10 / 156
お出迎え
#9
しおりを挟む立派な庭園は手入れが行き届いていて、景観は以前来た時と何も変わってない。いくらしたのか分からない石灯籠も、暗がりの中際立って辺りをぼんやりと照らしている。
玄関前に立ってインターホンを押すと、年配の女性が出迎えてくれた。
「まぁ! 久しぶりね、鈴鳴君。と、もしかしてそちらの方は……和巳君?」
「はい、お久しぶりです」
「やだー! すっかり男前になっちゃって! 皆も驚くわ。さっ、早く上がって。疲れたでしょう」
えっと、この人は確か……夏子さん。
会釈して中へ上がる。しかし並ぶ靴の多さにウッとした。
遠い親戚も来るから顔も名前もあやふやな人がいて、こういう時に困ってしまう。和巳さんは夏子さんのこと覚えてるんだろうか。ずっとニコニコしてるけど。
「和巳君は来ること分かってたけど、鈴鳴君も来てくれるとは思わなかったわ。鈴鳴君ももう二十歳になったのよね?」
「はい」
「せっかくだから一緒に参加してね。まだ学生だから退屈でしょうけど」
笑って誤魔化す。けど、本当にその通りだ。俺が聴いても多分全然分からない。そもそも呼ばれてすらいない集まりだ。だから場違い感が否めない。
でも、それで少しでも和巳さんの気が紛れるならいいか。
会議が終わったらおいとますればいい話だ。そう気楽に考えて三人で廊下を歩いていると、ふと名前を呼ばれた。
「鈴鳴?」
「父さん……」
一瞬、心臓が跳ねた気がした。いや、今もドクドクと脈を打ってる。
そうだ……馬鹿した。親戚の集まりって言ったら和巳さんの両親だけじゃなくて、俺の父親も来るに決まってるのに。すっかり失念していた。
「あ、正剛さん。ちょうど良かった、じゃあ私は先に行ってますね」
夏子さんは台所の手伝いがあると言い残し、先に奥へ行ってしまった。
「正剛叔父さん、お久しぶりです。和巳です。昨日帰国したんですが、事前の連絡が遅れてすいません」
「和巳君か……! いやいや、父のこともあって急だったんだから仕方ない。それより、本当に久しぶりだね。すっかり大人になって」
「あはは、会う人皆に言われます! ねー、鈴」
二人は楽しそうに、久しぶりの再会に笑っていた。けど、父さんの視線はすぐに俺へと移る。
「ところで、どうしてお前がここにいるんだ? 鈴鳴」
「あ、えっと……」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
24
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる