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しおりを挟む「昔、冒険をしていた事があるんです」
外交や国民の前で世界を救う聖女として振る舞う為に、お城で過ごす事も多かったが、基本は世界を救う為、騎士や魔法使いや僧侶や、お付のメイドや執事やetc…様々な人達と一緒に、冒険をしていた。
冒険と言っても、上記にある通り、私の周りには沢山の人達がいて、私は何もしなくても、食事や暖かい寝所が用意されていたけれど。
「…嘘やろ?何でそれで普通の事が出来へんのや」
冒険は、魔物等と戦ったりと、危険が伴うものと認識されている。
その上、冒険をしている間は、野宿で火を起こしたり、食事の調達をしたり、調理をしたり、寝所の準備をしたりと、様々な事が求められる。
ーーー筈なのに、何も出来ないリーシャを、彼女が元・聖女で、蝶よ花よと、過保護に暮らしていたことを知らないイマルは、本気で嘘だと思った。
聖女として、冒険中であっても、全て周りがしてくれていたリーシャだが、冒険の最中、獲物の解体を見る機会はあった。
「でも、こんなに近くで見るのは、初めてです」
危ないからと、絶対に近寄らせては貰えなかった。
「どんな冒険やねん…それ冒険って言うんな?」
自分の想像とは掛け離れた冒険に、イマルは力無くツッコミを入れた。
その後は、近くにあった山菜を幾つか摘み、自宅に戻った。
「勿論、料理は出来へんのやな?」
「はい。出来ません」
「せやろな。そうやと思ったわ」
一応の確認だけ行うと、イマルは手際良く山菜を切り、肉を炒め、味付けをし、調理を行った。
1連の作業を、キラキラした目で見つめるリーシャ。
「凄い…とても、美味しそう…!」
机の上に並べられた手料理に、深く感動する。
「天才ですね」
「こんなん、切って焼いて味付けただけやで」
「凄いです……!イマルは、何でも出来るんですね」
「あのなぁ……まぁええわ!もうお腹ペコペコや!はよ食べよ!」
ベタ褒めされて照れ臭いのか、イマルは会話を終わらせ、手を合わせた。
頂きますと挨拶し、食事を口に運ぶ。
「うん!まぁまぁやな」
豪快に、好きなように食べる。
「……」
そんなイマルの姿を見た後、リーシャは、ゆっくりと、箸を進めた。
熱い肉にふぅーと息をかけ、冷まし、口に入れる。
「美味しい…」
「なら良かったわ。はよ食べな、俺が全部食べてしまうで」
「え?あ、え…っと、だーー駄目。です」
「あはは。冗談やがな」
けたけたと笑いながら、冗談を言い合い、食事をする。
それは、リーシャにとって初めてでーーーとても、楽しくて、心臓が、初めて、高鳴った。
「ーーー好き」
「ん?」
「好きです。イマル!私と、結婚を前提にお付き合いして下さい!」
「いや!なんでやねん!!!」
イマルは自分の人生で1番最大に、ツッコミを入れた。
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