呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。

光子

文字の大きさ
47 / 96
雨天の山コリカ

料理下手コンビ

しおりを挟む

 まな板の存在を無視し、左手に人参を持ち、右手に持った包丁で横に切ろうとするカトレアに、クラは思いっきり怒鳴って止めた。
「おい、これ混ぜんのか?」
「混ぜたらいいじゃんーーって、素手で混ぜないでよ!火傷するけど?!何の為にお玉があると思う?!それ使ってよ!」
 事もあろうに、グツグツに煮えた鍋に手を突っ込んで混ぜようとしていたジュン。
「はぁっはぁっーーねぇ、もう止めない?」
 ジュンとカトレアの予想だにしない料理下手にお手上げなクラは、怒涛のツッコミラッシュに息を切らしながら、料理の中止を申し出た。

「何言ってやがる!キリアに温かいスープを作るって言ってんだろ!」
「冷えた体に染み渡りますよね」
 やる気だけは人一倍あるジュンに、のほほんとしているカトレア。
「あれ?何でだろ……僕が今冷や汗かいてきたんだけど」
 料理が下手どころか、危険区域にまで達している無自覚コンビの姿に、クラは悪寒がした。

「……あはは」
 キリアは、そんな3人の様子を見て、思わず、笑ってしまった。
「!キリア!起きたの?」
「うん。クラ兄さん、お疲れ様」
 1人でこのコンビの料理の相手は大変疲れただろうと推測する。
「分かってくれる?!下手すれば指無くなってるし、皮膚爛れるし、大惨事なのに!当の2人にその自覚全く無いんだよ?!」
「ほ、本当にお疲れ様」

「キリア、起きたんですね。体の具合は如何ですか?まだ無理しては駄目ですよ」
「キリア!大丈夫か?待ってろ!俺が今温かいスープを作ってやるからーー!」
 遅れて、キリアが起きて来た事に気付いた2人も、キリアに声をかけた。
 情熱の凄さは充分伝わる。

「もう大丈夫だよ、ジュン兄さん。私の為に、料理頑張ってくれてありがとう」
「!……本当に大丈夫なんだな?」

 前の家族は、誰も、私に、大丈夫?の一言も言葉をかけてくれなかった。誰も、私の為に、何かをしようとしてくれた事が無かった。

「うん!元気出た!」
 私の今の居場所はここで、前の家じゃない。

「クラ兄さんも、カトレアも、ありがとう」
 今の居場所が、私の、1番大切な場所で、今の家族は、ケイ先生や、クラ兄さん、ジュン兄さん。そして、同じ志を持つ同士の、カトレアさん。
 皆大切で、暖かい。

「美味しいスープ作るね」
 キリアは、笑顔でカトレアから包丁を受け取り、鍋に丸々入っていた野菜諸々を取り出し、手際良く猛スピードで料理を始めた。


 *****

 次の日、正午ーーー。

「奇跡じゃん」
 昨日の豪雨が嘘のように、晴れ間が広がっていて、空にはうっすら虹も見えた。
 空を見上げながら、感動の言葉を述べるクラ。
「元から雨が良く振る地域ですが、最近は雨がずっと振り続けていたみたいなので、雨が上がるのは幸先良い証ですね」
「でも、山は天気が変わりやすいって言うし、油断しないようにしなきゃ…!」
 昨日体調不良を起こしてしまっているキリアは、カトレアの台詞に、気を引き締めて、慎重な言葉を選んだ。

「ま、ぼちぼち探そーぜ。この山、そんなに広くは無さそーだし」
 縦に長く、高さはまぁまぁあるが、横幅はそう広く無い。円周だけ歩くとすれば、1.2時間で回り終える。
「騎士団長とやらが討伐作戦とやらを終えて、魔物の数を減らしてくれてんだろ?よゆーだろ」
 事前に説明を受けていた内容を話すジュン。

 カトレアの騎士アレンさんから依頼の説明を受けた時に、確かそんな事を言っていたから、兄さん達にも情報としてきちんと伝えておいた。魔物の数が少ないのは、ダンジョンにおいて、凄く助かるしね。

「さっさと探索始めよーぜ」
 4人は拠点場所から、取り敢えず山のてっぺんを目指して、歩き出した。


 よゆーよゆーと、拠点場所から出立する事1時間後ーーー

「ちょっとーー話が違うんだけど?!」
 ゼェゼェと息を切らしながら、クラはカトレアに向かって糾弾した。

 出立して1時間、魔物との戦闘は早6回。中々のハイペースで、少し進む度に魔物と遭遇している。なんなら、普段よりも遥かに多い回数で、全く先に進めていない。

「そうですね……」
 んー。と手を口に当て、考える素振りをしてから、カトレアはポンッと、手を叩いた。
「多分、早く着きすぎましたね」
「「「は?」」」
 意味が分からない3人は、揃って呆けた声を出した。

 その後のカトレアの説明によると、騎士団長が魔物を退治する為に動いているのは本当だが、キリア達が着くまでに討伐が終わっていて、魔物が減っているーーとの話は、ケイの空間魔法で、近くまでワープ出来る事を知らなかったアレンが、間違えた情報を伝えてしまったのでは無いか。との事だった。
 普通に歩いて冒険すれば、雨天の山コリカに到着するのに、1ヶ月近くはかかる距離。それを、ケイの空間魔法を使い、4日程で到着したのだ。

「雨天の山コリカで、魔物が大量発生していて、このままだと、近くの海辺の街コムカまで被害が及ぶと、討伐作戦を行う事になったと聞いています」

 カトレアの説明に、がっくしと肩を落とす3人。
 即ち、討伐作戦はまだ終わっておらず、魔物の数が少ないどころか、大量発生していて、魔物の数が普段より多いということ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する

鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】 余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。 いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。 一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。 しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。 俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...