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一月(弟)
#2
しおりを挟む「はい、この前のテスト返すぞー」
それから少し経って────学校で、担任の古河先生から回答用紙を受け取った。
「香月。前より点数落ちてるから、次は頑張れよ」
彼の言うとおり、今回のテストはとてもじゃないが良い結果とは言えなかった。父には見せたくない点数だ。
「はぁ~……」
憂鬱。家に帰り、そのテスト用紙を父に見せると案の定小言を言われた。
「お前、ほんとに勉強したのか」
「し、したよ。一応」
父は同級生の親より若い方だから、怒るとそれなりに怖い。
「まだ一年だからって油断してると、進路のときに泣きを見るぞ。麻緋はもう希望の大学の合格ラインに入ってるんだから」
また、麻緋の話。いつもいつもいつも。
「そうだ、今度の休みに麻緋に勉強を教えてもらったらどうだ。そうすればもう少し良い点がとれるはずだから」
本っ当イライラする。何で俺の話をしてんのに麻緋の話に切り替わるのか。すぐに移り変わる関心は、自分の存在なんてどうでもいいと言ってるみたいだ。
千紘は、後ろに回した拳を痛いほど握りしめた。
麻緋に勉強を教えてもらえ、か。
「……無理だよ。麻緋、今度の休みは遊びに行くって言ってたし」
確か、お熱い仲の“カノジョ”と。
「そうか。ならしょうがない。自分で復習するんだな。麻緋みたいに遊びに行きたかったら、少し本気出して勉強しろ」
そこで話は途切れた。ずっと先の突飛な考えで、もう進学じゃなくて就職したい。こんな家にずっといなきゃいけないとか考えたら発狂モンだ。早く、……早く出ていかなきゃ。
週末の日曜日は、父の言うとおりに自分の部屋で勉強をしていた。もっとも好きな動画を見ながら片手間にやる感じで、完全集中ではないけど。
夕方ごろ、部屋の外で音がした。
麻緋が帰って来たのかな。遊びに行ったわりにはずいぶん早い帰りじゃないか。不思議に思ったものの、また勉強に取り掛かった。
それから一時間、さすがに座りっぱなしで腰が痛くなった。飲み物を取りに部屋を出た時、やっぱり麻緋に勉強を見てもらおうか……と少し迷った。
いつも彼を避けてるから、最近はまともな会話をした覚えがない。昔はそれこそ苦手な問題を見てもらうことがあったけど、いつしか勉強の話は絶対出さなくなった。
彼とちゃんと話す良い機会かもしれない……。
深呼吸して、麻緋の部屋のドアノブに手をかける。ノックをしようとしたその時、中から聞こえた声に手が止まった。
「あっ……ん、イく……っ!」
心臓が止まりそうになった。家の中で“それ”を聞くなんね有り得ない。でも聞き間違いなんかじゃなく。男の、喘ぎ声。
淫らに喘ぐ、麻緋の声だった。
……え?
駄目だと思うのに身体は勝手に動く。音を立てないように、わずかにドアを開けた。その先にあったのは、麻緋と、知らない少年が激しいキスをしている光景。白い蜜を口元から零し、腰を揺らしている。
衝撃的だった。男同士ということもそうだし、身内のそんな姿を生で見るのは初めてだから。
やば……っ。
何で?
疑問と混乱が頭の中を攪拌する。麻緋も相手の少年も気持ちよさそうにしている。お互い一心不乱で、こちらに気付く気配はない。
驚きに支配されていたが、思考は徐々に解けていく。
麻緋は、男が好きなんだ。
完璧な彼の異常な一面を知った。それに怖いぐらい満足している。
はっ。ざまーみろ。
千紘は静かにスマホを取り出して、彼らの姿を画面に映した。
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