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14話 監禁
しおりを挟む「いいからこの部屋から出て行け! そしてあの小屋で、結婚まで監禁を――」
「触らないで」
私の腕を掴もうとするお父様を、冷たい言葉で威嚇する。
「私に乱暴してまた体に傷を付けたら、今度こそ、アクトはお父様を許しませんよ」
「それ、はっ!」
インテレクト公爵家の支援が途切れれば、ローズリカ子爵家は、お父様はお終い。
一度、私の体に痣を付けたことに対して、アクトに面と向かって怒りをぶつけられたお父様は、私の言葉に、出した手を引っ込めた。
「あなた、こんな子の妄言を信じるのですか!?」
「お父様! アクト様はお姉様を愛していません!」
お父様の背中を押すように声をかけるお義母様とリシャル。
別に監禁してもいいけど、これでまた暴力振るって私を監禁なんかしたら、アクトがどんな罰を与えるか知らないよ? 今だって、多分、アクトは我慢してくれている。アクトが本気を出せば、ローズリカ子爵家なんて簡単に潰せるんだから。
「こ、この部屋に閉じ込めておけ!」
考え抜いた末なのか、お父様は私を無理矢理、部屋から叩き出すことはせず、逆にこの部屋に閉じ込めることにしたようだ。成程、これなら乱暴な真似はしなくていいから、体に傷が残ることはないものね。
「えー! お父様、私とゼロの部屋を取り戻してくれるんじゃなかったの!?」
「それはまた追々考えて、今は、セルフィを懲らしめることにしようじゃないか。食事や自由を奪えば、自分から許して下さい! と泣きつくに決まっているんだからな!」
「……そっか、流石お父様! 素敵な考え!」
誰が許して下さい! なんて泣きつくか! 貴方達に許しを乞うくらいなら、そこら辺の石にでも頭を下げた方がマシよ!
不満げだったリシャルとお義母様も、お父様の言葉に納得され、意気揚々と部屋を出た。
ガチャリと、部屋の外から施錠される音。
「たった一週間でこんなふざけた真似するなんて、どれだけ我慢が足りないのよ」
閉ざされた部屋の扉を見ながら、思わず、呆れてしまう。インテレクト公爵家からの援助が無くなればローズリカ子爵家はお終いだと言うのに、もう少し慎重に動く気にはならないものか。
「はぁ、もういいけど」
お母様の部屋を奪われなかっただけでも、マシ。
「アクトが来るまで、部屋から出られなくて、食事無しになるくらいでしょ」
折角アクトの花嫁――インテレクト公爵夫人に相応しくなるよう、教養やマナーを学び直していたのに、閉じ込められてしまっては教師も来れないだろうし、中断するしかない。
食事も抜きか……久しぶりね。
以前までは何かある度に罰と称して、食事抜きにされた。空腹で空腹で、水だけを飲んで凌いで、体力を温存するために、寝て過ごしていた。
「私が死んだら困るはずだから、餓死するまでには、何かしら食事は持ってきてくれるでしょ」
そう軽く考えてしまえるくらい、慣れていた。
ベッドで横になり、部屋を眺める。
リシャルとゼロの新婚生活のために整えられたこの部屋は、元のお母様の部屋とはだいぶ違う雰囲気になったけど、それでも、ふと、昔の記憶を思い出せた。
ああ、懐かしい、そうだ、私、眠れない時はよく、お母様の部屋に忍び込んだっけ。一人で眠れないと泣く私を、お母様は優しく抱き締めてくれた。
……どうして忘れていたんだろう。
ぼんやりと、お母様が私を愛してくれていた記憶はあるけど、幼い頃の記憶は虚ろげだ。
何を覚えていて覚えていないのか、自分でも分からない。だからこうして昔のことを思い出せたら、胸の奥が温かくなって、幸せな気持ちになる。
ただ、閉鎖された空間にずっと一人でいると、嫌でも、後ろ向きな思考に連れ戻された。
『誰にも愛されなくて可哀想なお姉様、どうしてお姉様は、誰にも愛されないの?』
五月蠅い、
『お姉様のことなんて、誰も愛さない』
黙って、
『アクト様だって、いつかお姉様を捨てるわ、だって、お姉様は不幸になることが決まってるもの。家族の誰にも愛されない邪魔者が、愛されるワケないでしょう』
もう、止めて――! 誰にも愛されないなんて、私が一番よく知ってる。私を愛してくれたのは、お母様だけ――!
「セルフィお嬢様!」
「っ!」
誰も来ないはずの監禁された部屋で、いつの間にか眠っていた私の手を握り締めながら、心配そうに私の名前を呼ぶ、女性。
……誰? それが私の最初の感想だった。
「大丈夫ですか、セルフィお嬢様!? ああ、目を覚まされて良かった。ローズリカ子爵や夫人、リシャル様に何をされたんですか!?」
「いえ、ただ鍵をかけて監禁されていただけだけど……」
「監禁だけでも充分、酷いことですよ! セルフィお嬢様にこんな酷いことするなんて、許せません!」
「お嬢様って……」
家族の一員として認められず、邪魔者扱いされていた私のことをそんな風に呼ぶ使用人なんて、この家にはいないはずなのに。
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