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元不良少年の計画
#5
しおりを挟む場所は変わり、同時刻。街角の居酒屋の一室では、各々が好き勝手に飲み、騒いでいる。座敷の片隅に座る鈴鳴も、次第に酔いが回り始めていた。
「日永! お前、気になってる女子いないのかよ?」
「あぁ、俺はいないかな」
今日は久しぶりにサークルの飲み会に参加した。大人数でわいわいやっていたけど、やたら男友達の恋愛話に引っ張り出された。
「お前も早く彼女つくれよ~。あそこにいる女子だったら誰がタイプ? 呼んできてやるから言ってみろよ!」
「いやいや、俺は大丈夫。ありがとう」
皆酒が入ってるせいか、いつもより少し強引だ。悪ノリが過ぎてしまったり、厄介事も多い。
特に恋愛の話は困ってしまう。何故彼女をつくらないのか質問攻めされ、次に脈ありな女子を捜そうとしてくる。たった今声を掛けてきた友人も、まさにそれ。
応援しようとする気持ちは嬉しいけど困ってしまう。俺には恋人がいるし、関係ない女の子を巻き込むのも嫌だ。
そう思ってると、彼を押し退けて一人の青年が間に割って入ってきた。
「ばーか、鈴鳴は他の大学に好きな子がいんだよ。余計な世話は焼くなって」
「秋」
秋が堂々と言い放ったことで、彼は「そうなのかー」と渋々他のグループのところへ戻って行った。ほんと、こういう時は助かる。
「サンキュ、秋」
「おう。ああやって適当に流せばいいんだよ。どーせ絶対分かんないんだから」
秋は手にビールを持ったまま、隣にどっかり腰を下ろす。向こうの華やか女子グループから逃げてきたみたいだ。
「鈴鳴、最近和巳さんとはどう?」
「いつも通りだよ、毎日仲良くやってる。秋は?」
逆に聞き返すと、彼はジョッキをテーブルに置いて俺の肩を掴んできた。
「……てない」
「え?」
「全然シてないんだ。お前らが家に来た日から、また! 俺と先生はシてないの!!」
「…………」
悲痛な叫びに、苦悶の表情。瞬時に事態を察したものの、どう返せばいいか分からず固まった。
ひとまず彼に向き合い、詳しく話を聞いてみることにした。するとどうやら、また(生活リズムが)すれ違う日々が続いているらしかった。
「あの日だけは、先生とシたよ。むしろ死ぬかと思うぐらい抱かれた……でもセックスはあの日っきり。あれからもう三週間近く経つだろ。三週間、シてないんだよ」
「う、うん」
何か前も全く同じことを聞いたな。
デジャブを感じつつ、つっこめないまま頷く。
「浮気じゃないことは分かった。でも、じゃあ何だ。仕事で疲れてるから? 歳とって体力落ちたから? ……俺に飽きたから、かな」
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