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除け者
#16
しおりを挟むどういう意味が分からず聞き返す。すると彼は忌々しげに呟いた。
「他に生贄にあった三人も、最初は皆強気でいた。けど一人になった途端、弱気になる。それ追い詰められた奴らの共通点かな」
「……」
分かるようで分からない話。だけどそれ以上訊くことはできなくて、去ってく炭野の後ろ姿を見ていた。
何となく、彼が完全に視界から消えるまで目を離してはいけない気がした。
……背を見せたら刺されるような危機感を、このとき感じていたのかもしれない。
「はぁ……」
何だかあれだけで疲れてしまった。とぼとぼと自分の教室に戻ると、いつもより少し騒がしい。だから入る前に、その場に留まって聞き耳を立ててしまった。
「次は俺達だ……誰がやってんだよ、こんなこと!」
「まぁ落ち着けって。本当は全部ドッキリかもしんないだろ」
「ドッキリなら、何で冴木や辻浦はまだ学校に来ないんだよ!」
教室の中心で取り乱しているのは、この前過激なことを言ってた丹波だった。彼は本当は誰よりも脅えていたのかもしれない。乱心して「もう先にターゲットを作ろうぜ」と言いだした。彼の台詞により、教室は険悪な空気に包まれていた。
周りのクラスメイトも、皆苛立ちを覚えている。
「丹波、お前なぁ……自分がターゲットになんなきゃそれでいいのかよ?」
「そうじゃねぇけど、このままじゃお前らだってヤバいぞ。……ほら、あいつなんかいいじゃん! 国崎だっけ? まだ転校してきたばっかだし、俺らのクラスだけど、仲間ってほどじゃないから」
まさかの、俺が指名されてしまった。
勘弁してくれ。超入りづらい……と思ってると、誰かが丹波の胸倉を掴んだ。
「お前、ふざけんなよ。三尋はもうクラスの仲間だし…誰かを仕立て上げればいいってわけじゃないだろ!」
そう言ってくれたのは、伏美。彼に強く言われたことで、丹波は気まずそうに視線を逸らした。
そこで納得してくれるかと思いきや、彼はまた悔しげにぼやく。今度は、俺も許せないようなことを。
「ま、まぁ落ち着けよ。こっちから生贄を差し出すのは、良い案だと思うけどな。どうせなら俺らじゃなくて、……ほら……芦苅とか、女みたいな奴を渡した方が向こうも喜ぶんじゃね?」
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