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除け者
#15
しおりを挟む四組の、冴木という生徒がその日から教室に来なくなったらしい。彼に連絡をとろうとしても、返信がない。だから周りは口には出さなくても分かっていた。彼が今回の標的だったんだ、と。
学校で襲ったのか、それとも外で襲ったのか……考えたら恐ろしくてゾッとした。
「可哀想にな、冴木のやつ」
たまたま四組の生徒が話してるところを、聞いてしまった。
「でも、アレだな~。……あいつかなり自己中だし、授業妨害してうるさかったからさ。テスト期間いないと、何だかんだ勉強集中できるよな」
「アハハ、言えてる」
その内容に驚いてしまった。
冴木という生徒も素行不良だったみたいだけど、あまりに酷い。何をされたかも分からないのに……皆、次の標的が五組にスライドしたことで嬉しそうにしている。もちろん、安心した気持ちは分かるけど。
次は俺達五組。
廊下で無為に過ごしていると、様々な声が耳に入る。
早くテスト終わんないかな。早くゲーム終わんないかな。
態度が悪い奴らを狙って犯してる。だからこれは粛清なんだよ、という声もあった。
五組が終わったら、また一組に戻るとかないよな? という不安も。
恐怖と、退屈を掻き消す昂揚感に支配された廊下。居心地の悪さは最高だった。
「何やってるんだ、転校生」
「転校生じゃなくて……国崎。もう三回は自己紹介してるよ。そろそろ覚えてほしいな」
隣を見ると、生徒会長の炭野が立っていた。眼鏡をくいっと掛け直し、壁に寄り掛かる。
「ゲーム、順調に進んでるな。むしろ、もうすぐ終盤じゃないか?」
「そうだな」
「犯人っぽい奴は全然見つからない?」
問いかけると、炭野はため息をついて頷いた。
彼もだいぶ疲れてるように見える。
「次は五組。お前のクラスだな。怖いか」
「あはは……何か最近は慣れてきちゃってさ。前は必ず“怖い”って答えてたんだけど」
炭野の目を見返して、はっきり答えた。
「怖くないよ。自分はもちろん、守りたい奴らもいるし」
「そうか。まぁ、馬鹿な真似だけはしないようにな。大人しくしてれば問題ない」
彼は自分の教室に戻ろうとしたけど、ふと思い出したように振り返る。
「四組の冴木は、可哀想な奴だったよ。……最後まで」
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