19 / 47
除け者
#9
しおりを挟む日が傾く。夕焼け色に染まる教室は、焼けたように赤い。
「……なづな」
夜がくる。……前に、帰らなきゃ。
「それはちょっと、違うんじゃないか」
三尋は立ち上がって鞄をとった。
「どうして? だって許せないだろ。三尋だって、襲われかけて怖かっただろ」
なづなも不安げに立ち上がって声を張り上げる。それでも、答えは決まっていた。
「確かに、許せないよ。苦しめてやりたくなる。でもそれをしたら、襲った奴らと同じになる」
三尋は振り返って、なづなの頭に手を置いた。
「そういう方法じゃなくて、他のやり方を探そうぜ。俺達なら多分、もっと良い方法を見つけられるよ」
「……」
なづなはまだ不安そうに瞳が揺らいでいたが、やがてため息をつく。そして首を横に振った。
「……そうだね。何の根拠も無いけど、三尋なら見つけられそうな気がする」
「あはは。お前も協力してくれたらの話だけど」
「協力するよ、もちろん。友達だもん」
上履きを履き直して、なづなも鞄を手に取った。そして乱暴に髪を掻き毟る。
「ごめん。ちょっと言うこと過激すぎたね、俺」
「良いんだよ。そんだけ正義感が強いってことだろ」
三尋が笑うと、彼はどうかな……と困ったように笑った。
「俺はさ、三尋や炭野みたいに強くない。力もないし、頭が良いわけでもない。だから本当に憧れるよ。俺も、強くなりたいな……」
廊下を出て、二人で歩く。五組から四組、四組から三組へと通り過ぎていく。
「強いよ。お前は優しい。強くないと、誰かに優しくできないんだから」
思ったままに返すと、彼は黙って笑った。
が、三組を通り抜けようとした時。飛び交った声に二人は足を止める。
「やばいよ、今ゲーム実行中だって! 生贄の向山、体育館のトイレで犯されてるらしい!」
「マジで!? やば、すぐに行くか!」
誰かの呼びかけをキッカケに、たくさんの生徒が廊下を走って体育館へ向かって行った。
「い、今? それって、何で分かるんだ」
三尋が言うと、近くにいた男子生徒が答える。
「さぁ……さっき二組の奴が教室に走って来て、そう言ったんだよ。何かいつも、誰かが言いに来るんだよなぁ……」
マジ不思議、と言い残して彼も行ってしまった。でも。
「変じゃね? もし偶然その場に遭遇したんだとしたら、クラスの奴らより職員室に行って教師に知らせる。……普通は」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
28
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる