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雨天の山コリカ
料理下手コンビ
しおりを挟むまな板の存在を無視し、左手に人参を持ち、右手に持った包丁で横に切ろうとするカトレアに、クラは思いっきり怒鳴って止めた。
「おい、これ混ぜんのか?」
「混ぜたらいいじゃんーーって、素手で混ぜないでよ!火傷するけど?!何の為にお玉があると思う?!それ使ってよ!」
事もあろうに、グツグツに煮えた鍋に手を突っ込んで混ぜようとしていたジュン。
「はぁっはぁっーーねぇ、もう止めない?」
ジュンとカトレアの予想だにしない料理下手にお手上げなクラは、怒涛のツッコミラッシュに息を切らしながら、料理の中止を申し出た。
「何言ってやがる!キリアに温かいスープを作るって言ってんだろ!」
「冷えた体に染み渡りますよね」
やる気だけは人一倍あるジュンに、のほほんとしているカトレア。
「あれ?何でだろ……僕が今冷や汗かいてきたんだけど」
料理が下手どころか、危険区域にまで達している無自覚コンビの姿に、クラは悪寒がした。
「……あはは」
キリアは、そんな3人の様子を見て、思わず、笑ってしまった。
「!キリア!起きたの?」
「うん。クラ兄さん、お疲れ様」
1人でこのコンビの料理の相手は大変疲れただろうと推測する。
「分かってくれる?!下手すれば指無くなってるし、皮膚爛れるし、大惨事なのに!当の2人にその自覚全く無いんだよ?!」
「ほ、本当にお疲れ様」
「キリア、起きたんですね。体の具合は如何ですか?まだ無理しては駄目ですよ」
「キリア!大丈夫か?待ってろ!俺が今温かいスープを作ってやるからーー!」
遅れて、キリアが起きて来た事に気付いた2人も、キリアに声をかけた。
情熱の凄さは充分伝わる。
「もう大丈夫だよ、ジュン兄さん。私の為に、料理頑張ってくれてありがとう」
「!……本当に大丈夫なんだな?」
前の家族は、誰も、私に、大丈夫?の一言も言葉をかけてくれなかった。誰も、私の為に、何かをしようとしてくれた事が無かった。
「うん!元気出た!」
私の今の居場所はここで、前の家じゃない。
「クラ兄さんも、カトレアも、ありがとう」
今の居場所が、私の、1番大切な場所で、今の家族は、ケイ先生や、クラ兄さん、ジュン兄さん。そして、同じ志を持つ同士の、カトレアさん。
皆大切で、暖かい。
「美味しいスープ作るね」
キリアは、笑顔でカトレアから包丁を受け取り、鍋に丸々入っていた野菜諸々を取り出し、手際良く猛スピードで料理を始めた。
*****
次の日、正午ーーー。
「奇跡じゃん」
昨日の豪雨が嘘のように、晴れ間が広がっていて、空にはうっすら虹も見えた。
空を見上げながら、感動の言葉を述べるクラ。
「元から雨が良く振る地域ですが、最近は雨がずっと振り続けていたみたいなので、雨が上がるのは幸先良い証ですね」
「でも、山は天気が変わりやすいって言うし、油断しないようにしなきゃ…!」
昨日体調不良を起こしてしまっているキリアは、カトレアの台詞に、気を引き締めて、慎重な言葉を選んだ。
「ま、ぼちぼち探そーぜ。この山、そんなに広くは無さそーだし」
縦に長く、高さはまぁまぁあるが、横幅はそう広く無い。円周だけ歩くとすれば、1.2時間で回り終える。
「騎士団長とやらが討伐作戦とやらを終えて、魔物の数を減らしてくれてんだろ?よゆーだろ」
事前に説明を受けていた内容を話すジュン。
カトレアの騎士アレンさんから依頼の説明を受けた時に、確かそんな事を言っていたから、兄さん達にも情報としてきちんと伝えておいた。魔物の数が少ないのは、ダンジョンにおいて、凄く助かるしね。
「さっさと探索始めよーぜ」
4人は拠点場所から、取り敢えず山のてっぺんを目指して、歩き出した。
よゆーよゆーと、拠点場所から出立する事1時間後ーーー
「ちょっとーー話が違うんだけど?!」
ゼェゼェと息を切らしながら、クラはカトレアに向かって糾弾した。
出立して1時間、魔物との戦闘は早6回。中々のハイペースで、少し進む度に魔物と遭遇している。なんなら、普段よりも遥かに多い回数で、全く先に進めていない。
「そうですね……」
んー。と手を口に当て、考える素振りをしてから、カトレアはポンッと、手を叩いた。
「多分、早く着きすぎましたね」
「「「は?」」」
意味が分からない3人は、揃って呆けた声を出した。
その後のカトレアの説明によると、騎士団長が魔物を退治する為に動いているのは本当だが、キリア達が着くまでに討伐が終わっていて、魔物が減っているーーとの話は、ケイの空間魔法で、近くまでワープ出来る事を知らなかったアレンが、間違えた情報を伝えてしまったのでは無いか。との事だった。
普通に歩いて冒険すれば、雨天の山コリカに到着するのに、1ヶ月近くはかかる距離。それを、ケイの空間魔法を使い、4日程で到着したのだ。
「雨天の山コリカで、魔物が大量発生していて、このままだと、近くの海辺の街コムカまで被害が及ぶと、討伐作戦を行う事になったと聞いています」
カトレアの説明に、がっくしと肩を落とす3人。
即ち、討伐作戦はまだ終わっておらず、魔物の数が少ないどころか、大量発生していて、魔物の数が普段より多いということ。
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