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新生活

#4

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でも、やっぱりいけないことなんだろうか。
恐る恐る見上げると、和巳さんは優しく微笑んでいた。何故か彼の額には汗が伝って……心なしか、苦しそうに見えた。
「和巳さ……あっ!」
初めて見る表情に目を奪われたせいで反応できなかった。自分のものを激しく扱かれる。早すぎるけど、だめだ。これ以上やられたら……、
「ゃ……あぁっ!」
自分でも驚くぐらい呆気なく。彼の掌の中に射精してしまった。

「ふふ。全然、俺に触れられなかったな?」
「……!」

白い液体が滴り落ちる掌を見せびらかし、あろうことか和巳さんはそれを舐めとった。
見間違いだと思いたかったけど、残酷なことに現実だ。
「やっ、やめてください! そんな事しちゃだめです!」
慌てて彼の手を掴み制止すると、彼は困った顔で身を引く。そしてさらに卑猥な音を立て、勿体なさそうに口に含んだ。
「うあぁ……和巳さん、それはお腹壊しますよ」
「鈴のならいいよ。お腹壊しても看病してくれるでしょ?」
「それはもちろんしますが……だ、だめですよ。和巳さんが……俺なんかの」
恥ずかしくって、さっきの快感は即座に姿を消してしまった。ため息を飲み込む。和巳さんって、実はめちゃくちゃエロいんだな……。
全然抵抗なさそうだし、実はかなり経験があるのかもしれない。そう思うとちょっと複雑だった。
「和巳さんは、男の人とエッチしたことあるんですか」
「気になる?」
もちろん。でも言葉にはしなかった。やっぱりちょっと、恥ずかしいからだ。
「そうだな……好きになったのは、鈴が初めて。これは命懸けるよ」
和巳さんは俺の前髪を持ち上げて、優しくキスをした。
好きになった初めての相手が自分、というのはとても嬉しい。けど、彼の科白だと身体の関係は初めてじゃなさそうだ。
やっぱり、何かあったとしたら留学してからだよな。向こうはこっちよりずっとオープンだし。
彼と別れた最後の年は俺が十四歳、和巳さんは十八歳だった。思春期の真っ只中で、色々性的な授業も受けていた。
長い間考えていた。女性との性行為というのはまるで想像しなかったけど、和巳さんのことを思い浮かべていた。

夜、気が高まって一人で自慰をする時なんか特に、彼の姿が脳裏にチラついた。
和巳さんも俺と同じ男だから、欲求がたまればこうして抜くわけで。
女の人と、エッチなことをするのかもしれない、と。




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