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なづなは真剣な表情に変わり、三尋の近くに寄った。

「変に目立つのは危険だよ。何を基準に狙われるののかは分からないけど、大人しくするにこしたことないよ」

彼が言いたいことは分かる。それが、自分を気にかけてくれてる言葉だってことも。……でも……。
「要は苛めと一緒だろ。大人数で一人を痛めつける。俺、そういうの駄目なんだ。黙って見てようと思っても、体が先に動いちまう」
「おぉ……すごい正義感だね。三尋、優しいもんね」
「ううん、そんなんじゃないよ。……俺も苛められてたことがあるから」
そう言うと、なづなは「えっ」と目を見開いた。
「中学の時にクラスでいじめられてる奴がいたんだよ。悪口とかだけならまだ良かったんだけど、ひどい時は服を脱がされたりしててさ。さすがに許せなくて、主犯の奴らに喧嘩売った。……そしたら、俺が標的になっちゃって」
「……」
正直思い出したくもない記憶だ。けど卒業を境に彼らと離れることができたから良かった。

「それなのに、今日みたいな行動起こしちゃうんだよ。全然学習してないだろ? 自分でも、ほんと馬鹿だと思う」
「そんなことない! 三尋は正しいよ……! その子は嬉しかっただろうね。苛めが止まらなかったとしても、気持ちがさ……助けられたと思う」
なづなは優しく微笑む。そして三尋の背中を強く叩いた。
「もっと早く三尋に会いたかったなぁ。そしたら、誰か一人でも助けられたかもしれないのに」
「……大丈夫だよ。これから助けよう」
「そうだね。こんな馬鹿な遊び、早く終わらせよう」



二人が約束を交わしたと同じ時間。

下の階、トイレの一番奥の個室で声にならない悲鳴が上がっていた。
一人の少年が下衣を脱がされ、複数の少年達に取り囲まれている。そして口腔に、下半身に高まった熱を当てられていた。
「んー、んんんー……っ!!」
少年は首を横に振って声をもらす。言葉にならないのは、タオルを口にくわえさせられて喋られないからだ。
楽しそうに弾む声と、何人か同時にベルトを外す音が重なる。

「さ、お待たせー。めちゃくちゃになろうぜ、辻浦」

辻浦と呼ばれた少年は涙を流す。
赤く黒い、地獄の時間が始まった。





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