42 / 96
雨天の山コリカ
ケイの過去②
しおりを挟む「……カトレア様を、どうかよろしくお願いします」
全てを諦めた表情で、深々と頭を下げるアレン。
(う、嘘でしょーーー?!?!?!)
キリアは心の中で思いっきり叫んだ。
*****
「やぁやぁよく来たねカトレア君ー!」
紅の魔法使いの自宅に、アレンから託されたカトレアを連れて帰ると、紅の瞳を全く差別しなかった彼を気に入り、更には、依頼達成後の報酬(酒)を大層お気に召したケイは、カトレアの姿を見るなり、熱烈に歓迎した。
「お邪魔します。ケイ、お久しぶりですね」
ケイ先生には、査定場であった出来事は全て筒抜けなので、カトレアの依頼を、私が受ける事を予想していたのだろう。
「依頼受ける受けるー☆何でも言って☆どんな依頼ー?」
今回、査定場の外に私が出てしまったので、具体的な内容とかは、知らないですもんね。
てか、まだ依頼内容何も話してないのに、受ける事確定しましたよね?いや、受けたから連れて来たんだけど、内容聞いても良くない?ケイ先生は(一応)保護者だから、依頼を断る発言権あるんだよ?
「なら俺達に任せっきりじゃなくて、たまには師匠が依頼行けよ!」
お昼寝から起きたジュンは、軽く依頼を受ける発言をするケイに向かい、怒鳴った。
「無駄だよジュン。もう諦めようよ」
同じく昼寝から起きたクラは、諦めが早く、全てを受け入れたように、テーブル席で遅めの夕食を食べていた。
「カトレアも食べる?」
「わぁ。ありがとうございます」
作っておいた夕食の配膳を行いながら、キリアはカトレアに尋ねた。
「くそっ!寝るんじゃなくて、俺が査定場に行けば良かったー!なら断ってやったのに!」
「それも無駄だよジュン。先生には査定場の様子筒抜けなんだから」
ケイはカトレアを気に入っている。例えジュンが依頼を拒否しても、ケイが依頼を受け直すだろう。
「何で俺が王子だか何だか知らねーが、こんな奴の依頼受けなきゃなんねーんだよ」
カトレアの依頼を受けたくないジュンは、クラと違い、諦め切れずに、愚痴愚痴と文句を垂れた。
まぁでも、ジュン兄さんは人間嫌いだから、基本、どの依頼も難色をつけるんですけどね。
配膳を終えたキリアも、テーブル席に着くと、夕食の席に1人つかず、そっぽを向いているジュンの背中に呼びかけた。
「ジュン兄さん、温かいうちに早く食べよ」
「往生際が悪いよー、ジュン君」
「キリアのご飯要らないの?」
次いで、ケイもクラも追撃する。
「ーー分かったよ!くそ!行けばいーんだろ行けば!」
やっと諦めがついたのか、ジュンはズカズカと歩いて、席に着いた。
「ジュンとクラもお久しぶりですね」
「……そうだね」
「うっせぇ喋んな!」
「こらこらジュン君ー依頼主に乱暴な言葉遣いしないー☆お・し・お・き☆しちゃうぞ?」
「止めろ!わーったよ!」
ここで言うケイ先生のお仕置きを、昔ジュン兄さんはよく受けていたらしいんだけど、私は受けた事が無いので、詳しく内容は知らない。1度クラ兄さんにお仕置って何?と尋ねた事があるけど、『世の中には知らない方が良い事もあるよ』って、はぐらかされた。
「じゃ、依頼内容詳しく教えて☆」
全員が食卓に着いたのを確認して、夕食を取りながら、依頼内容である、幻の花コトコリカを採取する為に、雨天の森コリカへ行く事を話したーー。
遅い夕食を取り終え、暫く各々が過ごし、朝日が見え始めた頃、全員が就寝した。
出立は本日の夜。紅の魔法使いの定石通り、夜に目的に向かい行動する。
皆が寝静まっているはずの朝に、1人、カトレアは起きて、縁側で空を見つめていた。
「寝れないのかな?」
「ケイ」
声を掛けられ、振り向くと、そこにはケイの姿があった。
「そうですね。緊張しているのでしょうか」
「心配ないよー3人はああ見えて優秀だから」
「勿論、それは理解しているのですが……」
「君の計画に巻き込む事になって、申し訳無い気持ちかな?」
「!」
ケイの台詞に、カトレアは驚いて、俯いた顔を上げた。
「君の願いが中々上手くいかない理由も、妨害しているのが誰なのかも、俺は全部知ってるよーーー何故なら、俺も、当事者の1人。だからね」
カトレアの願いは、紅の瞳の差別を無くす事。
「ーー当事者の1人ーーやっぱり、ケイがーーー紅の瞳が差別されるようになった原因ーーーなんですね」
カトレアの台詞を、ケイは否定しなかったーーー。
*****
ーーーその夜ーーー
いつもの冒険の下準備で、ケイ先生の空間魔法がかかった鞄に、せっせと荷物を詰めて行くジュンとキリア。
「あの飲兵衛師匠、今日も見送りにも来ねぇ」
「ケイ先生、昨日……今日か、今日の昼近くまで飲んでたみたいだから」
キリアは、今日の朝5時に寝て、12時に起床した。キリアにしては、冒険前+前日にしっかり休めなかった事もあって、ゆっくりぐっすりと睡眠をとった。
夜を跨ぐと、その日が今日か、昨日になるのか、混乱してしまう。
「いつか絶対にしめてやる…!」
「止めとこうよジュン兄さん」
荒ぶるジュンを落ち着かせながら、2人はせっせと荷物詰めを続けた。
「ーーカトレア、君、剣使うの?」
クラは、カトレアの腰にある剣を指して、尋ねた。
「はい。まだまだ、兄に比べれば全然ですが」
83
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する
鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】
余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。
いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。
一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。
しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。
俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる