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第2話
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しおりを挟むストレッチャーに乗せられた涼真が運び出されてくる。
「涼真さん! 涼真さん!!」
菊奈はストレッチャーに駆け寄ると、泣きながら涼真のからだに追いすがる。
だが涼真は、青白い顔で目を瞑ったままだ。
「あなたが、付き添いの方?」
後ろから菊奈に話しかけたのは、寝グセ頭で白衣を着た、どこか頼りなさそうな老人の医者である。
思わず菊奈は、すがるようにその医者に詰め寄った。
「先生! 涼真さんの具合は、どうなんですか!?」
すると医者は、眠そうに手で目をゴシゴシと擦って大きな欠伸をする。
「はあ~。ま、大丈夫じゃろ」
「えっ」
「頭を打ってちょっと気を失っただけやね。怪我といえば、額と尻をちょっと擦りむいただけじゃ。絆創膏を貼っておいた。まあ、今晩はちょいと様子を見て、明日には退院できるじゃろ。あ~眠いのう」
「じゃあ……死ななかったんですね!」
「死ぬ? ワシのほうが寝不足で死にそうじゃわい」
そのまま医者は、ふらふらしながら消えていった。
その様子を見ていた亀吉と令子は、ホッとしながら顔を見合わせる。
「だ、大丈夫でしょうか、あんな医者で」
「まあ、この病院はヤブで有名だからよ。あまり信用はできないけどな! それより、だ」
呆然と立ち尽くす菊奈に、令子はいつもの厳しい口調で話しかけた。
「おい、おまえに聞きたいことがある」
「……は、はい。なんでしょう」
「最近、身のまわりに変わったことはなかったかい?」
「いえ、特には……」
「細けえことでもいいんだ。よおく思い出してみろ。腐ったキムチを食って腹をこわしたとか、そんな程度でもなんでも構わねえ」
実際、令子は冷蔵庫の奥にあった古いキムチを食べて腹を壊していた。
この病院には、本来なら診察で来たかったのだが、カネがない。
だけど今は、そんなことはどうでもいい。
令子の問いに、菊奈はしばし考えたのちに、ふと顔を上げた。
「……そういえば」
「なにか思い出したか」
「本当に些細なことなんですけど……」
菊奈がぼそっと、なにやら口にする。
それを聞いた途端、令子の目が鬼のように鋭くなった。
スマホを取り出すと、ボタンを押して耳に当てる。
「……留三か。至急頼みたいことがある」
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