妹の身代わりの花嫁は公爵様に溺愛される。

光子

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21話 その後

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 少なくとも、今回の件で私を監禁したり、罰を与えることはしなくな――って欲しいよね。もしまた同じことをしたら、本当に無謀知らずな馬鹿だと思うしかない。お義母様とリシャルに至っては有り得そうで怖いけど、それはそれでいい、自らの手で墓穴を掘るだけ。

「……俺がもっと早く貴女に会いに来ていれば、母君の遺品を捨てられることもなかったのに、すみません」

「! 違います! アクトが謝る必要はありません!」

 アクトは何も悪くもない。
 きっとアクトなら、結婚後、お母様の物を持って行きたいという願いを叶えてくれていたに違いないもの。ただお父様が、お母様の部屋を残しておいて欲しいという私の唯一の願いも叶えてくれなかっただけ。

「そのブローチ、良くお似合いですね」

「これは、お母様のお気に入りのブローチだったんです。ずっと……忘れていましたけど」

 お母様の部屋には何度も足を踏み入れていて、ブローチのことも見てはいたけど、記憶を思い出したのは、エナが持って来てくれた時が初めてだった。

「セルフィお嬢様、大丈夫ですか!? って、あ! アクト様じゃないですか!」

 食事の調達で席を外していたエナは、家の中の異変に気付いたのか、ここまで全力疾走で駆け付けたようで、ぜぇぜぇと息を吐きながら部屋に到達した。
 部屋の中を覗き、アクトの姿を確認すると、エナも、私と同じようにホッとしたような、安堵の表情を浮かべた。

「やぁエナ、ちゃんとセルフィの役に立っているようだな」

「勿論です! セルフィお嬢様のお役に立つことが、私の喜びです!」

「この調子でセルフィを頼むよ。ああ、あの馬鹿な娘のことも、勝手に部屋を出たり、あの馬鹿な母親が中に入ったりしていないか監視しておいてくれ」

「承知しました!」


 ――――こうして私は解放され、自由に外に出歩けるようになった。

 中断していたお勉強も再開し、、いつもと変わらない日常を送っていたが、お父様達はそうはいかなかった。

 結局、リシャルは罰を破ったのだ。

 私がリシャルに与えた罰は、一か月、部屋に閉じこもることと、侍女以外の面会の禁止だったが、リシャルは勝手に部屋から出て、あろうことか、屋敷の外に遊びに出掛けた。
 本人にたいしたことをした自覚は無く、ただ、退屈だからと遊びに出掛けたのだろう。どうせ、自分に甘いお父様は、笑って許してくれる。そんな風に軽く考えていたに違いない。

「この大馬鹿者が! 何を考えているんだ!」

 だが、リシャルの思惑とは違い、お父様はリシャルを怒鳴りつけた。

「お父様、酷い……! そんなに怒らないでよ! ちょっと部屋を出ただけじゃない! 一か月も部屋に閉じこもるなんて、遊びにも行けないし、退屈過ぎて死んじゃいそうだったんだもん!」

「黙れ! 折角あの程度で許して下さったのに水の泡だ! お前もだ! リシャルの脱走を手助けするような真似をして!」

「だ、だって、リシャルちゃんがあまりにも可哀想だったから……!」

 リシャルの部屋の扉には、私の時と同じように鍵がつけられ、中から出入りが出来ないようになっていたが、お義母様は強引に侍女から鍵を奪い取ると、リシャルの脱走を手伝った。

「インテレクト公爵様は貴族にも皇室にも顔が効くお方なんだぞ!? お前達のおかげで、我が家は滅茶苦茶だ!」

 今までは何でも許されてきたリシャルとお義母様は、お父様から初めて、大目玉を食らうことになった。
 …………いや、呆れて物が言えないよ。
 優しい罰を与えてあげたのに、まさか、こんなに早く墓穴を掘ってくるなんて、正真正銘の馬鹿なの?

 アクトは宣言通り、ローズリカ子爵家を、恐ろしい目に合わせた。

 援助の減額は勿論、お父様とお義母様が親しくしていた貴族に手を回し付き合いを制限させ、これにより、社交界での様々なお誘いも激減し、父と義母の貴族の立場は下がることになった。更に付け加えるなら、私がいない所でアクトはお父様と個人的に会い、多少の痛い仕打ちをしたと、後で知った。

 リシャルは一ヶ月だった監禁が更に延ばされ、お父様は扉の部屋の施錠を厳重にし、自分以外は鍵を持つことを許さず、お義母様は余計なことをしないようにと、遠くの場所に連れて行かせた。
 流石のお父様も、これ以上アクトを怒らせるわけにはいかないと思ったのでしょうね。

「セルフィお嬢様、おやつをお持ちしました!」

「ありがとう」

 邪魔な人達がいないローズリカ子爵邸の庭で、優雅にお茶の時間を楽しむ。こんな時間が過ごせるようになるなんて、想像もしてなかった。

 これも全て、アクトのおかげだ。

 庭から見上げた先には、閉じ込められた部屋の窓から、こちらを強く睨み付けるリシャルの姿。見せつけるように笑顔を向けると、リシャルは強くカーテンを閉め切った。
 今までは自分がこの家で大きな顔をして我が物顔で過ごしていたのに、悔しいでしょう? でもね、この家は元々、私の家なのよ。

 いい気味、ざまぁみろ。


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