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しおりを挟む朝のアラームが容赦なく鳴り響く。スマホの画面をタップして、重苦しく身体を起こした。
「ふあぁ~……」
死ぬほど眠い。昨日は遅くまで父さんに弄られたからなぁ……。
とはいえ、嘆いても学校は休めないから、諦めて制服に着替えた。適当に寝癖をなおしてリビングへ向かうと、父の明るい声が聞こえた。
「あぁ。お土産美味しかったよ、ありがとう。理瑛と一緒に食べたんだ」
父さんは電話中だった。でもこんな朝っぱらから電話する相手は一人しかいない。
「うん、裕樹も気をつけて。じゃあ切るよ」
裕樹は、父の現在の恋人だ。
「あ。理瑛、おはよう」
父は俺に気付くと、額にキスをした。
「今日も可愛いな」
「何言ってんの……。おはよう」
このキスはどういう意味を持ってるんだろう。
恋人じゃない、家族向け?
でも俺達は肌を重ねたこともある。何年も前のことだけど。
それからは頻繁にオナニーを手伝ってもらう感じで……間違いなく普通の親子じゃない。
それでも恋人にはなれない。
裕樹さんが羨ましく、同時に悔しかった。仲間はずれ、という感覚に近い。それらの嫉妬はやはり恋愛感情ではない。大事な人を取られたような気分なんだろう。
父もきっと、俺がいなくても恋人がいれば平気で。これからどうなりたいとか、明確な終着点なんて決めてないはずだ。
「理瑛、パン焼いたから早く食べなさい」
「うん」
だって、どこまでいっても親子だ。これ以上の関係になんてなれない。当たり前で、至極一般的。だからこのままでいいんだ。今だって既に、正規のレールから踏み外しているんだから。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
家を出て別々の方向へ別れる。父さんは会社へ、俺はまだ目新しい高校へ。
父さんが二十歳になる前、俺が生まれた。当時まだ大学生だったので祖父母に面倒を見てもらいながらの子育てだったらしい。
働いて、ある程度やっていけるようになったのが俺が幼稚園に入った頃で……それからの二人暮らし。
学生時代に子どもをつくった。計画的だったのかもしれないし、無計画だった可能性もある。祖父母から詳しく聞いたことはないけど、なるべく考えないようにしている。
昔がどうであれ、今の俺には父さんが居ない生活は考えられない。何から何まで面倒を見てもらって、感謝しかない。
「……こら、琴浦! 授業中に寝るな!」
「痛っ!」
頭をいきなり叩かれて飛び起きた。
教室の独特な照明と大きな黒板が目に飛び込んでくる。
やべっ……、授業中に寝てた。
父さんがちょっかい出してくるせいで寝不足なんだよなぁ。
心の中で文句を言いながら、長い長い一日が終わるのを待った。
「理瑛ー! 今日空いてる?」
待ちに待った放課後。解放感にうきうきしながら帰り支度をしてると、クラスメイトの男子が数人話し掛けてきた。
「他のクラスの女子と遊ぶ約束しててさ。良かったらお前も来いよ。可愛い子多いぞ」
「え」
思いがけない誘いは、暇で仕方ない俺にはとても魅力的に聞こえた。
「せっかくだし~、彼女つくろうぜ! で、そのままどっか行ってさ、……、……!」
友人は意気揚々と話を続ける。
そうそう、それだ。
そういう事がしたかったんだよ。やっぱり高校生にもなったら“そっち”の経験もしとかないと。
「OK、行く!」
「よし、じゃあ今から行こうぜ」
二つ返事でクラスメイトや女の子達と遊びに行った。初めは全員カラオケで楽しんでいたけど、時間が経つにつれてバラバラになっていった。
無論、俺も。
「……ね、理瑛君。一緒に外行かない?」
多分俺の中では一番可愛い子と仲良くなれたと思う。髪の長い、隣に座ると良い香りがする娘《こ》。
女の子らしいって、君みたいな子を言うんじゃないかな。
「またまた。理瑛君もかっこいいじゃん。私のクラスにいたら皆話しかけると思うよ」
そうかな?
「そうだよー。……私とも、仲良くしてほしいな」
重なる手。
生々しい体温。
久しぶりに感じた、父さん以外の熱に夢でも見そうになった。
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