妹の身代わりの花嫁は公爵様に溺愛される。

光子

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23話 お姉様なんて大嫌い

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「……そう、ですよね。分かりました、アクトの婚約者として、出席させて下さい。アクトに恥をかかせないよう、精一杯、務めさせて頂きます」

 アクトの言う通り、いつまでも避けてはいられない。
 例え、周りからアクトの婚約者として相応しくないと思われようと、相応しく思って頂けるよう、努力するしかない。

「そんなに気負わなくても大丈夫ですよ。かく言う俺が、今まで社交界への出席を拒んできましたからね。いい機会です、一緒に克服しましょう」

「はい」

「…………それに、俺の婚約者を悪く言う者がいれば、死ぬほど後悔させるので」

「アクト? 何か言いましたか? 何を言っているか聞こえなかったのですが」

「独り言です、お気になさらず」

 アクトが初めて私を頼ってくれたのだから、力にならなくては……! 頑張ります!


 ***

「あらお姉様、お帰りなさい」

 アクトとの食事を終えローズリカ子爵邸に戻ると、最近では珍しく機嫌の良いリシャルの姿があった。
 何事も無かったように馴れ馴れしく話かけてきて、何のつもり? ずっと、気軽に挨拶すら交わす関係じゃなかったのに。

「ねぇ、話しかけてるんだから無視しないでよ」

「貴女の相手をする気が無いって分からないの? 話しかけてこないで」

「えー、可愛い妹が話しかけてるのに、酷いお姉様ぁ」

 そのまま無視して部屋に戻ろうと足を進める私に、リシャルはしつこく声をかけた。

「ねぇねぇ聞いてよ! 私、今度開かれる皇室主催のパーティーに出席することになったの!」

「皇室主催のパーティー?」

 聞き流せない言葉に、ピタッと足が止まる。
 足が止まった私をどう捉えたのか、リシャルは優越感に満ちた笑顔を浮かべた。

「いいでしょう? お姉様なんかには手の届かないパーティーよね」

「ローズリカ子爵家はインテレクト公爵家の影響で、そういったパーティーの招待状は届かないようになっているはずだけど?」

 現に、あれだけ頻回にパーティーに出掛けていたリシャルもお義母様も、全く出かけなくなった。

「あら、だって私には愛すべきゼロがいるもの」

「……ああ」

「ゼロが私に婚約者として一緒にパーティーに出席して欲しいって言ってくれたの! 私ってば、愛されてるよねー!」

 ゼロ=レパスト、レパスト伯爵の次男であり、リシャルの婚約者。
 成程、ローズリカ子爵家ではなく、レパスト伯爵家に届いた招待状で出席するつもりなのね。

「お姉様の好きな人を奪っちゃってごめんね」

 そして、私の幼馴染であり、初恋の相手――

「お気になさらず、私にはもっと素敵な婚約者様がいるので」

「何それ、負け惜しみのつもり? 素直に悔しいって言えば少しは可愛げがあるのに。だから、ゼロに振り向いてもらえなかったんじゃない?」

「誤解しないで、私には最初から婚約者がいたわ。ゼロとどうにかなる気なんて初めから無い」

「ああ、そうだったね! お姉様は私の身代わりの花嫁だもん、好きな人と結ばれるはずないよねー! ごめんね、お姉様? お姉様が大好きなゼロが、私の王子様になって!」

 一々一々、煽るような発言をしてくるリシャルが、本気でウザイ。
 私が目障りなら放っておけばいいのに、わざわざわざわざ、こうしてちょっかいをかけてくる。昔っから本当に鬱陶しかった。

「……皇室主催のパーティーね、実は私も、そのパーティーに出席するの」

「え? う、嘘、お姉様が!? 何で――」

「おかしなことを言うのね、私の婚約者はアクト、インテレクト公爵様よ? 皇室主催のパーティーの招待状なんて、お父様のように必死で手に入れようとしなくても、あちらから届く人なの。その婚約者である私が一緒にパーティーに参加するのは、普通のことでしょう?」

「っぅ!」

 悔しそうな顔。こんな当たり前のことにも気付かず、上機嫌で優位に立ったような勘違い発言をするからよ。今の私には、ゼロなんか足元にも及ばないくらい強い力を持った婚約者様がいるんだから。

「貴女がどんな立派な社交活動をしているのか、この目で見るのを楽しみにしているわ、レパスト伯爵令息の婚約者様」

 それだけ言い残し、今度こそリシャルを放置し、自室に続く階段を上がった。



 ◇◇◇


「……何よ、お姉様の分際で! 家族の邪魔者のクセに!」

 以前はちっとも逆らわなかったのに、お父様の前妻の部屋を壊してからというもの、無駄に逆らうようになった。
 身代わりの花嫁を止めようとアクト様に会いに行ったかと思えば、アクト様を味方につけて、援助を減額させたり、他の貴族に嘘を吹き込んで私達を除け者にしたり、何もしていない私を部屋に閉じ込めたり、酷いことばかりする!
 最低最悪な姉! 大人しく家族の邪魔者として、私の身代わりの花嫁になって不幸になっていれば良かったのに!

「お姉様なんて嫌い、嫌い、大嫌い!」

 産まれた時から大嫌いだった。
 どうしてお姉様は貴族の娘として産まれて大切にぬくぬくと育っているのに、私は平民の娘なの? 私だってお姉様にさえ産まれていれば、人生楽勝で生きれたのに!

 だからお父様の前妻が死んで、養女として迎え入れられた時はラッキーだと思った。これでやっと、お姉様に勝ったと思った。
 家族に愛される私と愛されないお姉様。やっぱり私が幸せになって、お姉様が不幸になるべきなんだ。

「間違いないでお姉様っ、幸せになるのは、私よ!」

 本当の家族じゃないお姉様は、幸せになるべきじゃないの! 家族の邪魔! 除け者なんだから!



 ◇◇◇

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