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連載
94話 新婚旅行③
しおりを挟む月や星が光る空に、夜なのに薄く光る海。窓から見える景色は、絶景だった。クラウド様は、ここら辺一帯から吹き出す魔力の影響で、海が光っていると言っていましたね。
神秘的で、とても綺麗。
だけどーーー
「……メトと、見たかったな……」
仕事だから仕方ないと思っていても、つい、口からこぼれてしまう。
まだ覚悟が出来ていない。なんて言ったけど、それでも、メトと一緒に過ごしたかった。
「……そう言えば、明日でしたね、カインとエレノアの結婚式ーー」
謀ったわけでは無く、ただ偶然に、新婚旅行と2人の結婚式の日程が被った。初めから欠席予定でしたが、堂々と新婚旅行のため欠席しますと返信した。
『ルエルお姉様は、私とカイン様の幸せな結婚式が悔しくて見たくないんでしょう?』なんて、安っぽい挑発が手紙で送られてきたので、それはシュレッダーにかけて破棄した。
まぁーーー本当はこの目で、カインとエレノアの結婚式を見に行ってあげても良かったんだけどーーー
でも、結婚式の話を聞いた時の、『絶対に行きたくない、欠席しよう』と思った、自分の感情を優先した。
カインやエレノアにとっては、私とメトが欠席の方が、面目丸潰れでしょうしね。
ルーフェス公爵とその妻である私が、新婦の姉にも関わらず、結婚式を欠席する。それはそのまま、私達とエレノア達の関係をハッキリと示すことになる。
普通なら、私に出席してもらうよう頭を下げてでもお願いに来なくちゃいけないのに、エレノアは安っぽい挑発を送り付けてきただけ。
あんな挑発に乗るのなんて、エレノアくらいよ。
服も装飾品も友達も旦那もーーー私の全てを奪ってきた妹に、そんな妹だけを溺愛し、私を蔑ろにしてきたお母様に、仕事ばかりで家庭を顧みないお父様。
私のおかげで優雅な生活が送れていたにも関わらず、私をハズレ嫁扱いし、妹と不貞を働いて子供まで作り、私を捨てた元・夫。
どちらも絶対に許さない。一生ーーー許してあげない。
「……ふわぁ」
あ、なんだか、急に凄く眠たくなってきましたね…。
昨日から緊張+、新婚旅行が楽しみ過ぎて、一睡もしていないから……瞼が重い……もう、目、開けてられないかも……。
私はそのまま、目を閉じて、眠りについたーーー。
……あれ?私、寝ちゃったんだっけ……?
次に目を開けた時には、薄暗い部屋の中、天井が見えた。
体中、すっごい良いお布団に包まれてる気がする……流石、ファンファンクラン領で1番の宿。布団の肌触りが良いし、ベッドも眠り心地が最高。
確か……急に睡魔が襲ってきて、寝ちゃった気がするけど……痛たた。何か、頭とか肩とか肘とか、全身が痛い……私、どこかにぶつけた?
「起きた?」
「!メーーート!!」
目覚めたばかりでボーとしていた視界に、急にメトの姿が映り、ビックリして体を起こした。
「ど、どうしーー仕事、終わったんですか?」
「ああ」
そうですよね、夫婦の部屋なんだから、お仕事終わったら帰ってきますよね。ご丁寧に、部屋にはベッドが1つしか用意されてないんだから、メトが隣で一緒に寝てても、不思議じゃない。
「あのさ、寝るならベッドで寝ててくれる?何で床で寝てるの?」
「私、床で寝てたんですか?!」
どうりで体が痛いと思った……。まさか、あのまま文字通り力尽きて床で寝てしまうなんてーー!
「君の寝息を聞くまで、何事かと思ったよ」
「申し訳ございません…」
そりゃあ、仕事から帰って、妻が床で倒れ込んでたらビックリしますよね。
昨日から緊張と楽しみで一睡も出来ずに、気付いたら倒れて床で寝ていたなんてーーー恥ずかし過ぎる!
「まぁいいけど。今日である程度、仕事を終わらせてきたから、明日は自由に過ごせるよ」
「本当ですか?嬉しいです!これでやっと、メトと一緒に新婚旅行を過ごせますね」
「……君、急に可愛くなるよね」
「へ?!」
また、メトは私を可愛いって言うーーー可愛いって言われるのは、いつもエレノアで、私じゃないのに。
「……外見がいくら良くても、内面がアレじゃ腐ってるのと一緒だよ。それに、ルエルも十分可愛いよ」
何も言わなくても、メトには私が考えてることがお見通しみたい。
「……エレノア、よりも?」
私は、前にも聞いた質問を、もう一度メトに尋ねた。
メトは一瞬驚いて目を丸くしたけど、すぐに微笑んで、前と同じ答えをくれた。
「勿論。ルエルの方が遥かに可愛い。俺は、君が好きだよ」
そう言って、また私にキスをしたーーー。
「あの……メト、私ーー」
目を開けて、メトと視線を合わせると、ゆっくりと、私は口を開いた。
いつからかはハッキリしないけど、気付かないうちに好意を持っていたんだと思う。でも、もう誰も好きになりたくないから、傷つきたくないから、気付かないフリをして、このまま契約結婚を続けるつもりだった。
でも、自覚してしまった。そして、もう一度ーーーメトを信じようと思った。
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