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番外編

動く拳は強いのです!

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ここは金剛山。登山のイメージが強いこの山に、雲上は師匠の描いた円の上をグルぐると廻っていた。
「…師父、これが『八卦掌』の練習なんですか?ずっと円を廻ってるだけじゃないですか!」
「ははははは!何を言っているんだ!お主八卦掌の事を知らぬだろぉ。」
「知りませんよ!何なんですか?それ!」
「八卦掌とはな、その技術の全てを掌で行う全く持って異質な物だ。その軌道は円を描き、雲が湧き上がるように、しかし水のように、回転したと思うと今度はしゃがんだりとまぁ忙しいもんだ」
「ちょっとアバウトすぎません?!」
「元々は陰陽八盤掌というもんだったんだそうな」
「へぇーっじゃない!これ後なんかいやれば良いんですか!かれこれもう三千回ぐらいやってますけど!」
「何を言うんだ!本当はこれを一年半する予定だったが、まぁ忙しいだろうしたった一週間で出来るようにしたんだ!文句言うな!」
「んな理不尽なぁ!」
結局、この日雲上は二万四千三十七回円の上を廻っていた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「…だはぁ~」
「どうしたんだ、そんなに疲労して」
「そりゃあ円の上グルグル回っていたらこんな事にもなるよ。そんな事より…」
びしぃ!と雲上は無空の横にいる背の小さい少女に指を指した。
「誰だよ!てか彼女か?!」
「ちげーよ!いいよもう。説明するから」
そう言うと無空は雲上に、小森の名前と、小森が高天原の一員だったこと、そして拳奴であったことを教えた。
「…なんかごめんね。小森ちゃん」
「いえ、気にしないでください!過去の事ですし」
「そう言えばその練習内容からして八卦掌を練習してるのか?」
「アバウトな説明なのによくわかったね」
「まぁ、俺もその練習やったからな」
「あの~、八卦掌ってなんですか?」
「ん?うーん…簡単に言えば円を描きながら、相手の意表をつき、倒す武術かな?ほら、この前お前と初めて戦った時、お前の首締めをよけたあれだ」
「あぁ!あれですか、あの時は本当に驚きました。結構キマッた!って思ってたぶんだいぶショックです」
「それはすまないな」
「ちょっとそこのお兄さん達」
ふと後ろを振り向くと、何という事でしょう。色々な武器を持った人達がわんさかいたではありませんか。
「…おいおい、そんな玩具持ってなにしてんだよ」
「武器のことを玩具というとは、相当な余裕だな」
「まあ、対武器用の特訓もしてるんでね」
「それじゃあやらせてもらうぜ?」
「では、きなせい!」
そのかけ声をトリガーに、武器を持った集団は、無空達へ突進してきた。
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