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新生活
#16
しおりを挟む「とにかく! 俺が言いたいのは、恋人は対等な立場なんだってこと。見下したり見下されたりなんて論外だ。そうだろ?」
秋の問いかけに何度も頷く。忘れるといけないので片手でしっかりメモをとっていた。
彼の言うとおり、なにかと言うと自分より先に和巳さんの身の回りのことをやらなきゃいけない気になる。それが義務なんだと錯覚してる。これは普通の感覚じゃない。
“恋人”にならなきゃ……。
それにはやっぱり、身体の関係も少なからず関わってきそうだ。
「ありがと、秋。それで話戻って悪いんだけど……ヤる前の薬とか、洗浄とか俺も色々調べたんだけどよく分かんないし、自分でやるの怖いんだ。でも和巳さんには頼みづらいし……どうしたらいいかな?」
「ははは、どうしたらいいんだろうなぁ。……とりあえず場所変えね? きついぞ、これ以上は」
「うん!」
会計後店を出て、誰もいない夜の公園に向かう。
すると何故なのか、秋に公園のトイレに入るよう言われた。よく分からないけど促されるまま中に入り、キャリーケースは端に置いた。
「どうしたの、秋?」
何故か一番奥の個室に追いやられる。秋は、抑揚のない声で囁いた。
「お前ってほんと、警戒心ゼロだよな。もう少し危機感持った方がいいぞ。……他人を信用しすぎ」
「……っ?」
角っこに追いやられ、彼を見上げた。でもそんなに背丈は変わらないから、危機感と言われてもピンとこない。
「こんなとこにホイホイついてきてさ、俺が悪い奴だったらどうする気? 自衛できんの?」
「え。……でも、大丈夫だよ。秋とじゃなきゃ、そもそも一緒に入んない。それに秋は彼氏いるからね」
思ったままに返すと、呆れたような声が返ってきた。
「恋人がいたって油断はできねえよ? でなきゃ浮気なんてこの世に生まれないだろうが」
「そ、そっか……」
「そう。友達だから大丈夫とか、そういう考えもオススメしない。相手がどう思ってるかなんて分かんないだろ。お前も男だけどさ。……男を信用すんな」
恋人がいるから手を出さない、なんて保証はどこにもない。この世にはいくらでも悪意を持つ人がいる。確かにその通りだけど。
「でも、秋はそんな事しないでしょ? 好きな人を裏切ったりしない優しい奴だって知ってるもん」
「…………」
はっきり言いきると、彼はまたオーバーに肩を竦めて笑った。
「そういうとこが心配だって言ってんだけどね。まぁいいや、ちゃっちゃと始めるぞ」
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