ヤケクソ結婚相談所

夢 餡子

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第2話

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閑静な住宅街にある、こじんまりとした一軒家。
雨が降り続くなか、亀吉と令子がタクシーで家の前に到着すると、そこには先に到着した留三の姿もあった。
タクシーから降りると、留三が寄ってきて令子に不機嫌そうな顔で愚痴をこぼす。

「まったく勘弁してくれよな、何時だと思ってんだ。大酒飲んで気持ちよく寝てたってのに」
「留三、この家で間違いないんだな?」
「ああ。前に令子ちゃんから頼まれて、会社帰りを尾行して確認したんだ。ここで間違いねえ」

亀吉は、ひとりぽかんとしていた。
大事なことは、いつも蚊帳の外である。

「かあちゃん、ここは……?」
「いいから黙ってついて来い」

令子は家の玄関の前に立つと、チャイムを何十回も連打した。
ちなみに今は、深夜3時である。
亀吉は、胸の動悸が収まらない。

「かあちゃん。いくらなんでも夜更けに迷惑じゃないでしょうか?」
「うるせえ。今が何時だろうが、こっちは急ぎなんだ。出てくるまで何万回でも押してやるわ」

令子が暫く押し続けていると、玄関の灯りがぽっと点いた。
そうしてドアが少しだけ開いて、ひとりの女が顔を出す。

それは、はっぴいの大塚秀子だった。
その顔は、困惑と苛立ちに満ちている。

「こんな時間に、どなた?」
「ヤケクソ結婚相談所の鶴田令子だよ。亀吉は一度会ってるから知ってるだろ。そしてこいつは探偵の留三」
「それで、何の用でしょうか?」
「うちの会員、冥府の件だ。冥府から聞いたが最近、頻繁に電話してたそうじゃねえか。呪われているから男とすぐに別れろってな」
「だから何なんですか。私は冥府さんのことを心配してですね……」
「なにが心配だ。とぼけたこと、言ってんじゃねえぞ!」

令子は力ずくでドアを無理矢理開けると、ずんと玄関に入り込んだ。

「ちょっと! 勝手に入らないでください! 警察を呼びますよ!」
「警察呼ばれて困るのは、あんたのほうじゃないかい?」

そう言って、令子は玄関の隅を指差す。
そこには前かごがひしゃげた自転車が立てかけられていた。濡れた黒いポンチョも壁に干されている。

「さっき、冥府の彼氏が自転車で轢き逃げに遭ったそうだ。犯人は黒いポンチョを着てたらしい」

令子がそう言うと、大塚の顔がさっと青くなる。
そして興奮したように声を荒げた。

「だから何なんです! 犯人が私だって証拠はあるんですか!? 雨が降っているから黒いポンチョを着て自転車に乗る人なんか、いくらでもいるでしょうに!」
「じゃあ、自転車のそのカゴは、どこにぶつけたんだい?」
「そ、そんなの知りませんよ。誰かのいたずらじゃないですか?」
「嘘をつくな! おまえが高宮を轢いたんだろうがっ!!」

令子の怒声に、大塚はびくっと体をすくめた。

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