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願望 5
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翡翠と久遠は、互いに顔を見合わせ、はっきりとうなずいた後、白妙と海神を真っすぐ見つめた。
「人の世に、未練はありません。」
「白妙様。海神様。どうか執護として、あなた方に仕えることをおゆるしください。」
深々と頭をさげる二人の強い決意に、白妙は苦く微笑み、幸せな光をひっそりと宿した温かい瞳で二人を見つめた。
「顔をあげてくれ。・・・一つだけ、きいて欲しい願いがある。・・・・・・もしお前たちが我らと共に生きることを望んでくれるのならば・・・私のことは白妙・・・と、そう呼んでくれるか。」
驚いて目を丸くした二人に、白妙は今度こそ心からの笑みを見せる。
「・・・友として、生きて欲しいのだ。」
翡翠と久遠の心の内には、白妙と海神に対する信仰にも近い気持ちが湧き上がりつつあった。
その垣根を、白妙は一蹴したのだ。
このうえなく幸せな笑みを見せてほほ笑む翡翠と、それを抱きしめる久遠の笑顔に、神妖である三人はまぶし気に目を細めた・・・・・・。
・・・・・・後日、正式に執護の任を受けた二人は、白妙と海神の元、修練を重ねていった。
・・・・・・瞬く間に4年の時が流れた。
睦まじく、互いを励まし合いながら辛い鍛錬を乗り超えていく二人が18の歳を間近にした時。
海神をともない、いつになく真剣な表情を纏った白妙が、二人を呼ばわった。
「お前たちに話がある。」
ぴりりと張り詰めた二人の空気に、久遠と翡翠もわずかに緊張を覚える。
「白妙。どうしました。」
「うむ。海神からお前たちに、大切な話があるのだ。」
「白妙っ。」
白妙の言葉に、海神は声を荒げ小さく頭を横に振っている。
久遠と翡翠がいぶかしく思いながら白妙に視線を戻すと、白妙は目を細め海神を横目で軽くにらんだ後、何か閃いただろうか、にやりと意地悪く微笑んだ。
「わかった。では、二人で分け公平に話すことにする。大切な話というのは二つ。ひとつは・・・お前たちの歳についてだ。」
「歳?」
「ああ。・・・現段階では、彼呼迷軌はお前たちに能力の補助のみしている。年若い身体のままでは負担も大きいし、力も弱いからな。だが、18を超える歳となれば、あとはお前たち二人の希望次第。望めばその齢で時をとどめていられる。若返ることは叶わんからな。よく考えるといい。・・・二つ目は、海神から話す。」
海神は小さくため息をつくと、あきらめて口を開いた。
「人であればお前たちは年ごろ。・・・そろそろ、祝言を挙げてはどうだ。彼呼迷軌が齢をとどめれば、肉体は現状を保持するため循環を繰り返す。子が腹の中で育つことができなくなる。」
「・・・・・・祝言。」
「久遠は問題ない。だが子を望むのならば、翡翠は時を止めたままいてはまずい。・・・子を宿すためのコトに及ぶに、問題はないが・・・。」
「子を宿すための・・・コト?」
「・・・・・・。」
やはり、このような繊細な話を、男である自分がするべきではなかったのだ。
血が噴き出すのではないかというほど真っ赤に顔を染め上げた翡翠の、うわ言のようなつぶやきを耳に入れながら、海神は口ごもり、心の中で白妙に恨み言を唱えていた。
「人の世に、未練はありません。」
「白妙様。海神様。どうか執護として、あなた方に仕えることをおゆるしください。」
深々と頭をさげる二人の強い決意に、白妙は苦く微笑み、幸せな光をひっそりと宿した温かい瞳で二人を見つめた。
「顔をあげてくれ。・・・一つだけ、きいて欲しい願いがある。・・・・・・もしお前たちが我らと共に生きることを望んでくれるのならば・・・私のことは白妙・・・と、そう呼んでくれるか。」
驚いて目を丸くした二人に、白妙は今度こそ心からの笑みを見せる。
「・・・友として、生きて欲しいのだ。」
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このうえなく幸せな笑みを見せてほほ笑む翡翠と、それを抱きしめる久遠の笑顔に、神妖である三人はまぶし気に目を細めた・・・・・・。
・・・・・・後日、正式に執護の任を受けた二人は、白妙と海神の元、修練を重ねていった。
・・・・・・瞬く間に4年の時が流れた。
睦まじく、互いを励まし合いながら辛い鍛錬を乗り超えていく二人が18の歳を間近にした時。
海神をともない、いつになく真剣な表情を纏った白妙が、二人を呼ばわった。
「お前たちに話がある。」
ぴりりと張り詰めた二人の空気に、久遠と翡翠もわずかに緊張を覚える。
「白妙。どうしました。」
「うむ。海神からお前たちに、大切な話があるのだ。」
「白妙っ。」
白妙の言葉に、海神は声を荒げ小さく頭を横に振っている。
久遠と翡翠がいぶかしく思いながら白妙に視線を戻すと、白妙は目を細め海神を横目で軽くにらんだ後、何か閃いただろうか、にやりと意地悪く微笑んだ。
「わかった。では、二人で分け公平に話すことにする。大切な話というのは二つ。ひとつは・・・お前たちの歳についてだ。」
「歳?」
「ああ。・・・現段階では、彼呼迷軌はお前たちに能力の補助のみしている。年若い身体のままでは負担も大きいし、力も弱いからな。だが、18を超える歳となれば、あとはお前たち二人の希望次第。望めばその齢で時をとどめていられる。若返ることは叶わんからな。よく考えるといい。・・・二つ目は、海神から話す。」
海神は小さくため息をつくと、あきらめて口を開いた。
「人であればお前たちは年ごろ。・・・そろそろ、祝言を挙げてはどうだ。彼呼迷軌が齢をとどめれば、肉体は現状を保持するため循環を繰り返す。子が腹の中で育つことができなくなる。」
「・・・・・・祝言。」
「久遠は問題ない。だが子を望むのならば、翡翠は時を止めたままいてはまずい。・・・子を宿すためのコトに及ぶに、問題はないが・・・。」
「子を宿すための・・・コト?」
「・・・・・・。」
やはり、このような繊細な話を、男である自分がするべきではなかったのだ。
血が噴き出すのではないかというほど真っ赤に顔を染め上げた翡翠の、うわ言のようなつぶやきを耳に入れながら、海神は口ごもり、心の中で白妙に恨み言を唱えていた。
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