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#3
しおりを挟むもうお互い恋人がいるんだから、こんなことを続けてはいけない。頭では分かっている。どれだけ求めても、愛していても。……愛されても。
父から離れると途端に冷静になり、異常を認識する。
いつまでもこんな関係を続けることはできない。フェラしてもらうぐらいだし、悪くはない、けど。
他人は他人。俺の身体は、俺だけのもの。
夜、学校が終わって彼女の家で寛いだ。
ご飯を食べて、B級の映画を見て、セックスして。これが普通なんじゃないか、と思う。
「人ってさ」
「んっ?」
俺の腕枕で寝ていた彼女は急に眼を覚ました。
「辛い出来事とか、受け入れられない事とかあるとね。自分を守る為に脳が勝手にその記憶を消そうとするんだって」
「あー……聞いたことある」
一時的だったり部分的だったり、軽度だったり重度だったり。たくさん種類はあるけど、確かその総称は。
健忘症……だっけ。
病因も様々だ。精神的なストレスも多いが、何処かで聞いたことがある。性交渉も、その一つだと。
誰から聞いたんだろう。……思い出せない。
人生を狂わす、優しいブラックアウト。
「ねぇ、すごいよね。脳は単体ですごい力を持ってるんだよ。でも、それって逃げかな?」
「別に……防衛本能だろ? 誰でも持ってる」
そのはず。決して悪いことじゃない。
「そうなのかなー……。あ、もう時間遅いよ。理瑛のお父さん心配してない?」
「大丈夫だよ。もう高校生なんだし、門限破ったって」
壁にかかった時計を見て苦笑する。
「門限破ったのなんて小学生の時に“一度”だけだし」
高校生になって初めてなら、きっと許してもらえる。
またいくらでもやり直せる。
「父さんは俺が大好きだから……」
「えー? やだ、理瑛ってファザコン?」
笑い飛ばす彼女を横目に、もう一度時計を見返す。
ちょうど零時を回った、始まりの時間にわけもなく胸が踊った。
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