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三人分の食事
#3
しおりを挟むそれから一時間近くかかったものの無事にご飯の用意ができて、三人でハンバーグを食べた。
俺には五歳児の扱いなんてサッパリ分からない。けど和巳さんは食事中ずっと倖地君と楽しそうに話していた。元来の子供好きをここぞとばかりに発揮してる。
「やっぱり鈴の作るご飯は美味い! 倖地君も、ハンバーグ美味しいでしょ?」
「……うん」
「よし、明日の朝ごはんも鈴お兄ちゃんに作ってもらおうね!」
和巳さんのハイテンションと、大人しい倖地君の温度差が見てて辛い。この子は普段からこんな感じなんだろうか。初めて会う人の家に来たから、緊張してる可能性もあるけど。
食事が終わってから、和巳さんは彼と一緒にお風呂に行ってしまった。それが、何か落ち着かない。和巳さんの倖地君の溺愛っぷりは傍から見てて胸焼けがしそうだ。
でも皿を洗いながら冷静に考えてみる。和巳さんも今まで相当、俺に対して甘かった。俺達を見ていた人は、まさにこんな心情だったのかもしれない。
それじゃ父さん達が心配するのも無理ないのかな……。
ちょっとだけ気が沈む。
突然小さな従兄弟が現れて喜ぶ和巳さんの気持ちもよく分かるし、……でも何だかあの子は俺のこと嫌いっぽいし。
どうしたらいいのかよく分からないまま、夜は更けた。
「あの子、ベッドに入った瞬間寝ちゃったよ。疲れてたのかもね」
和巳さんは倖地君を寝かせつけてから、俺のいるリビングにやってきた。喉が渇いたみたいで、コップに入れた水を一気に飲み干す。
「そうだね。ところで和巳さん、あの子いつまで預かるの? 幼稚園だってあるし、送り迎えとか……」
「うん、平日は何かあっても対応できないからね。明日明後日の土日だけ、ちょっと辛抱してもらえるかな?」
和巳さんは両手を合わしてから、俺の頬にキスした。
「何だかほんとに、あの子って昔の鈴に似てて…ほっとけないんだ」
「そんなに似てるかなぁ……。俺、挨拶ぐらいはしたと思う」
「まぁね。でも、ちょっと人を怖がってるところとかはそっくりだよ。はぁ……可愛い……」
和巳さんは頭を抱えて、自分の世界に浸っている。
「とりあえず、わかったよ。和巳さんは、あの子とベッドで寝てね。俺はソファで寝るから」
倖地君はちっちゃいから三人でも寝れそうだけど、寝返りしたら潰してしまいそうで怖い。俺は一人で寝ることにしよう。
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