性と浮気しまくって……それに苦しんだ母親も、すがった相手、カウンセラーの方なんですけども、それが悪い方で結果的に不倫してしまって」
「はあ……そうだったんですね……」
「だから、高宮さんみたいな方を見ると、どうしても家庭を壊した父親のことを思い出しちゃうんです。でも、結婚するためには好きになれなくても……」

言葉に詰まって、菊奈は目を落とす。
亀吉も、唇を噛み締めた。
ふう、冥府さんの気持ちを思うと辛いですね~。

「あ、あの、冥府さん」
「はい」
「私がこんなことを言うと、かあちゃんにボコボコにされちゃいますが……高宮様との交際、嫌なら辞めてもいいんですよ。もともと私は、呪いから逃れるために好きじゃない人と結婚するってのは疑問に感じておりまして……」

その言葉に菊奈はしばらく思いに耽ると……やがて顔を上げて、亀吉に微笑みかけた。
今度は作り笑いなんかではない。

「有難うございます、鶴田さん。でも、大丈夫です!」
「し、しかし……」
「確かに気分は良くはありませんでしたが、でも、ちょっと嬉しいんです」
「嬉しい……?」
「だって、デート相手に災いが起きなかったのは、これが初めての経験ですから。それに高宮さんのこと……好きとは言えないですけど、なぜか気になって……いえ、なんでもないです。とにかく今は、このまま交際を続けさせてください!」

うーん。
女心ってのは、やっぱり良くわかりませんね~。

ひとり困惑する亀吉だった。

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